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オランダの金属3DプリンターメーカーMX3Dが地中を泳ぐクジラの群れの彫刻を金属造形

whalepass

アムステルダムに本社を置く金属3DプリンターメーカーMX3D社は、Studio C&Cがデザインした「The Whale Pass」というアート作品をWAAM方式の金属3Dプリンターで造形した。The Whale Passは海を泳ぐクジラの群れをテーマにした金属彫刻で、地中から泳ぐクジラの尾びれや背びれが全高5m以上の巨大な彫刻で表現されている。

The whale pass

北イタリア、トリノのロイヤルガーデンは、都市の中心に位置し、緑豊かな公園だ。2022年5月5日から10月16日まで、「ANIMLI A CORTE(宮廷の動物)展」がロイヤルガーデンで開催されていた。本展では、16人のイタリア人アーティストらが参加し、「動物」をモチーフとした25の作品が展示された。

Studio C&Cのデザイナー、Paolo AlbertelliとMariagrazia Abbaldoが本展で作り出したのは、泳ぐクジラの群れだ。「The Whale Pass」と呼ばれる本作品は、地中から飛び出したクジラの頭、尾、ヒレからなる。

総重量880kg、クジラの頭の高さは5mにもなるこの巨大な作品は、金属3Dプリンターを用いて作られた。

The Whale Pass(出典:Studio C&C)

WAAM

彫像製作を請け負ったのは、建設用3Dプリンターを扱うMX3D社だ。

MX3D社は材料ワイヤーを溶融しながら造形を行うWAAM方式の3Dプリンターメーカーだ(写真は同社サイトより)

MX3Dは、WAAM(Robotic Wire Arc Additive Manufacturing)という技術を用いた大型の積層造形を得意とする。これまでには、橋やエレベータのかごを建設してきた。

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WAAM方式は、多関節ロボットアームとワイヤ溶接を用いる3Dプリンティング技術だが、MX3Dの装置の最大の特徴は「アタッチメント型システムで、ハードウェアに依存しない」ことにある。つまり、産業用ロボットアームを用意し、そのロボットアームに同社のWAAMユニットを接続すれば、大型の金属3Dプリンターとなるのだ。動作原理上、造形サイズに上限がなく、様々な形状に対応できる。

産業用ロボットの制御技術は過去数十年で劇的に向上してきた。MX3D社のWAAMユニットは、文字通り「産業用ロボットという巨人の肩に立つ」技術と言える。

今回のThe Whale Pass製作においては、一度の印刷で高さ3mまで造形され、その後、手作業で各部が溶接された。

金属彫像と3Dプリンター

デジタルとアートが融合しつつある昨今、3Dプリンターはアーティスト達の表現ツールの1つとなった。

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トラディショナルな彫像・銅像の製作方法は多大なコストと時間が必要だ。

一方で、金属3Dプリンターを用いた彫像製作は、速さと低コストを両立する。将来的には彫金職人に求められるスキルが3DCGや3DCADのモデリングスキルになるかもしれない。設計データと造形装置のパラメーターの組み合わせがあれば、おなじ彫像を世界中で製造できる。リトグラフ(版画の一種)のように作家個人のサインやナンバリングを付与した作品群が世界中に設置できるかもしれないし、顔の部分は自分や家族の顔をもとにモデリングしてもらうなどのカスタマイズをおこなった彫像が普及するかもしれない。暗号通貨のNFTアートなどとも連携した未来もあるかもしれない。

装置としての3Dプリンターの一般化が進めばコストの制約は大幅に低減されるだろうから、現在の私たちの生活に2次元アートが溢れるように、未来は、3次元の巨大なアートが無数に溢れる世界となるだろう。

これまでにSharelabでも3Dプリンターを取り入れた芸術分野の事例を取り上げてきた。その一覧は以下のURLを参照されたい。
https://news.sharelab.jp/?s=%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%88

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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