竹中工務店は、西日本旅客鉄道(JR西日本)らと共創し、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)会場への乗換拠点となるJR大阪環状線・弁天町駅に、金属3Dプリンターで製作した大型ベンチ「ルーレベンチ」を設置した。全長6.2メートル、幅1.5メートルという規模は、屋外公共空間に置かれる金属3Dプリンター製作物として国内最大級となる。(上部画像はJR大阪環状線・弁天町駅に設置された「ルーレベンチ」出典:竹中工務店)
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廃レールを再生利用し公共ベンチへアップサイクル
このベンチの特徴は、素材のアップサイクルにある。フレームには、JR西日本の鉄道で使用されていた廃レールを溶解・再成形したステンレス鋼溶接ワイヤを一部採用した。これにより、従来は金属スクラップとして回収されていた資源を、新たな公共施設として再生することにつながっている。
WAAM方式とトポロジー最適化で実現した有機的フレーム構造
造形にはWAAM(Wire Arc Additive Manufacturing)方式を使用した。アーク溶接により金属ワイヤを積層するこの方式は、大型造形に適しており、自由度の高いデザインを可能にする。設計段階では構造解析を繰り返し行い、トポロジー最適化により有機的な形状を導き出した。オーバーハング角度や分岐部の造形性を検討した上で製作に移行し、6メートルを超えるフレームは分割造形の後、職人による組立溶接で一体化された。座面には六甲山で採取されたヒノキの間伐材が使用され、フラン樹脂による防腐・耐久処理を施している。これにより、地域資源の循環利用にも配慮した設えとなっている。



「ルーレベンチ」に込められた“反転”と“循環”の意味
「ルーレベンチ」という名称には、役割を終えた鉄道レールを人の居場所へと“反転”させるイメージと、フランス語“Roulé”が持つ「循環」の意味が込められている。反転したレールと枕木が形を変えて居場所となるデザインは、廃材の再利用と公共空間の新しい形を象徴している。

専門企業の共創で実現した資源循環と先端技術の融合
製作にあたっては、廃レールの再生、金属3Dプリンティング、木材加工などの分野を担う複数の企業や団体が参画した。各専門領域の技術を結集させることで、資源循環と先端製造技術の活用を両立させている。

建築部材への応用と循環型社会への展望
竹中工務店は、今回の知見を今後の建築部材への金属3Dプリンティング応用に活かす方針である。建築や都市インフラへの展開により、設計自由度の向上、部材の軽量化・大型化、維持管理性の改善などが期待される。また、金属のアップサイクルを推進することで、循環型社会の実現にも寄与していく考えである。
万博会場駅から広がる公共空間の新たな可能性
万博の玄関口となる交通結節点に設置されたルーレベンチは、公共空間における資源循環と3Dプリンティング活用の具体例として位置づけられる。こうした取り組みが今後の建築や都市開発にどのように広がるか、関心が寄せられる。
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