エアロゲルとは?3Dプリンター業界で注目を集める理由【活用事例も紹介】
近年、さまざまな分野で3Dプリンターを用いたエアロゲル製品の開発・研究がすすんでいる。この記事ではエアロゲルの性質と、3Dプリンター業界で注目を集めて居る理由、活用事例を紹介する。
エアロゲルとは
エアロゲルとは、1931年に科学者のスティーブン・キスラーによって発明された、地球上で最も軽く、最も断熱性の高い固体だ。エアロゲルは90%以上が空気で構成されているため非常に軽量だ。さらに、無数の穴が空いているので気体の対流がおこらず、非常に優れた断熱性を持っている。
その機能性の高さから、かつては宇宙服や火星探査機の断熱材として使用されていた。半透明な外見から「凍った煙」や「固体の煙」などと呼ばれることもある。
エアロゲルの活用事例
エアロゲルの身近な活用事例としては、衣服の素材として用いたものがある。+CLOTHET社はエアロゲルを3Dプリンターで繊維に固定し、中綿素材として使用することで高温・低温のどちらに対しても優れた断熱性を持つ衣服がすでに市場に出回っている。
エアロゲルの課題
優れた特性を持つエアロゲルだが、活用にあたって課題がないわけではない。まず一点は、製品化にあたっては超臨界乾燥装置という非常に高価な機械を使う工程が必要なため、価格が高くなること。そしてもう一つは耐久性の問題がある。
新たな試みとして日本の素材化学系ベンチャー企業であるティエムファクトリ株式会社が開発研究をすすめるのが、エアロゲルを使った、世界初の透明な断熱材の量産化だ。
ティエムファクトリ社は、超臨界乾燥装置を用いずに作る透過率の高いエアロゲルの開発に成功した。透明である必要があり、これまで断熱材を使用できなかった自動車や建物の窓に使用することで冷暖房効率を上げ、温暖化対策の一助をなることが期待されている。
3Dプリンター技術を活用したエアロゲルの今後の活用
一方、3Dプリンターを用いたエアロゲルの活用方法としては、ハンブルク大学の研究チームがすすめている、ナノ粒子ベースの二酸化チタン由来エアロゲルから太陽エネルギーを用い、蒸発によって汚染物質から純水を分離する太陽光蒸気発生器をはじめとした新世代の太陽熱デバイスの開発に注目が集まっている。
ここでは、DIW(Direct Ink Writing)方式の3Dプリンターが採用されている。DIW方式は、直接インクを書き込む3Dプリント製法で、直接、ゲル状のインクを体積させることで、微細で高精度な造形が可能になるという点に特徴がある。その精密さはナノメートルほどの微細さだ。
従来エアロゲルは硬化剤と混合した後,型に流し込み、それを焼くことで固めていくゲルキャスティングと呼ばれる手法での製造が企画されていたが、この方法だと使用できる金型形状が限られており、複雑な微細構造を持つ形状を製造することができなかった。これを可能にしたのが、DIW方式の3Dプリンターだ。
身近なものから、未来の技術まで。歴史は長いもののこれまであまり開発がすすまなかったエアロゲルが、3Dプリンターという現代の利器と出会い、大きな可能性を手に入れた。
エアロゲルの関連記事
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。