3D細胞培養で肝疾患を再現 ─ サイフューズ、「ヒト3Dミニ肝臓®/疾患モデル」を販売開始

2025年12月29日
「ヒト3Dミニ肝臓®/疾患モデル」の製品外観(96ウェルプレート入り;左)と模式図(右)出典:サイフューズ
「ヒト3Dミニ肝臓®/疾患モデル」の製品外観(96ウェルプレート入り;左)と模式図(右)出典:サイフューズ

3D細胞組織培養技術を手がける株式会社サイフューズ(以下、サイフューズ)は、代謝機能障害関連脂肪性肝炎(MASH)の新薬開発を支援する新製品「ヒト3Dミニ肝臓®/疾患モデル」を、2025年12月22日より販売開始した。同社はこれまで、ヒト肝臓の一部機能を体外で再現する3D細胞製品「ヒト3Dミニ肝臓®/健常モデル」を提供し、製薬企業を中心に薬剤安全性評価用途での導入を進めてきた。3D細胞組織培養技術を基盤とした機能性細胞デバイス(FCD®)は、従来の2次元培養や動物実験では再現が難しかったヒトの生体反応を評価できる点が特徴である。

脂肪肝からMASHまでを3Dで再現

今回販売を開始した疾患モデルは、初期の脂肪肝から、炎症や線維化を伴う脂肪性肝炎(MASH)まで、病態の進行段階を3D細胞組織として再現できる点に特長がある。疾患の状態ごとに評価が可能であり、MASH治療薬の探索や薬効検証において、より実態に近い検討が可能となる。

また、本モデルを用いることで、「薬剤性肝障害に関する安全性評価」と「疾患に対する薬効評価」を同一の評価系で同時に実施できる。評価期間は約3~4週間とされ、新薬開発における時間とコストの削減、開発リスクの低減につながる点もポイントだ。

製造を支える無せん断攪拌技術

本製品の製造には、大阪サニタリー株式会社が有する「無せん断攪拌技術」と、サイフューズ独自の3D細胞組織培養技術が組み合わされている。

生きた細胞を傷つけることなく均一に混合できるため、ばらつきの少ない3D細胞製品を安定的に製造できる点が強みである。この製造手法により、疾患状態の異なるモデルを高い再現性で供給でき、競合製品との差別化につながっているという。

創薬支援から生活習慣病領域へ

同社は、富士フイルム和光純薬、シスメックス、ケー・エー・シー、極東製薬工業、オリエンタル酵母工業といった販売提携パートナーと連携し、本製品の市場展開を進める。今後は「ヒト3Dミニ肝臓®」に続くFCD®製品シリーズの拡充を図り、創薬支援事業の強化に加え、生活習慣病領域への展開や海外市場への進出も視野に入れるとしている。

シェアラボ編集部コメント

MASHを含む肝疾患は患者数が多く、創薬ニーズが高い一方で、評価モデルの確立が課題とされてきた。3D細胞培養によって疾患の進行段階まで再現できる点は、創薬プロセスの現実解に近いアプローチといえる。3Dプリンターと並び、3D技術が医療・創薬の基盤技術として定着しつつあることを示す事例だ。

用語解説

■ ヒト3Dミニ肝臓®
ヒト由来の細胞を用い、3D細胞組織培養技術によって肝臓の一部機能を体外で再現した細胞モデル。従来の平面培養(2D培養)では再現が難しかった代謝機能や薬物応答を評価できる点が特長。
■ 疾患モデル(Disease Model)
特定の病気の状態を再現した実験用モデル。本製品では、脂肪肝から脂肪性肝炎(MASH)まで、疾患の進行段階を3D細胞組織として再現し、新薬の有効性や安全性評価に用いられる。
■ MASH(代謝機能障害関連脂肪性肝炎)
脂肪肝が進行し、炎症や線維化を伴う状態を指す疾患概念。肝硬変や肝がんへ進行するリスクが高く、生活習慣病との関連が強いことから新薬開発の需要が高まっている。
■ 3D細胞組織培養技術
細胞を立体的に配置・培養することで、生体内に近い細胞間相互作用や組織構造を再現する技術。3Dプリンターやバイオファブリケーション技術とも親和性が高く、創薬や再生医療分野で活用が進んでいる。
■ 機能性細胞デバイス(FCD®:Functional Cellular Device)
サイフューズが展開する細胞製品群の位置づけ。単なる細胞試料ではなく、特定の生体機能を安定的に再現・評価できる「デバイス」として設計されている点が特徴。
■ 無せん断攪拌技術
攪拌時に細胞へ強いせん断力を与えないよう制御する混合技術。生きた細胞を損傷させず均一に混合できるため、品質ばらつきの少ない3D細胞製品の安定製造を可能にする。
■ 薬剤性肝障害
医薬品の副作用として発生する肝機能障害。新薬開発では有効性と並び重要な評価項目であり、ヒト細胞を用いた評価モデルへのニーズが高まっている。

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