Aleph Farms社がアジア最大の食品会社とバイオプリント肉を生み出すパートナーシップ締結
イスラエルのフードテックスタートアップ企業Aleph Farms社が、タイを拠点とするシーフード大手タイ・ユニオン社、韓国の総合食品大手CJ第一製糖社とパートナーシップを結んだ。
Aleph Farms社は培養肉を開発するフードテック企業
イスラエルの都市レホボトに拠点を置くAleph Farms社はバイオ3Dプリンターを活用して培養肉を開発する企業だ。培養肉とは牛などの動物から取り出した少量の細胞をもとに、動物の体外で増やしてつくる肉のこと。豆腐ステーキや大豆ミートとは異なり、実際に肉として食べられる動物の細胞を培養して作られる。
Aleph Farms社は2021年1月に日本への培養肉導入について三菱商事と契約提携した。肉の需要が増加している日本に培養牛肉を導入する基盤作りが始まっている。
注目を集める培養肉のメリット
農場ではなくいわば研究所で製造される培養肉は、従来の畜産にはないメリットがある。大きく分けると以下の4つだ。
- 効率性のよい生産システム
- 環境負荷の低減
- 安全性の向上
- フードロスの抑制
食肉にするために牛を育てることを考えると、大量のエサと水に加え、放牧地も必要になる。世界的には人口が増加しているので、より効率的に食料を生産できる仕組みが求められている。また、新たに放牧地や農場を設けるとなると、森林伐採といった環境問題も浮上してくる。これら2点の問題に加え、衛生的な環境で作られる培養肉は人体に危害をおよぼすバクテリアが付着する恐れが少なく安全性が高い。さらに近年注目されているフードロスに対しても、生きている動物を食肉にするわけではないので倫理的な観点もクリアできる。
アジア全体の牛肉消費量は増加している
アジア地域の経済成長によって、肉の消費量は増加している。アジア全体の牛肉消費量は今後10年間で270万トン増加する可能性があるとされており、これは世界規模で考えても最大の増加となる。
Aleph Farms社とタイ・ユニオン社が実施した調査によると、培養肉を試してみることに意欲的な割合はシンガポールで74%、タイで97%を占めた。シンガポールでは環境面でのメリット、タイでは食肉がどう生産されたか追跡可能であることが主な動機であるという。シンガポールは培養肉の販売を認めた唯一の国でもある。
Aleph Farms社の共同創設者兼最高経営責任者であるDidier Toubia氏は今回のパートナーシップ締結について「食品市場におけるアジアの主要企業2社との新たなパートナーシップは、2社が新しいカテゴリーの肉製品を確立するのに役立つ」と述べた。
Aleph Farms社の培養肉技術
Aleph Farms社が開発した技術は、牛肉の筋肉組織ステーキの伝統的な食感、構造、風味、形状を模倣した細胞成長ステーキの製造において大きな飛躍を遂げたと同社は主張している。培養肉の生産には、広大な土地、水、飼料、その他の資源を使って牛を肉用に飼育したり、抗生物質を使用したりする必要がない。そのためAleph Farms社は持続可能な生態系を構築するために必要な食品業界の戦略的パートナーを培養肉技術を材料にして獲得できている。
3Dプリント技術とは異なり、Aleph Farms社のバイオプリンティングプラットフォームは実際の生細胞を作り、それを培養して成長、分化、相互作用させ、本物のステーキの質感と品質を獲得している。組織内で自然に発生する血管新生と同様の独自のシステムにより、厚い組織全体に栄養素を自然発生させ、調理前および調理中に家畜に見られるのと同様の形状と構造のステーキの培養を実現している。
2050年には世界人口が約100億人に達すると予想されているなか、高まるタンパク質需要に現在の食品システムでは供給が追い付かなくなるだろう。培養肉が人々の持続可能な暮らしを支えるカギになるのかもしれない。
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