Meltio、2025年は金属DED実用化の節目に防衛・自動車・石油ガス分野でサプライチェーン実装が進展

2025年12月22日

ワイヤ・レーザー方式の金属アディティブ・マニュファクチャリング(AM)を手がけるMeltioは、2025年を通じた展示会活動と実運用事例を通じ、指向性エネルギー堆積(DED)技術が実験段階を脱し、複数産業のサプライチェーンに本格導入されつつあると発表した。同社はMilAM、RAPID + TCT、EMO Hannover、Formnextといった主要国際展示会に出展。自動車、防衛、海事、鉱業、石油・ガス分野の製造業に対し、金属部品の新規製造および修理における生産性向上と信頼性を実証してきた。

防衛分野で進む「現場完結型」製造

防衛関連展示会では、即応性と補給網の強靭化がテーマとなった。MeltioはMeltio Robot Cellの運用実証として、艦船上で逆浸透ポンプを約34時間で修復した事例を紹介。従来の部品調達に比べ、大幅な時間短縮を実現している。

また、韓国防衛分野では装備品の再設計にも活用され、主力戦車用部品の軽量化(約60%削減)を達成。兵士の負担軽減と機械特性の両立を示した。さらに、Phillips Corporationとの協業により、Meltio Engine BlueをCNC工作機械に統合したハイブリッド製造も披露され、精度向上と材料ロス低減を両立する手法として注目を集めた。

自動車・金型分野ではROIを重視

EMO HannoverおよびFormnextでは、自動車・金型分野における経済性が焦点となった。スタブアクスルの事例では、従来の鍛造工程からワイヤ・レーザー金属堆積(W-LMD)へ切り替えることで、重量を約62%、コストを約36%削減。製造時間も約21時間に短縮され、量産部品への適用可能性を示した。
これらの成果は、Ivecoなど自動車OEMによる金属AM導入を後押しする材料となっている。

石油・ガス分野で注目されるオンサイト製造

2025年には、米バージニア州ダンビルに北米初の国際リファレンス拠点を開設。商業パートナーであるFastechと連携し、防衛、石油・ガス、海事分野向けの実演拠点として運用を開始した。

遠隔地や洋上施設では、部品供給の遅延が操業停止につながる。Meltioは、Inconel 718やステンレス鋼といった耐食性材料を用いたオンサイト製造・修理を提示し、調達期間を「数か月から数日」へ短縮できる可能性を示した。

ブルーレーザーで材料適用範囲を拡大

Formnextで前面に打ち出されたMeltio Engine Blueは、1kWのブルーレーザーを採用。銅やアルミニウムなど反射率の高い材料に対して高い吸収率を持ち、エネルギー消費を約30%削減、堆積速度は従来比最大3.5倍としている。多材料造形の実演も行われ、海事用途や防衛用途への広がりを印象づけた。

シェアラボ編集部コメント

Meltioの2025年の動きは、金属AMが「試す技術」から「使う設備」へ移行していることを示している。特に、防衛・エネルギー分野におけるオンサイト製造は、日本の製造業にとっても、部品調達リスクや保守コストの見直しを考える上で示唆に富む事例と言える。

用語解説

■ 指向性エネルギー堆積(DED:Directed Energy Deposition)
レーザーやアークなどの高エネルギー熱源で金属材料を溶融しながら堆積させる金属積層造形方式。既存部品への肉盛りや補修に適しており、製造と修理の両方に利用できる点が特徴である。
■ ワイヤ・レーザー金属堆積(W-LMD:Wire-Laser Metal Deposition)
金属粉末ではなくワイヤ材を供給し、レーザーで溶融・堆積するDED方式の一種。材料利用効率が高く、粉末管理が不要なため、工場や現場での取り扱い性に優れる。
■ ハイブリッド製造(Hybrid Manufacturing)
金属3Dプリンターによる積層造形と、切削加工(CNC加工)を1台の設備、または一連の工程で組み合わせる製造手法。複雑形状の造形と高精度な仕上げを両立できる。
■ ブルーレーザー(Blue Laser)
波長が短く、銅やアルミニウムなど反射率の高い金属材料に対して吸収率が高いレーザー光源。赤外レーザーに比べ、エネルギー効率と造形安定性に優れる。
■ インダストリアル・オートノミー(Industrial Autonomy)
必要な部品を必要な場所で即時に製造・修理できる体制を指す概念。外部サプライチェーンへの依存を減らし、工場や現場の自律性を高めることを目的とする。
■ Inconel 718(インコネル718)
ニッケル基超耐熱合金の一種。高温・高圧・耐食環境下でも機械特性を維持できるため、航空宇宙や石油・ガス、防衛分野で広く使用されている。
■ ROI(Return on Investment)
投資対効果。設備導入や製造方法の変更によって、どれだけコスト削減や利益向上が見込めるかを示す指標。金属AMの産業導入では重要な評価軸となる。

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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