四半期のエントリークラス3Dプリンター出荷が関税懸念で急増 ― CONTEXT

2025年7月31日
CONTEXTのプレスリリースより。

市場調査会社CONTEXT(イギリス・ロンドン)の最新分析によれば、2025年第1四半期の世界3Dプリンタ市場は大きく異なる動きを見せた。CONTEXTグローバル分析担当副社長クリス・コネリー氏によれば「関税戦争の懸念、不安定な市場環境、持続的なインフレ、高金利という状況下で、エントリークラスは出荷が急増する一方、産業用および中価格帯のセグメントは引き続き逆風に直面した」とのことである。全体のシステム売上高は前年比5%増となったが、主にエントリークラスの収益が前年比22%増加したことによる。これは、消費者および販売チャネルが関税発動前に購入を前倒ししたためであるが、一方で産業用セグメントの収益は前年比6%減少し、主要市場は急変する関税政策や高い資本コストの影響で麻痺状態にある。(上部画像はCONTEXTのプレスリリースより。出典:CONTEXT)

産業用および中価格帯システム

金利の高さが設備投資を抑制し、産業用および中価格帯のシステムは厳しい四半期となった。

産業用3Dプリンターの出荷台数は前年比14%減。中国企業は欧米よりも堅調に推移し、金属プリンターはポリマープリンターよりも良好であったが、全体としては地政学的リスクとインフレの影響を免れなかった。ポリマーシステムは18%減、金属は8%減だった。高度な金属粉末床溶融結合(PBF)システム、特にEplus3D(中国・安徽省)やNikon SLM Solutions(ドイツ・リューベック)のマルチレーザー大容量モデルは好調で、価格上昇により産業用収益の下支えとなった。

中価格帯の出荷も同様の傾向で、前年比16%減。中国ベンダーは国内需要に支えられて好調を維持。UnionTech(中国・上海)の出荷は13%増だったが、産業用ポリマー機は減少。Flashforge(中国・浙江省)は中東・アジア太平洋地域の宝飾市場向けマテリアルジェッティング機で好調を維持。Stratasys(イスラエル・レホヴォト)、3D Systems(アメリカ・サウスカロライナ州)、Formlabs(アメリカ・マサチューセッツ州)といった欧米企業はTTMで軒並み出荷減。

プロフェッショナル向けプリンター

出荷は前年比4%減。中でも材料押出方式(FDM/FFF)は前年比31%減と大幅な落ち込み。代わりに、Bambu Lab(中国・深圳)などの高性能なエントリーモデルに流れた。

一方、バットフォトポリマリゼーション(主にmSLA)方式は前年比19%増、TTM(為替仲値)でも17%増。FormlabsやSprintRay(アメリカ・カリフォルニア州)がmSLA製品で出荷を伸ばした。Formlabsは40%の成長で同価格帯のシェア首位を維持。

エントリークラスプリンター

このカテゴリーが最も顕著な成長を遂げ、2025年第1四半期の出荷は全世界で100万台を超え、前年比15%増となった。これはほぼすべて、米国による中国製品への関税を見越した前倒し需要による。

中国ベンダーが全体の95%を占めた。Bambu Labは64%の出荷増で最も大きな伸びを記録。Creality(中国・深圳)は3%の減少だったが、シェアは39%で依然トップ。FlashforgeやElegoo(中国・深圳)も強い成長を示した。

今後の見通し

2025年前半はエントリークラスが堅調だったが、高価格帯への見通しは下方修正された。関税、インフレ、高金利などの経済的逆風は2025年を通して続く見込みであり、本格的な回復は2026年と予測されている。

各OEMは利益確保に注力し、買収や分離などの再編も進行中。例えばNano Dimension(イスラエル・ネスジオナ)はMarkforged(アメリカ・マサチューセッツ州)とDesktop Metal(アメリカ・マサチューセッツ州)を買収、TRUMPF(ドイツ・ディッツィンゲン)は金属PBF事業を分離した。Velo3D(アメリカ・カリフォルニア州)は新規投資を受け、航空宇宙・防衛市場に注力しつつ成長を続けている。

地域の内製化やサプライチェーンの混乱が続く中、自律性や柔軟性を持つAM技術は中長期的に有望である。「産業用システムには強い潜在需要があり、マクロ経済が回復すれば一気に動き出す。2026年には回復が始まり、資本支出も戻るだろう」とコネリー氏は述べている。

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