ナガセケムテックスが弾性と耐衝撃性に優れた光造形3Dプリンター用樹脂材料を開発
大阪に本社を置く化学メーカーのナガセケムテックス株式会社は、高反発なゴム弾性を持ち、繰り返しの衝撃に強く、細密な3Dプリントデータも再現可能な3Dプリンター用レジン「RS-IAGシリーズ」を開発した。(画像は「RS-IAGシリーズ」を使用したシューズの試作品 出典:ナガセケムテックス社)
RS-IAGシリーズの特徴
近年3Dプリンターを使用したシューズ製造が注目を集めている。adidas社が開発した3Dプリント技術を用いたシューズを着用した選手が、東京オリンピックで表彰台に上ったことは記憶に新しい。
複雑な造形が可能で金型も不要な3Dプリントは、設計の自由度の点や廃棄物を減少させる点で利点がある。商業目的で販売される製品は、3Dプリントならではの細密なデザインを実現するために、光造形方式の3Dプリンターが採用されることが多い。
光造形方式は、熱で溶かしたフィラメント樹脂を積層するFDM方式に比べて細密なデザインの再現ができ、段差がない滑らかな仕上がりとなる点でメリットがある一方で、使用できる材料の耐久性には課題があった。この課題は、特にランニングシューズのような繰り返し強い衝撃を受けるものの作成においては致命的となる。
ナガセケムテックス社が今回開発した光造形3Dプリンター用素材「RS-IAGシリーズ」は、この課題をクリアするために開発されたものだ。
RS-IAGシリーズは光造形ゴム弾性レジンの中では突出した高靭性・高反発性を持つ。引っ張りに強く、ねじれに対しても強い復元性を持っている。
強度を保ちつつ軽量化できる「ラティス構造」のような複雑な枝分かれのデザインも再現可能だ。細密なデザインが可能なことを活かし、足先やかかとなど部位ごとに枝の密度や線径を変化させて反発率を調整すれば、シューズの性能を引き出す設計ができる。クリアカラーであるため、幅広いデザインにも対応可能だ。
また、保存性の高さにも注目したい。光造形方式3Dプリンターの印刷素材である紫外線硬化樹脂には、1液性と2液性がある。RS-IAGシリーズは1液性だ。1液性はパッケージから取り出してそのまま使用できる点で、生産性に優れているが劣化は早くなりがちというデメリットがある。
2液性のものは主剤と硬化剤が分かれているため、分けて保存すれば長く保管でき品質安定性は高いが、混合後はすぐに使用しなければならないため、生産性の点で難がある。
RS-IAGシリーズは1液性でありながら、常温で1年もの長期保存が可能だという。これは1液性のデメリットを大きく解消するものになる。
用途や使用プリンターに合わせたカスタマイズも可能
ナガセケムテックス社では、研究拠点にオープンラボを開設し、顧客と共同で製品の検討が可能な体制を整えている。オープンラボでは、さまざまなタイプの3D光造形プリンターや造形物の強度測定装置などの各種物性測定装置が使用可能で、実際の場面に基づいた検討が可能になっている。単なる優れた素材の提供ではなく、3Dプリンティング関わるニーズに総合的に対応する構えだ。
複雑な造形が可能な3Dプリンターは、スニーカー業界での導入が活発だ。ShareLabNEWSでは、完全3Dプリンティングされたスニーカーの事例や、今後の3Dプリントフットウェア産業の市場予測なども取り上げている。こちらもぜひ参照してほしい。
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