日本最初の盲学校に3Dプリンター導入!サンコンタクトレンズ、京都府立盲学校へ寄贈し「触れる学び」を支援

2025年12月26日
寄贈式の様子/株式会社サンコンタクトレンズ 代表取締役社長 笹川泰弘(左)と京都府立盲学校 校長 田渕茂彦様(右)(出典:サンコンタクトレンズ)
寄贈式の様子/株式会社サンコンタクトレンズ 代表取締役社長 笹川泰弘(左)と京都府立盲学校 校長 田渕茂彦様(右)(出典:サンコンタクトレンズ)

サンコンタクトレンズは、2025年11月17日、教育支援活動の一環として、京都府立盲学校へ3Dプリンターを寄贈した。寄贈先となった京都府立盲学校は、日本最初の盲学校として知られ、視覚障がい教育の分野で長い歴史を持つ教育機関である。今回の取り組みは、視覚に障がいのある児童生徒にとって重要な情報取得手段である「触察」を支える教材制作環境を整備し、教育のユニバーサルデザイン化を進めることを目的としている。

触察を支える立体教材づくりに3Dプリンターを活用

視覚障がいのある児童生徒にとって、指先で形状や大きさを確認する触察は、学習を進める上で欠かせない手段である。点図や言葉による説明だけでは理解が難しい形状や空間構造も、立体物に触れることで具体的なイメージを持つことができる。3Dプリンターの導入により、従来は準備が困難だった立体教材や、授業内容に応じたオリジナル教材の制作が可能となり、「触れて理解する学び」の幅が広がる。

※下記制作物は、3Dプリンターで制作した触察教材のイメージであり、本画像はAIツール(ChatGPT)で生成したもの。

花の構造・DNAモデル・骨格・魚・貝殻・花(出典:サンコンタクトレンズ)
花の構造・DNAモデル・骨格・魚・貝殻・花(出典:サンコンタクトレンズ)
カマキリとクワガタ(出典:サンコンタクトレンズ)
カマキリとクワガタ(出典:サンコンタクトレンズ)

教育現場で扱いやすいデスクトップ型3Dプリンター

今回寄贈された機材は、デスクトップ型3Dプリンター「FLASHFORGE Adventurer 5M Pro」である。デジタルデータから短時間で精度の高い立体物を造形でき、学校現場でも扱いやすいサイズと操作性を備えている点が特長だ。教材制作に必要な造形品質を確保しつつ、教員が日常的に活用できる点は、特別支援教育における3Dプリンター活用の実例として注目される。

日本最初の盲学校としての役割

京都府立盲学校は、1878年に「京都盲唖院」として設立された、日本で最も歴史のある盲学校である。幼稚部から高等部、専攻科までを備え、普通教育と専門教育を組み合わせた幅広い教育体制を構築している。

高等部では、就労や進学を見据えた教育に加え、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師といった医療系国家資格取得を支援する教育も行っている。近年はICT機器の活用にも力を入れ、地域の視覚障がい児童生徒への支援拠点としての役割も担っている。

京都府立盲学校 高等部の校門の様子(出典:サンコンタクトレンズ)
京都府立盲学校 高等部の校門の様子(出典:サンコンタクトレンズ)

医療分野の知見を社会貢献へ

1971年創業のサンコンタクトレンズは、眼科医療と連携し、個々の角膜形状に合わせたカスタムメイドのハードコンタクトレンズを手がけてきた企業である。高度な設計・加工技術を基盤に、ユニバーサルデザインや環境配慮を意識した製品開発にも取り組んでいる。

同社は、文化・芸術支援や障がいのあるアーティストの活動支援など、CSR・SDGsの観点から地域社会と連携した活動も展開しており、今回の3Dプリンター寄贈もその一環として位置づけられる。

教育×3Dプリンターの次の展開へ

今後、京都府立盲学校では、3Dプリンターを活用した触察教材の試作と授業への導入が本格化する見通しだ。授業内容に応じた教材制作に加え、児童生徒自身の発想を形にする探究的な学習への応用、さらには他の視覚特別支援学校との教材データ共有といった展開も期待されている。

3Dプリンターは製造業だけでなく、教育の現場においても「理解を助ける道具」としての可能性を広げつつある。今回の事例は、その具体的な実践例の一つと言えるだろう。

シェアラボ編集部コメント

3Dプリンターは製造業の道具という印象が強いが、本事例は「学びを支える装置」としての価値を明確に示している。視覚障がい教育において触察は不可欠であり、立体教材を柔軟かつ内製できる環境は、教育の質そのものを底上げする。特に、教員や児童生徒の発想を即座に形にできる点は、探究的な学習とも相性が良い。ユニバーサルデザインやインクルーシブ教育が求められる中、3Dプリンター活用の現実的なモデルケースとして、他の特別支援学校や一般校への波及にも注目したい。

用語解説

■ 触察(しょくさつ)
指先で物に触れ、形状・大きさ・配置などを把握する認知手法。視覚障がい教育においては、情報取得や理解の中核となる学習手段である。
■ 触察教材
触って理解することを前提に作られた教材。立体模型や凹凸のある図形などが含まれ、空間構造や形状理解を助ける役割を持つ。
■ デスクトップ型3Dプリンター
教室やオフィスでも設置できるサイズの3Dプリンター。比較的操作が簡単で、安全性や扱いやすさを重視した設計が多く、教育用途との親和性が高い。
■ ユニバーサルデザイン教育
障がいの有無に関わらず、すべての学習者が理解しやすいように設計された教育環境・教材・指導方法の考え方。本記事では、触察教材の内製化がその一例となる。
■ インクルーシブ教育
障がいのある子どもとない子どもが、可能な限り同じ教育環境で学ぶことを目指す教育理念。ICTや3Dプリンターなどの技術活用は、その実現を支える手段の一つとされる。
■ 探究的な学習
学習者自身が課題を設定し、試行錯誤しながら解決策を見出す学習形態。3Dプリンターは、アイデアを即座に立体化できるため、探究活動との相性が良い。
■ 特別支援教育
障がいのある児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じて行われる教育。教材や指導方法の柔軟な工夫が求められ、3Dプリンターは新たな支援ツールとして注目されている。

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