高精細3Dバイオプリントを可能にする高濃度コラーゲンバイオインクをニッピが開発

2025年10月2日
ニッピのプレスリリースより。

株式会社ニッピは、従来の課題であった「高濃度かつ高精細な造形」を克服するコラーゲン由来の3Dバイオインクを開発した。本製品は室温での安定造形を実現し、複雑な三次元組織モデルの構築や移植・創薬研究への応用が期待されている。特許技術を基盤とした独自性の高い製品であり、2025年内の発売を予定している。(上部画像はニッピのプレスリリースより。出典:ニッピ)

開発の背景

3Dバイオプリンティングは、臓器や組織の複雑な構造を再現する技術として注目されている。特にコラーゲンは高い生体適合性と分解吸収性を有することから医療材料として有望であるが、造形後の形状保持の困難さや温度管理の煩雑さが課題であった。

技術的特徴と従来品との違い

新製品は独自技術により、従来の1~7%濃度を超える10%以上の高濃度化に成功した。内径0.2mmの細径ノズルからも安定して吐出でき、さらに室温で造形可能である。これにより、温度制御を必要とする従来のコラーゲンバイオインクの欠点を克服し、高精細な三次元構造を容易に形成できるようになった。

コラーゲンバイオインク(調製済)の外観:15%濃度に調製した本製品は、細径ノズルからスムーズに吐出することが可能だという。
コラーゲンバイオインク(調製済)の外観:15%濃度に調製した本製品は、細径ノズルからスムーズに吐出することが可能とのこと。(出典:ニッピ)

製品仕様と用途

製品名は「コラーゲンバイオインク」(商品コード:892271)で、ブタ真皮由来ペプシン可溶化コラーゲン(NMPコラーゲンPS)を原料としている。形態はシリンジ充填の凍結乾燥物(0.3g)で供給される。用途は三次元組織モデルの構築に加え、移植用材料、ドラッグデリバリーシステム担体など幅広い。

3Dプリンターによる組織構造体の造形

ヒト組織様構造として、半月板、大腿骨、鼻、耳を3Dバイオプリンターで造形した。設定した3Dデータに基づき、各構造を高精細に再現できている。半月板、大腿骨は造形後に凍結乾燥を施している。

ヒト組織様構造体の造形:ヒト組織様構造として、半月板、大腿骨、鼻、耳を3Dバイオプリンターで造形した。設定した3Dデータに基づき、各構造を高精細に再現できている。半月板、大腿骨は造形後に凍結乾燥を施している。
ヒト組織様構造体の造形(出典:ニッピ)

細胞含有3D構造体の造形と培養

15%インクを調製後、細胞懸濁液と混ぜ合わせ、細胞含有10%インクを調製した。これを用いて、格子形状シート構造を造形し、培養を行った。約1週間後も造形物の形状は維持できており、造形物内に細胞が局在し、生存していることが確認された。

細胞含有3D構造体の造形と培養:15%インクを調製後、細胞懸濁液と混ぜ合わせ、細胞含有10%インクを調製した。これを用いて、格子形状シート構造を造形し、培養を行った。約1週間後も造形物の形状は維持できており、造形物内に細胞が局在し、生存していることが確認された。
細胞含有3D構造体の造形と培養。(出典:ニッピ)

医学・創薬分野への貢献

高濃度による剛性向上で造形時の潰れを防ぎ、サポート材不要の積層も可能である。さらに高精細な造形を実現し、中性pHのため細胞を直接混合できる。これにより研究者や臨床現場での実用性が高まり、再生医療や創薬研究の加速に資すると考えられる。

今後の展望

本製品は特許技術に基づき独自性を有しており、2025年内に発売予定である。ニッピは本インクを通じて医学・創薬分野の発展に寄与するとともに、将来的な移植医療への応用を視野に研究開発を推進していく方針である。

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