小惑星探査用の宇宙ロボットの製作に3Dプリンターを活用
スイスの国立大学であるチューリッヒ工科大学が、小惑星探査用のロボット「SpaceHopper」のプロトタイプを開発。脚部は一部、3Dプリントにより作成された。(画像は小惑星探査ロボット「SpaceHopper」出典:Scheurer Swiss社)
SpaceHopperの開発背景
人類は、将来的に宇宙からの補給や生存のための資源採取に依存する可能性がある。そのような状況になったとき、SpaceHopperを小惑星に投入し、貴重な資源を発見することを目指し、開発された。
開発チームは、SpaceHopperが太陽系の広大な未開の地を探索するためのさまざまな課題を解決できると期待している。
特徴│堅牢性と超軽量の両方を兼ね備えた宇宙用ロボット
SpaceHopperは、炭素繊維強化材料で部分的に3Dプリントされた3本脚を持つ装置で、堅牢性と超軽量の両方を兼ね備えた宇宙用ロボットだ。ぴょんぴょんと飛び跳ねるような「ホッピング」で移動する。3本脚なのは、小惑星表面の低重力でのホッピングに最適化された軽量設計のためだ。
無重力の状態で大きく跳躍することができるように設計されているだけではなく、科学機材を搭載し、必要に応じて狭い場所でも移動できるようになっている。深層強化学習によるプログラミングを行うことで、自立・着地制御も可能だ。
また、これまでの着陸機と比較して、より正確な着陸を可能にすることで、跳ね返りを最小限に抑え、搭載物をより確実に保護できる。
Scheurer Swiss社とのパートナーシップ
SpaceHopperの開発には、3Dプリンター製のパーツを開発するScheurer Swiss社とのパートナーシップが大きく貢献した。Scheurer Swiss社の3Dプリント技術を使用することで、SpaceHopperの脚の弾力性を低下させることなく軽量化に成功したのだという。
SpaceHopperのデザイナーの一人であるEmma Steinke氏は、「軽量設計の専門家であるScheurer Swiss社が私たちの味方になってくれたことを嬉しく思います。最先端の繊維複合技術や3Dプリントに関する有能な専門知識と、Scheurer Swiss社の大規模なネットワークは、私たちにとって非常に貴重であり、スタートアップ時から私たちのプロジェクトの成功に貢献してくれました。」と述べている。
また、Scheurer Swiss社のCEOであるDominik Scheurer氏は、今回のプロジェクトについて、「3Dプリントは事実上どんな形状でも製造できるため、プロジェクトの実現のための理想的な製造プロセスだと考えました。この技術を使ってロボットの脚を作ることで、高いレベルのカスタマイズ性とコスト効率を実現し、低重心でのホッピングに最適化された設計に成功しました」と述べ、さらに「3Dプリントは、現在最も近代的な軽量構造技術の1つであり、他のどのプロセスよりも製造業の未来を形成しています」とつけ加えた。
3Dプリンティングは、航空宇宙分野での新たな用途を見出すとともに、欧米の宇宙機関の探査用機器の製造でもすでにひんぱんに利用されている。
3Dプリンターが製品開発にもたらす柔軟性や創造性、低コスト化は、大きなコストのかかる航空宇宙分野においては、今後ますます存在感を増していくだろう。
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