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米ボーイング、ストラタシス社Antero 800NA材料を認証。航空機部品への使用が可能に

Stratasys Ltd.(以下、ストラタシス)は、米Boeing社(以下、ボーイング)が 造形材料:Antero 800NA 熱可塑性プラスチックを 3D プリンティング材料として認証したと発表した。

この認証により、高い耐熱性を持つAntero 800NAのボーイング航空機部品への使用が可能になった。今回は、今回認証されたAntero 800NAだけでなくそもそも3Dプリンティング活用は航空機業界でどのような歴史を持ち、今後期待されているのかについてもご紹介する。(画像は、ストラタシスより提供)

航空業界における3Dプリンティング活用への期待

航空業界におけるAM活用について初期の時期では、他の業界と同様、小型飛行機の操縦席の計器パネル、1台のヘリコプターに特殊なカメラを取り付けるためのケースなど、1個から数個だけ作る場合が一般的な活用範囲だった。

しかし、2016年に欧州の旅客機メーカーAirbus社が新しい旅客機の内装や電子機器に使う部品を、Stratasys社の3Dプリンターなどで製造することをAirbus社規格として認証した発表があったことを皮切りに、その後、1機あたり1,000個以上の3Dプリント部品が恐らく今日も空を飛んでいるとのことで、大きな進展があったと言われる。

このようにAM技術は今や、新造機の需要増大に対応する航空機メーカーにとって欠かせないツールになっている。そして、今日においても主に以下の理由から、航空業界での3Dプリンティング技術活用は、更に期待されており利用が促進されている。

航空機イメージ
航空機イメージ

①製造から修理までの部品サプライチェーンにかかっていた手間、コストを削減

旅客機1機作るのに300万点の部品が必要と言われており、それらの多くは従来の型成形、切削加工により作られ、その作り方による制限から、多数の部品を溶接、ボルトやリベット締結、接着などで組み立てられること、またそれらネジ1個でも厳しい品質基準と工程管理、記録が求められる。

しかし3Dプリンティングで作る前提で設計すると、今まで接着が必要であった部品を一体化できる場合があり、部品点数を減らすことができる。当然、各部品は長期間修理、メンテナンスされながら使われるので、長い期間の管理工数を大きく減らせることになる。

②納期やカスタマイズのニーズに応えられるように

新型コロナの影響により、民間航空機の需要が大きく落ち込んでいることは昨今よく報道されており、その分エアライン会社間の顧客獲得競争は激しさを増している。各社もより良いサービスや料金の差別化、燃費などのコストダウンの要求が高まり、アフターコロナの世界では航空機メーカーもこれまで以上に厳しい要求に応える必要が出てきている。

特に新型の飛行機は、納品されるまでにさまざまな仕様設計変更があり、納期も守らなければならない中で、3Dプリンティングで製造する部品であれば、設計仕様変更を従来より短時間で行えることや、納品後もさまざまな改良、デザイン変更、カスタマイズ要求に柔軟に素早くこたえられることも期待されていることの一つだ。

高い耐薬品性と疲労耐性を備えたAntero 800NA

今回ボーイングが認証したストラタシス社のAntero800NAは、Antero材料群に属している造形材料である。Antero材料群は、今回のAntero 800NAとAntero 840CN03で構成されており、Antero 840CN03は静電気放電(ESD)性能を備えた造形材料である。

今回ストラタシスはAntero 800NAとAntero 840CN03を、ストラタシス社の3Dプリンター、と「ortus 450mc」と「F900」を使用するお客様に提供するほか、造形サービスを利用するお客様に材料オプションとして提供するとのこと。

Antero 800NAについては工業グレードのストラタシス FDM® 3D プリンター向けに開発されたPEKK(ポリエーテルケトンケトン)ベースのポリマーであり、他の材料と比較し高い耐薬品性と疲労耐性を備えたPEKKベース材料だ。

ボーイングは800NA材料の性能に関する広範な評価を実施した後、BMS8-444 仕様をリリースし、800NAを認証製品リスト(QPL)に追加した。この追加により、800NAはストラタシスの材料として初めて、ボーイングに対しより高い耐薬品性や疲労要件が求められるアプリケーションへの使用が可能になったことになる。

ボーイングはこれまで 3D プリンティングによる部品が使用不可能だったアプリケーションに対する Antero の優れた有用性を評価しました。アディティブ・マニュファクチャリングはオリジナル部品と MRO(保守・修理・点検)の両方において、航空宇宙サプライチェーンをシンプルにする大きなメリットを提供します。

ストラタシス、航空宇宙担当バイス・プレジデント Scott Sevcik
Antero 800NAを材料とした造形物(ストラタシス公式Webサイトより引用)
Antero 800NAを材料とした造形物(ストラタシス公式Webサイトより引用)
Antero 800NAを材料とした造形物(ストラタシス公式Webサイトより引用)
Antero 800NAを材料とした造形物(ストラタシス公式Webサイトより引用)
項目詳細
概要PEKK(ポリエーテルケトンケトン)ベースのFDM熱可塑性プラスチック
特徴・高い耐薬品性
・耐熱性
・超低ガス放出特性
用途・ジェット燃料、オイル、油圧油にさらされる航空機部品
・低ガス放出が必要な宇宙船パーツ
・耐薬品性の産業パーツ
サポートしている3DプリンターFortus 450mc
F900
Antero 800NA概要(ストラタシス公式サイトよりShareLab編集部作成)

ストラタシスについて

ストラタシスは 3Dプリンティングとアディティブ・マニュファクチャリング技術で世界をリードする企業。30年にわたり、同社製品は製品開発期間、コスト、工具コストの削減/解消、製品の品質向上をサポートしてきた。

FDM® および PolyJet™ 3Dプリンタ、各3Dプリンタ材料の製造販売、ソフトウェア開発販売、エキスパート・サービス、パーツ造形サービスに関するソリューションや専門知識を提供している。

関連情報

シェアラボ編集部

3Dプリンタ―の”先進っぽさ”を感じさせる作りに男心をくすぐられる毎日。さまざまな業界にて活用されるアディティブ・マニュファクチャリングの今をお届けします!最近のニュースは、鳥を飼い始めたこと。

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