ナノディメンション社がナノファブリカ社を買収、ブランド名変更へ
イスラエルの3Dプリント業界を牽引するナノディメンション社(米NASDAQ上場)が、同じくイスラエルのマイクロ3Dプリンターメーカーのナノファブリカを買収した。ナノディメンション社はスイスのAI開発企業のディープキューブ社の買収や、ドイツに本社を置くセンサー技術メーカー、ヘンゾルトAG社との合弁事業の開始を発表したばかり。
ナノファブリカ社の独自3Dプリント技術には世界から注目が集まる
ナノファブリカ社は、イスラエルのテルアビブに拠点を置き、3Dプリンターで半導体用部品や光学機器用部品などの精密部品を製造している。2016年に設立されたばかりのスタートアップ企業だが、2020年5月にはマイクロソフト社をはじめとした複数企業から出資を受けたことでも注目されていた。
ナノファブリカ社の優れている点の1つには3Dプリントの速度がある。小さな部品でも大量生産を可能にすることで、より広範囲でのアプローチが可能だ。
ナノファブリカ社はナノディメンショングループに
ナノファブリカ社は新たに、ナノディメンション社のファブリカグループに属する形となった。今回の買収に伴い、ナノファブリカ社の3Dプリンター「Tera250」は「Fabrica2.0」へ名称変更された。
ナノディメンション社は、ナノファブリカ社を買収することで従来の3次元電子回路基板印刷技術(AME)分野だけではなく、マイクロ3Dプリントの分野にも事業拡大が可能にした。
「ファブリカグループは、AME分野の推進だけでなく、事故が起きても3Dプリント製造基盤に支障を起こさないことを重視しています」とナノディメンション社の CEO 兼会長である Yoav Stern 氏はプレスリリースで説明した。
さらに「今後は、ファブリカグループ次の世代のマシンには、特許取得済である独自のディープラーニング / 機械学習機能を搭載し、スマートにリアルタイムの自己修正製造が可能になる予定です。当社の顧客基盤はファブリカ社のソリューションによって拡大されていますが、その位置付けは3Dプリンター製造にディープキューブ社のテクノロジーを全面的に活用する方向に徐々にシフトしています。つまり、当社は今回の買収により、参入障壁が非常に高い分野において比類のない競争力を所有することになったのです」と述べた。
Fabrica2.0は、航空宇宙、自動者、医療、光学、半導体といった分野で用いるパーツ製作への運用が期待されている。
ファブリカグループの未来
ナノファブリカ社は昨年調達した400万ドルの資金をもとに、3Dプリント界での著名人である Avi Cohen 氏を営業担当副社長として採用した。3Dプリンターの「Fabrica2.0」を商品化し、従来のマイクロプラスチック製造技術に替わるものを提案するファブリカグループの未来は、ナノディメンションに買収された後も明るいものになると予想される。
ナノファブリカ社のゼネラルマネージャー兼営業チームのトップである Jon Donner 氏は「ナノディメンション社による買収により、ナノファブリカ社はその商業化のスピードが加速されます。3Dプリンターの Fabrica2.0 はそのマイクロレベルの技術をもとに、あらゆる産業部門で小さな部品や大きな部品を製造しようとしている企業にアプローチが可能です。これはナノディメンション社のサポートと広範囲な市場経路があってこそ可能になるものです。私たちは地理的なハードルを越えて、あらゆる関連企業に当社のテクノロジーを導入することを目標に掲げています」と述べた。
ナノディメンション社は昨年2020年に米NASDAQに上場し、相応の資金を調達している。今後も関連分野企業への積極的な買収が予想されるところだ。
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