3Dプリンター向けデンチャー(入れ歯)をデザインするクラウドサービス開始―三井化学子会社
3Dプリンターで造形する入れ歯デザインのクラウドサービスが日本でも利用可能に
三井化学の子会社、クルツァージャパン株式会社は米DENTCA, Inc.が提供するクラウド上でデンチャ(入れ歯)をデザインできるクラウドサービスの販売を2020年11月から開始しているとの発表があったので紹介する
従来は、歯科医師が樹脂で型を取り、歯科技工士が石膏型などを使って歯並びや歯肉の模型を製作するなどのプロセスを経ていたが、本クラウドサービスを用いることでソフトウェア上でのデザインが可能になる。デザインされた3Dモデルデータがあれば、クルツァージャパンが取り扱う薬事認証を取得した鳩歯肉造形用の3Dプリンター用レジンインクを使って3Dプリンターで造形できるようになり、作業時間を10分の1程度に圧縮できる。
世界的に広がる歯科向け3Dプリンター市場
歯科分野では3Dプリンターの利用が拡大している。米調査会社レポート・インテレクトによると歯科医療用3Dプリンター市場は、2019年時点の全世界の歯科医療用3Dプリンター市場を3億1千万ドル(約330億円)規模。今後年率7.2%の成長率で成長を続け、2024年に4億4000万ドル(約470億円)規模に成長するという予測を発表している。
歯科医療分野での具体的なアプリケーションとしては、矯正用マウスピース、クラウン・ブリッジ、入れ歯などが想定されており、日本でもインプラント手術用のサージカルガイドなどの製造は着実に広がりを見せている。
職人の手仕事が3Dプリンターでデジタルなモノづくりへ変貌
背景には、歯科分野の入れ歯やクラウン(かぶせもの)が今までい手作業で作られてきた事情がある。特に日本では国家資格である歯科技工士の資格を取得しても、実際に就労している資格保持者は30%前後と低水準にあるといわれ、年々絶対数が減少している問題もあり、3Dプリンターの歯科分野のアプリケーションは今後も成長性が見込めるマーケットだといえる。
こうした入れ歯用歯肉や入れ歯の材料は従来は強度の面から金属材料が主体だったが、樹脂にシフトしてきており、樹脂ならではの弾性を活かしたアプリケーションも登場している。
ソフトスプリントと呼ばれる「噛み合わせによる顎などの障害を回復するために装着するマウスピース」などがその例で、造形用レジンインクがラインナップされたことで一品一様のモノづくりが一層進むだろう。
三井化学が開発したレジンインクは、Kulzer GmbH(所在:ドイツ)で歯科医療分野での用途に応じた検証を行っており、最適化されているとのことで、B9Creations, LLC(所在:米国サウスダコタ州)の3Dプリンター(cara Printer)で造形しているとのことだ。
歯科分野ではサイズ・形状ともに人類の歯という形状が近しいものに最適化されているため、3Dプリンターの造形レシピによる再現性は高いことが期待できそうだ。
2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。