Lyten社、3Dグラフェン素材で新モータースポーツ事業を開始

2025年6月20日
Lytenのプレスリリースより。
Lytenのプレスリリースより。

グラフェンを三次元構造に設計する「3Dグラフェン」で実績のあるLyten社(アメリカ・カリフォルニア州)は、新事業「Lyten Motorsports」の立ち上げを発表した。当事業は、Lyten社のマテリアルサイエンスによる技術革新をモータースポーツ用部品に展開することを目的としている。Lyten Motorsportsは、世界各地のモータースポーツサーキットに25年間部品を供給してきたINDYCAR Experience社(アメリカ・インディアナ州)との提携により始動する。(上部画像はLyten社のプレスリリースより。出典:Lyten)

グラフェンと3Dグラフェン

グラフェンは、炭素原子が蜂の巣状に一層に並んだ二次元構造を持つナノ素材であり、鋼鉄の数百倍とされる強度、優れた導電性、熱伝導性を備えている。このグラフェンを三次元構造に設計したものが「3Dグラフェン」だ。3Dグラフェンは、立体的な構造によって、軽量性や高強度といった基本特性を保ちつつ、内部構造の自由設計や表面積の拡張が可能となり、従来の素材にはない応用性を持つ。

Lyten社の3Dグラフェンとその産業応用

Lyten社が開発する3Dグラフェンは、強度、軽量性、導電性、透過性などの材料特性に柔軟に対応できる。同社3Dグラフェンを活用し、リチウムイオン電池の約2倍のエネルギー密度を持つリチウム硫黄電池を開発、ニッケル、コバルト、グラファイトなどの鉱物資源を85%削減することに成功している。さらに、Lyten社はこの素材の特性を活かし、モータースポーツにおける強度と軽量性の最適化を図った部品設計・製造にも取り組んでいる。航空宇宙やモビリティ分野など、持続可能性と高性能が求められる場面での活用が期待されている。

3Dプリンターとの融合が切り拓く未来のものづくり

3Dグラフェンは、その高性能を最大限に活かす製造手段として、3Dプリンターとの相性が極めて良好だ。積層造形技術を用いれば、微細かつ複雑な内部構造や軽量設計が可能となり、3Dグラフェンの特性を設計段階から反映した高機能部品を作ることができる。粉末、ペースト、インクなど多様な材料形態に展開可能であり、粉末床溶融結合(PBF)やインクジェット、押出型といった多様な方式の3Dプリンターに対応できる点も強みといえるだろう。

3Dグラフェンの構造を自由度たかく設計することで、航空宇宙、自動車、医療機器といった分野では、これまでにない軽量・高強度・多機能な製品開発が現実のものとなる。今回取り上げたLyten社のように3Dグラフェンの設計自由度と3Dプリンターの柔軟性を融合させた企業は、製造工程の革新とサステナブルなものづくりの実現に向けて、新たな可能性を切り拓いていくことだろう。

モータースポーツ向け3Dプリント拠点を設立し事業拡大へ


Lyten社は、シリコンバレーにある本社において引き続き材料の研究開発を推進するとともに、インディアナ州インディアナポリスにモータースポーツ部品向けの設計・製造拠点を新設した。同拠点はINDYCAR Experience社の本部と併設されている。現在、Lyten Motorsportsは、独自開発したフィラメントおよび接着剤を用いて3Dプリント部品の製造を行っており、市場ニーズに対応するためにオートクレーブ製造にも迅速に事業を拡大している。


今後は、カーボンファイバー部品の性能をさらに高めるとともに、従来金属で製造されていた部品を、より軽量で低コストな複合材料部品へと置き換える取り組みを進める予定である。Lyten Motorsportsは、米国内外の幅広いレーシングシリーズ向けに部品を開発していく方針である。

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