2024年次世代3Dプリンター展東京速報②
2024年6月19日から21日にかけて東京ビッグサイトで行われた日本最大級の3Dプリンター展示会、次世代3Dプリンター展。69,717名の来場者が足を運んだ現地では、来場者の積極的な情報収集が行われていた。併設展も含めて3DプリンターやAMに関連するブースを3回に分けてお届けする。今回の記事では会場を回った伊藤がご報告する。
製品の説明主体だったコロナ前の出展傾向と比べると、実際に設計や製造の現場で活用できるヒントを打ち出そうというブースが増えた印象だ。業務のヒントにつながる発見をいくつか共有したい。
目次
食品加工工場で活躍するロボットで採用されたシリコン製ハンド(ホッティーポリマー)
樹脂の押出成形やゴムのコンプレッション加工業として実績がある中、3Dプリンターに取り組むホッティーポリマー。定評のある3Dプリンターの販売以外にも、ピュアシリコンを扱うことができる自社製品として3DプリンターSilicomの販売も行っている。そんなシリコンの特性を活かした導入事例として、搬送用ロボット用ハンド(エンドエフェクター)の展示があった。
牡蠣フライの食品加工現場で、牡蠣を搬送する際に世界中の既製品を検討したが、牡蠣を十全に把持できなかったというが、シリコン製の独自ハンドを開発することで問題が解決できたという。
日本中の生産現場で人手不足が深刻化するなか、自動化に取り組む現場は、今後さらに増加するはずだ。人の手では簡単にできた作業をロボットで補うために、やわらかくモノをつかむシリコン製のハンドの需要は根強くあるように思われる。
ペレット式3Dプリンターでリサイクル事例を積み重ねるリコー
パチンコ台は樹脂部品を多用しているが、短いサイクルで新台に入れ替えが行われる。以前は大量に生産され大量に破棄されてきたパチンコ台だが、リサイクルに取り組む動きがある。リコーブースでは、パチンコ台に用いられる樹脂部品を材料別に収集し、ペレット材料にリサイクルした事例が紹介されていた。パチンコ台製造メーカーが連携して立ち上げた業界団体が推進したという事だった。メーカーの垣根を越えてリサイクルに取り組むという取り組み方も興味深い点だと言える。
またリサイクルが難しいとされるカーボン材料をリサイクルした事例の展示もあった。複合材料を熱処理を加えた後に裁断しパウダー状まで特殊な装置で粉砕する。パウダー状にしたうえでペレットに混錬することで、材料強度を増すことができたという。
カーボン繊維はそのままでは、作業中に作業服がこすれ傷つくこともあるほどだというが、繊維をパウダーに粉砕することで、滑らかな仕上がりにつながったという事だ。
キーンという金属のような音がする薄くて硬い造形物も(グーテンベルク)
国産産業用3Dプリンターを製造するハードウェア・スタートアップであるグーテンベルク。製品販売から2年弱ですでに200台以上の出荷実績がある。大塚化学からの出資を伴う業務提携を受ける他、造形速度と精度に対する業界内の評価は高い。ブースは小さいながら数多くの来場者が熱心に質問をしている姿が印象的だった。
安い・早い・綺麗の三拍子が揃った実力を持つG-ZEROのインパクトは非常に大きいが、言葉では伝えにくいので、上記写真を見てほしい。社内でこうした角が立った、一定以上の強度を持った部品を内製化できる汎用設備があると機密性が高い部品を外注する必要もない。特急で部品を用意したい際にも心強いだろう。
7月26日のJAMMでは展示会参加者のレポートセッションも開催
シェアラボ編集部では、活況を呈した次世代3Dプリンター展に関してはあと1回続報をご用意しているが、オンライン交流会JAMMの場でも、展示会に参加した有識者によるパネルディスカッションも予定している。その後には実際に展示会を取材したシェアラボ編集部の記者も参加する交流会も予定している。参加は無料なので情報収集と人脈拡大にご活用いただきたい。
JAMM(Japan Additive Manufacturing Meet-up)#17
今後も2024年9月のフォームネクストフォーラム東京、2024年11月のJIMTOF、2025年2月のTCT Japanと首都圏での3Dプリンター関連展示会が続く。自分の手でサンプルを手に取り、ここ数年で格段に進化を遂げた3Dプリンターの現状を体感することをお勧めする。
2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。