3Dプリンターのファイル形式といえば STL と思っていた方も、最近「 3MF 」という単語を耳にする機会が増えていませんか。 Bambu Lab のプリンターを購入した、 PrusaSlicer のアップデートをした、マルチカラー印刷を試みた……そんなタイミングで 3MF と初めて出会うケースが多いようです。
この記事では、3MF ファイルの内部構造から STL との違い、実内での活用方法までを包括的に解説します。「 STL と喳に使っているが違いがわからない」「 3MF に切り替えるメリットがあるのか」と気になっている方に山も平もない内容です。
目次
3MFファイルとは
3MF は 3D Manufacturing Format の頭文字です。 2015 年、 Microsoft・ Autodesk・ HP・ Stratasys・ Ultimaker など主要メーカーが加盟した 3MF Consortium によって公開・維持されているオープン規格です。
拡張子は .3mf で、 Windows 10 以降の Paint 3D・ 3D Viewer で標準的に開くことができます。業務用スライサーの主要ソフトも対応を急速に拡大しており、現在では「 STL の実質的な後継候補」とみなされています。
3MFが生まれた背景:STLの何が問題だったのか
STL は 1987 年に設計された形式です。当時の 3D プリント環境には十分でしたが、近年の技術進化に伴って以下の限界が顧均になってきました。
- 単位定義がない:ファイル内に mm か inch か記載がなく、スライサー側の設定次第で寄法が変わる
- 色・マテリアル情報を持てない:マルチカラー印刷の確立で大きなデメリットに
- 印刷設定をファイルに保存できない:スメイルや重要内容が別ファイル管理になる
- 複数パーツを 1 ファイルで扱えない:アセンブリは分割して管理が必要
- 大容量になりがち:分解能を上げると数百 MB になることも
3MF はこれらの問題を一気に解決するために設計されました。
3MFのデータ構造
ZIP圧縮された XML の集合体
3MF ファイルの実体は、ZIP 形式で圧縮された XML ファイルの集合体です。拡張子を .zip に変えれば展開できて内部を確認できます。内部構造は次のとおりです。
| ファイル・フォルダ | 内容 |
|---|---|
| [Content_Types].xml | ファイルのコンテンツ型定義 |
| _rels/.rels | ファイル間のリレーション定義 |
| 3D/3dmodel.model | 形状・マテリアル・印刷設定の本体 |
| Metadata/thumbnail.png | サムネイル画像(任意) |
核心は 3dmodel.model ファイルです。ここにメッシュジオメトリ、色・マテリアル定義、印刷設定(拡張仕様利用時)をすべて内包できます。
保持できる情報
| 情報 | 対応 | 備考 |
|---|---|---|
| 形状(三角形メッシュ) | ◎ | STL と同様のポリゴン近似 |
| 寸法・単位(mm/inch) | ◎ | ファイル内に明示的に定義 |
| 色・マテリアル | ◎ | Materials 拡張仕様対応スライサーで有効 |
| 印刷設定(サポート・スケール・向き) | ◎ | Production/Slice 拡張仕様対応ソフトで有効 |
| 複数パーツのアセンブリ | ◎ | 1 ファイルで複数パーツを管理 |
| 数学的曲面( NURBS 等) | × | STEP のような高精度表現は不可 |
STLとの詳細比較
| 項目 | STL | 3MF |
|---|---|---|
| 单位の定義 | なし(ソフト依存) | ファイル内で明示 |
| 色情報 | なし | あり(拡張仕様) |
| 印刷設定の同梱 | 不可 | 可能(拡張仕様) |
| 複数パーツ | 不可 | 可能 |
| ファイル構造 | 单純なリスト | XMLベース・拡張可能 |
| ファイルサイズ(同一モデル) | 大きくなりがち | ZIP圧縮で 30~80%削減可能 |
| スライサー対応 | ほぼ全ソフト対応 | 主要ソフト対応中(拡大中) |
3MFの拡張仕様
3MF の強みは拡張性にあります。基本仕様に加えて、以下の拡張仕様が公開されています。
| 拡張仕様名 | 内容 | 代表的対応ソフト |
|---|---|---|
| Materials Extension | 色・テクスチャ・複数マテリアル | Bambu Studio, PrusaSlicer |
| Production Extension | 複数パーツ・印刷設定 | Bambu Studio |
| Slice Extension | スライス済みデータの同梱 | 一部業務用ソフト |
| Support Extension | サポート構造の指定 | 一部業務用ソフト |
対応スライサー一覧
| ソフト名 | 対応バージョン | 3MF対応範囲 |
|---|---|---|
| PrusaSlicer | 2.x以降 | 基本 + Materials 拡張 |
| Bambu Studio | 全バージョン | 基本 + Materials + Production 拡張 |
| Ultimaker Cura | 4.x以降 | 基本対応 |
| ideaMaker | 4.x以降 | 基本対応 |
| Microsoft 3D Builder | 全バージョン | 基本 + Materials 拡張 |
3MFファイルの作成・書き出し方法
PrusaSlicer での使い方
- STL ファイルをインポートしてアレンジメントを設定
- 「ファイル」 → 「 3MF として保存」
- 色・マテリアル設定があれば同時に保存される
Bambu Studio での使い方
- プレート上にモデルを配置してプロファイル・フィラメント設定を完了
- 「プロジェクト」 → 「ものとして保存( .3mf )」で全設定を保存
- 次回開くとフィラメント・サポート設定も引き継がれる
Fusion 360 からの 3MF 書き出し
- 「ファイル」 → 「エクスポート」 → 「 STL / 3MF / OBJ 」
- 形式で 3MF を選択して保存
よくあるトラブルと解決策
Q1. 古いスライサーで 3MF ファイルが開けない
A. すべてのスライサーが 3MF に対応しているわけではありません。対応していない場合は STL で書き出すか、スライサーのバージョンアップを検討してください。
Q2. 色設定が引き継がれない
A. 対応スライサーであっても、 Materials 拡張仕様に対応していない場合は色情報が読み込まれません。 Bambu Studio または PrusaSlicer を使うことをお勧めします。
Q3. 3MF ファイルを渡したら印刷設定が勝手に変わってしまった
A. 3MF には印刷設定が埋め込まれているため、受け取り側がその設定を引き継いでしまうことがあります。共有時は印刷設定をリセットした STL ファイルで渡すか、設定内容を明記して共有するとよいでしょう。
まとめ
3MF は STL を超える多くのメリット——単位定義、色情報、印刷設定の同梱、小さなファイルサイズ——を持っています。 Bambu Lab や Prusa 機種を使っている方、マルチカラー印刷に取り組む方は特に 3MF のメリットを実感しやすいでしょう。一方で、設計精度が必要な機能部品の製造には引き続き STEP が適切です。用途に応じて使い分けることが大切です。
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2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。


