ソフト・エレクトロニクスの製造を加速するハイブリッド3Dプリンティング技術をハーバード大学研究チームが開発
”ソフト・エレクトロニクス”という言葉をご存じだろうか。柔軟さや伸縮性を特徴に持ち、身体とともに動くよう設計された新しい種類の電子デバイスを指すが、日本ではまだ馴染みのないワードだ。
今回紹介するのはそのソフト・エレクトロニクス分野の設計・製造を加速する技術だ。米ハーバード大学のWyss InstituteとHarvard SEASの研究チームは、新しい3Dプリンティングプラットフォーム「Hybrid 3D Printing」技術(以下、ハイブリッド3Dプリンティング技術)を開発したとのこと。
(画像は、Wyss Institute公式サイトより引用)
次世代を担うと言われるソフト・エレクトロニクス
ソフト・エレクトロニクスの一例として、「ソフトな」ウェアラブル技術がある。服地の折り目などに、LEDライト、バッテリーパック、電子デバイスコンピューター部品を隠したりするのだ。
世の中では、Google Glass や Pebble などが話題の中心になっており、次世代を担うかもしれない「ソフトな」テクノロジーはまだあまり注目されていない。しかし発展途上ではあるものの、こうした技術は開発、実装が着々と進んでいる。
ハイブリッド3Dプリンティング技術について
技術の概要およびその特徴
今回、ハーバード大学のWyss InstituteとHarvard SEASの研究チームが開発したハイブリッド3Dプリンティング技術は、マイクロチップなど本来硬くて剛性のある電子部品を、伸縮性のある導電性インクを材料に3Dプリンターを用いてTPU基板上にプリントすることが可能な技術だ。
カスタマイズ可能なさまざまなタイプのウェアラブルデバイスを、短時間で生成することができるのが特徴である。
従来、電子部品を基板上にプリントすることは困難だった
パソコンやスマートフォンのように「持ち運ぶ」のではなく、アップルウォッチのように「身に着ける」ことで利用できるウェアラブルデバイス。しかし、人間の皮膚は、体のあらゆる動きに対応するために屈曲および伸張する必要があり、ウェアラブル電子デバイスのように体にきつく着用されたものは、筋肉や関節の周りを曲げることが必須条件だ。従来、皮膚を模倣するマトリックス材料の上または内部に剛性の電子部品を統合することは困難であることが示されてきた。実際、ハードエレメントとソフトエレメントの間の接合部に応力が集中し、ウェアラブルデバイスの故障に繋がることはよくあるとのこと。
しかし、今回開発されたハイブリッド3Dプリンティング技術によって、軟質の導電性インクとマトリックス材料と硬質電子部品を、単一の伸縮可能なデバイスに統合することが可能になる。
この技術を用いることで、電子センサーを材料に直接印刷し、電子部品をデジタルでピックアンドプレースします。そのため、センサーのデータ信号を一挙に「読み取る」ために必要な電子回路を、完成させる導電性相互接続を造形することが可能になります
筆頭著者、アレックス バレンタイン氏
今後は無数の電子デバイスの製造に繋がる可能性を秘めている
(ハーバード大学、公式You Tubeアカウントより引用)
動画にて紹介されたデモ素材では、3Dプリンティングプロセスとともに、身体の一部に合わせて動くように設計された電子デバイスが、腕の曲がり具合に応じた抵抗によりLEDの明滅を再現していることが見て取れる。
また、同技術はウェアラブル電子デバイスの設計と製造を加速するだけでなく、製造時間の短縮とコストを大幅に削減できると期待されている。研究チームは今も材料と方法の両方を最適化し続けているが、今後、ハイブリッド3Dプリンティング技術は無数の電子デバイスの製造に広く適用できるとのこと。
私たちは造形可能な電子材料のパレットを広げ、プログラム可能なマルチマテリアルプリンティングプラットフォームを拡張して、電子部品のデジタル「pick-and-place」を可能にしました。このことによって、低コストかつカスタマイズ可能なウェアラブルな電子機器を、製造するための重要なステップであると信じています。
論文の共著者、Wyss Institute、ルイス氏
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