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牛に頼らずに乳製品を作る方法、3Dプリンターで実用化。アイスの試験販売は好調ですでに完売

アメリカのサンフランシスコに拠点を置くバイオ系スタートアップ企業「PerfectDay(パーフェクト・デイ)」は牛に頼らずに乳製品を作る世界初の「乳製品生産フローラ」をバイオ3Dプリンターをつかって実用化している。実験的なデモ販売として自社サイトでカップ3種セット(塩バニラ、ブラックベリー、チョコレート)を約6500円と実験的な価格で売り出したところ、初回出荷分は既に完売、市場の大きな期待を感じる結果となった。 後天的な菜食主義者である2人の起業家が菜食主義者でも楽しめる「動物由来でない乳製品」を作りたいというビジョンからはじまったこの取り組みを広げるために、今後、「植物由来乳タンパク質」をアイス以外にも採用してくれるパートナー企業を探していくとのことだ。

工場内で牛なしで牛乳が生産できる目途が立ったということ。

PerfectDay(パーフェクトデイ)はバイオ3Dプリンターで 糖分を発酵させ乳たんぱく質(ガゼインとホエイ)を精製できる特殊な菌を生み出し、実際にアイスクリームを作って見せた。

広大な牧草地と多数の牛から牛乳を搾るという従来のプロセスなしに、酒蔵のような発酵プラントをそなえた工場の中で植物由来牛乳を工場内だけで生産できるという完全なプラント生産が実現可能な段階に入ったという事は大きなインパクトがある出来事だといえる。東京で牛を飼わなくても、高層ビル内のプラント施設で牛乳が生産できる、砂漠の真ん中でたんぱく質を大量生産し食糧問題を解決する、そんな近未来的なアイディアを実現できる基礎ができたということだ。

その影響範囲は、
・菜食主義者市場への植物由来乳製品市場の開拓
・従来の乳製品の生育促進のためのホルモン剤投与の影響や牧草の農薬が生物濃縮されるといういままでの問題点を解決
・工場内で大量生産することで人口増加にともなう食糧問題への解決
など多岐にわたる。

すでにイリノイ州に拠点を置く世界の農業および食品原料事業であるArcher Daniels Midland(ADM)と共同開発契約を結び、生産量の拡大と乳製品タンパク質の商品化を行っているが、今後広く食品メーカとの連携を図っていくとのこと。

課題と展望

「菜食主義者への動物由来でない乳製品の提供」というスタート地点だが、プラント内で完結生産できる乳製品という側面をもつ今回の”発明”は、ODAなどの政府支援とともに、アフリカなどを中心に食糧事情が良くない地域に急拡大する可能性もある。

遺伝子組み換えをおこなった農作物の種が飛躍的に世界に広がったのちに、規制に関する討議が始まり、遺伝子組み換え種子持ち込み禁止エリアなどが策定されていったように、こうした新しい取り組みは規制や社会合意よりも先に社会に広がっていくだろう。

大きなビジネスチャンスがそこにある。無事社会的なリスクへの合意が得られた後には、日本酒の酒蔵のように、さまざまな酵母の亜種をもったプラントが味を競い、未来の食卓を彩るのだろう。

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編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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