PC制御とEtherCATが拓く、金属積層造形の次世代プラットフォーム

2026年1月22日
IMPACT 4530積層造形機の造形エリアと完成品の金属部品。(出典:ベッコフオートメーション)
IMPACT 4530積層造形機の造形エリアと完成品の金属部品。(出典:ベッコフオートメーション)

金属積層造形は、試作技術から生産設備へと役割を変えつつある。その中で求められているのは、造形性能そのものだけでなく、工程全体を安定して制御・自動化できるシステム構成である。スイスの積層造形機メーカーIRPDは、ベッコフオートメーションのPC制御およびEtherCATを制御基盤として採用することで、金属積層造形装置を産業用途に適した生産プラットフォームとして実装した。本記事では、IRPDの金属積層造形機を例に、制御技術が果たす役割を整理する。

金属積層造形が「生産設備」へと移行する中で

金属積層造形は、長らく試作や研究開発用途を中心に活用されてきたが、近年では量産対応や高付加価値部品の製造工程へと用途を拡大している。航空宇宙、自動車、工具分野を中心に、金属3Dプリンターを前提とした製造プロセスの構築が進みつつある。

一方で、生産設備として運用するには、生産性、造形品質の再現性、工程全体の効率化といった課題が残る。レーザー出力や造形サイズといった装置スペックだけでなく、装置全体をどう制御し、周辺工程まで含めてどう最適化するかが重要なテーマとなっている。

IRPDと金属積層造形機「IMPACT 4530」

IRPDは、25年以上にわたり積層造形分野に携わってきた専業メーカーである。UNITED MACHINING SOLUTIONSグループの一員として、自動車、航空宇宙、切削工具メーカー向けに、設計から後加工までを含むエンドツーエンドの生産ソリューションを提供してきた。

同社が開発した金属積層造形機「IMPACT 4530」は、レーザー粉末床溶融法(LPBF)を採用した装置である。広い造形エリアに加え、4基の1,000Wファイバーレーザーを搭載し、多様な金属粉末材料に対応する構成となっている。

コンテナ方式を核とした自動化設計

IMPACT 4530の特徴の一つが、コンテナ方式を採用した自動化設計である。造形用コンテナと金属粉末供給用コンテナを自動で装置にドッキングすることで、段取り作業を標準化し、ダウンタイムを最小限に抑えている。

造形後に残った金属粉末は、密閉状態のまま回収され、不活性雰囲気下でふるい分けされた後、次回の粉末供給用コンテナへ再投入される。造形板の搬送ステーションやコンテナハンドリングモジュールなどを組み合わせることで、造形前後を含めた工程全体の効率化が図られている。

レーザー走査を支える高精度制御

造形工程では、密閉された造形コンテナが装置に装着されると、即座に造形に適した環境が形成される。水平軸が造形板上に金属粉末を敷き詰め、複数のレーザーが粉末層を溶融・結合する。この工程を、造形板を数百分の1ミリ単位で下降させながら繰り返すことで、三次元形状が構築される。

このプロセスの中核を担うのが、レーザーとガルバノスキャナーである。ガルバノスキャナーは、ミラーを高速・高精度に制御し、レーザービームをマイクロメートル単位で走査する装置であり、IMPACT 4530ではADSインターフェースを介してTwinCAT制御システムと通信している。

PC制御とEtherCATによる統合制御

IMPACT 4530では、レーザー走査そのものを除く装置全体の機能を、ベッコフのPC制御で統合的に管理している。制御中枢には制御盤組み込み型産業用PC「C6675」を採用し、軸制御、空気圧制御、機械安全、不活性ガス循環、冷却系などを一元的に制御している。

TwinCATにより、PLC、モーション制御、HMI、ビジョン、安全機能を単一の開発環境で実装できる点も特徴である。モーション系にはAX8000多軸サーボシステムとAM8000サーボモーターを採用し、ワンケーブルテクノロジー(OCT)によって配線工数と保守負荷を低減している。EtherCAT I/OやTwinSAFEモジュールにより、柔軟なシステム構成と拡張性も確保されている。

将来の拡張を見据えた制御基盤

IRPDのCEOであるシュテファン・ラング氏は、PC制御のオープン性とTwinCATの開発環境、製品群の完成度がベッコフ採用の決め手であったと述べている。また、加工ソフトウェア開発責任者のカイ・グートクネヒト博士は、産業用PC C6675が将来的な造形品質モニタリングやデータ解析、機械学習といった用途にも十分対応可能な性能を備えていると評価している。

IMPACT 4530は、現在の生産要件に応える装置であると同時に、今後の技術進化を受け止める拡張性を備えた金属積層造形プラットフォームとして設計されている。

IMPACT 4530 参考動画

シェアラボ編集部コメント

金属積層造形の現場では、造形方式やレーザー出力といった要素技術以上に、「どう制御し、どう運用するか」が装置の価値を左右する段階に入っている。IMPACT 4530は、コンテナ方式による工程自動化と、PC制御・EtherCATを基盤とした統合制御によって、金属3Dプリンターを生産設備として成立させるための条件を着実に積み上げた装置である。日本の製造業にとっても、金属積層造形を本格導入する際の参考となる事例といえる。

用語解説

■ レーザー粉末床溶融法(LPBF)
金属粉末を薄く敷き詰め、高出力レーザーで選択的に溶融・結合させることで、一層ずつ積み重ねて立体物を造形する金属3Dプリンターの代表的な方式。高密度かつ高精度な金属部品の製造に適している。
■ ガルバノスキャナー
ミラーを高速・高精度に制御することで、レーザー光を任意の位置へ走査する装置。金属積層造形では、レーザービーム制御の精度を左右する重要な要素となる。
■ EtherCAT
高速・高精度な同期通信を特長とする産業用イーサネット。サーボ制御、I/O制御、安全制御を単一ネットワークで統合でき、工作機械や産業用装置で広く利用されている。

金属積層造形の関連記事

今回のニュースに関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中からピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

関連記事を探す

記事検索

1899の記事から探す

最新記事

編集部のおススメ記事