「持続可能」をコンセプトにした3Dプリントマウンテンバイクを発表
ドイツに本社を置く自転車メーカーのCanyon社は、これまで以上の持続可能な自転車製造方法を示すことを目的に3Dプリンターによって製造したマウンテンバイクのプロトタイプを発表した。今後商品化をして生産する予定はないとのこと。
今回、同社が3Dプリントマウンテンバイクを製造した背景と自転車メーカーに広がる3Dプリント事例についてご紹介する。
3Dプリントマウンテンバイク作成の背景
自転車メーカーのCanyon社は、本社をベルギーに置くソフトウェアと3DプリントサービスのプロバイダーであるMaterialise社と協力し、雑誌Bike Magazine Germanyのキャンペーン「Ride Green」の一環として、フレームとフォーク(前輪を支え、乗り心地を左右するパーツ)を3Dプリントした自転車を発表。
完成した自転車は、ロンドンで開催されたサイクルショーで展示された。
「Ride Green」プロジェクトの目的は、すべての構成部品が完全にリサイクル可能で、可能な限りサステナブルなバイクを設計することであった。また、使用される素材は、パーツの品質を損なうことなく再利用可能である必要があり、廃棄物の削減もプロジェクトの重要な目標のひとつとなっていた。
Canyon社は、このプロトタイプバイクの製作プロジェクトにおいて、再利用できない廃棄物を一切出さないフレームとフォークの製造を任された。その上で最も適切で持続可能な製造方法として、3Dプリントが選定されたという。
製作にあたってはMaterialise社のSLM方式3Dプリンターが採用された。
Materialise社は昨年イタリアの自転車メーカーPinarello社のレーシングバイク「Dogma F」に3Dプリンターで作成した2,000個の部品を提供したことでも広く業界で知られている。
3Dプリントマウンテンバイクの特徴
すべての構成部品が完全にリサイクル可能な自転車を作成するという目標を達成するためにフレームとフォークはリサイクルされたアルミニウムパウダーを素材にして3Dプリントされた。
単純に3Dプリントするのではなく環境負荷軽減のためにフレームの製造に使用する原材料の総量を削減し、自転車としてのパフォーマンス向上も目指したという。
フレームは3つの部品に分けて3Dプリントした後、接着されている。プリント後のフレームとフォークの重量はわずか2㎏だ。
Canyon社は、この自転車が生産される予定は今のところないとしているが、このプロジェクトは、同社の将来のモデルの設計と製造の方法に影響を与える可能性は大いにあるだろう。
自転車メーカーに広がる3Dプリントの波
3Dプリンターを用いることによってこれまで実現できなかった複雑な形状の部品を製造できる。そのため、近年、多くの自転車メーカーが3Dプリンターを活用するようになってきている。
ShareLabNEWSでは以前、身長、体重、腕や脚の長さなどの体型情報やライディングポジションなどを基に、完全オーダーメイドできるカーボンファイバー製3Dプリントスポーツバイクについて取り上げている。
こちらはオーダーメイドでありながら一般市場価格の約1/5という低価格での提供できる点で大きな注目を集めている。
自転車メーカーと3Dプリンターメーカーの協業や、3Dプリンターメーカーがクラウドファンディングプラットフォームを用いて自転車部品の発表をするなど、自転車業界で3Dプリントの採用が始まっている。
今後もこの流れは大きく広がっていくだろう。
関連情報
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