大規模な3Dプリント公園、わずか10週間で中国・深圳に誕生!
5,523平方メートルの広大な3Dプリントパークが中国・深圳に完成した。このプロジェクトの技術サポートチーム責任者である清華大学建築学部の徐維国(シュ・ウェイグゥオ)教授によると、完成までに約10週間しかかからなかったそうだ。
広大な3Dプリント公園とは
この公園は、中国南部の深圳世界博覧会コンベンションセンターにあり、ベンチ、擁壁、花壇、彫刻、縁石などが、コンクリート押出機を装備した産業用ロボットアームを使って3Dプリントされている。
世界最大級の橋(全長26.3m、幅3.6m)を3Dプリントしたことで知られる徐教授は、複数のロボットアームを現場に配置し、レールやシザーリフトを使って1つのプロジェクトに取り組むという、やや斬新な積層造形の手法を開発・実行している。
環境に配慮した素材×造形工程
コンクリートの製造過程で利用される素材は、機械で成形された廃砂の粒など、リサイクル素材を多用している。地球上の約半分のコンクリートを使用しているといわれる中国にとって、この配慮は重要だ。
また「インテリジェント・コンストラクションの活用することで、長い目で見て環境に優しい」と徐教授は語る。インテリジェントコンストラクションとは実際の建設プロセスを開始する前に、シミュレーションモデルを使用して可能な限り事前にプロジェクトを「構築」することだ。それにより、建設段階での試行錯誤が減ることによる低コスト化が実現でき、長い目で見れば環境に優しい側面をもっていると考えられている。
これは関係者の目的次第ではあるものの、近年 企業が消費者の需要を意識し環境問題に取り組むことは重要視されている。実際、企業が環境問題に取り組む手段として3Dプリンターの活用している事例は少なくない。
今後、3Dプリントの持続可能性の将来性は消費者市場が最終的に業界の意思決定をどれだけ左右するか、消費者市場が環境的に持続可能なビジネスモデルにどれだけ関心を持つか、にかかっていると言えるだろう。
多くの人に利用される大型3Dプリンター事例
航空宇宙業界や自動車業界で3Dプリンターの実用化は進むが、大型の3Dプリンター製品にお目にかかる機会は少ない。しかし、今回の中国の3Dプリンターパークのように、多くの人の目に触れる事例はいくつか存在している。
例えば、ドバイを拠点とする建築デザインスタジオ Nyxo は、建設3Dプリント技術への新たなアプローチとして、ドバイの自然保護区に建設される3Dプリント製展望塔「Supernatural Concre(a)tion」のコンセプトを発表。
このタワーは、2cm厚のシェルからプリントされた2.5mの部品を、6軸産業用ロボットを使用して工場内で3Dプリント。その部品を建設現場へ運び入れて組み立て、最後に主要な柱構造にコンクリートを打設し一体化させる。コンクリートの消費量を大幅に削減するだけでなく、廃棄材料や運搬・建設時を含む人件費も軽減できる計画だ。
動植物の繁殖地になっている保護エリア「アル・ワトバ 湿地保護区」に立てられる予定で、自然景観への影響を最小限に抑えながら、人間が楽しめるように設計されている。
また、以前 ShareLab NEWS 編集部でもご紹介した国内最大規模の3Dプリンター製ベンチは、大きさもさることながら独特のデザインで話題を呼んだ。製作したのは株式会社大林組で、3Dプリンター用特殊モルタルと超高強度繊維補強コンクリート「スリムクリート」を一体化する構造を開発し、セメント系材料を用いて大型造形に取り組んだ。
トポロジー最適化を用いた内部構造は、複雑なデザインを実現するだけでなく強度や耐久性も兼ね備えた造形技術を同社は提供している。
関連情報
3Dプリンターの繊細で創造性豊かなところに惹かれます。そんな3Dプリンターの可能性や魅力を少しでも多くの人に伝えられるような執筆を心がけています。