3Dプリントや CAD 設計に従事するなかで、「 STEP ファイルを送ってください」と頑頼されたり、送买先から STEP 形式でデータが送られてきたりする機会は多いものです。しかし「 STEP と STL は何が違うの?」「 STP と STEP は同じの?」と気になりながら使っている方も少なくありません。
この記事では、STEP ファイルの構造・用途・対応ソフト・書き出し方法を包括的に解説します。 CAD 履歴が浅い方から製造業の設計エンジニアまで、それぞれの聞きたい内容を盛り込んでいます。
目次
STEPファイルとは(STPとの関係)
STEP は Standard for the Exchange of Product model data の頭文字で、 ISO 10303 として標準化された CAD データ交換形式です。拡張子は .step または .stp の 2 種類がありますが、データ形式としては完全に同一です。拡張子の違いだけなので、受け取る側の CAD ソフトが対応していればどちらでも問題ありません。
STEP は 1990 年代から開発が進められ、「 SolidWorks で設計したデータを CATIA で開く」「設計事務所から製造委託先に正確な形状データを渡す」といったニーズを満たすために設計された「 CAD 間の共通言語」です。
STEPのデータ構造
NURBS と B-Rep(境界表現)の仕組み
STL が「表面を三角形で近似」するのに対し、 STEP は NURBS(非均一有理スプライン)や B-Rep(境界表現)といった数学的手法で形状を定義します。簡単に言うと、サーフェスを「数式」として保存する形式です。
このおかげで、どんなに拡大・拡小しても精度が落ちることがないのが STEP 最大の強みです。アニメーションソフトのベジェ戳線のような湰らかな曲線も数式で完全表現できます。
AP203・AP214・AP242の違い
STEP には複数のバージョン( AP: Application Protocol )があります。
| バージョン | 保持できる情報 | 用途 |
|---|---|---|
| AP203 | 形状・アセンブリ構造のみ | 形状交換の最も基本的な形式 |
| AP214 | 形状+色・層・属性情報 | 自動車業界で広く利用 |
| AP242 | AP214 の内容+ PMI(寻賃情報) | 最新・最も情報量が多い |
現在の業務現場では AP214 または AP242 が主流です。 CAD ソフトから書き出す際にダイアログでバージョンを選択できる場合は、相手側の環境に合わせて選へるとよいでしょう。
保持できる情報
| 情報 | 対応 | 備考 |
|---|---|---|
| 形状(数学的曲面) | ◎ | どんな拡大でも精度維持 |
| 寸法・単位 | ◎ | ファイル内に定義 |
| アセンブリ構造 | ◎ | 部品間の組み合わせ関係 |
| 色・レイヤー情報 | △ | AP214/242 で対応 |
| PMI(寻賃情報) | △ | AP242 のみ |
| 完全な設計履歴 | × | 元 CAD 形式のみ保持 |
対応 CAD ソフトウェア一覧
| ソフト名 | 無料/有料 | STEP 書き出し | 備考 |
|---|---|---|---|
| SolidWorks | 有料 | ◎ | AP203/AP214 選択可 |
| Fusion 360 | 個人/スタートアップ無料 | ◎ | AP203 名義だが AP214 相当 |
| CATIA | 有料 | ◎ | 自動車業界標準ツール |
| FreeCAD | 無料 | ◎ | オープンソースで STEP 対応も充実 |
| Onshape | 無料(ブラウザベース) | ◎ | クラウド CAD、無料利用可 |
| Solid Edge | 有料 | ◎ | Siemens製 |
STEPファイルの作成・書き出し方法
Fusion 360 からの STEP 書き出し
- ボディまたはコンポーネントを右クリック
- 「エクスポート」 → 「 STEP 」を選択
- 保存先を指定して OK
SolidWorks からの STEP 書き出し
- 「ファイル」 → 「名前を付けて保存」
- ファイル種類に「 STEP (*.step, *.stp)」を選択
- AP バージョン( AP203 / AP214 )を指定して保存
FreeCAD からの STEP 書き出し(無料)
- 「ファイル」 → 「エクスポート」 → 「 STEP 」
- インポート時は「ファイル」 → 「インポート」 → 「 STEP 」のこと
STEPから 3Dプリントへのワークフロー
業務印刷の現場では、以下のフローが標準です。
- CAD ソフトで設計し、STEP 形式でマスターデータとして保存
- STEP をスライサーに読み込む(対応ソフト)か、 STL / 3MF に変換する
- スライスして印刷
PrusaSlicer 2.5 以降、 Bambu Studio などモダンなスライサーは STEP ファイルを直接読み込む機能を携えており、 STL 変換なしでそのままスライスできます。ただし互換性を重視する場合は STL 変換が安全です。
よくあるトラブルと解決策
Q1. 相手の CAD で STEP ファイルが開けない
A. STEP のバージョン( AP203/AP214/AP242 )の不一致、または CAD ソフトのバージョンが古すぎる場合に起きます。相手側の CAD 環境を確認して AP バージョンを合わせてもらうか、 AP203 (最も互換性が高い)で再送信すると解決することが多いです。
Q2. アセンブリがバラバラになる
A. STEP のアセンブリ情報はソフト間で完全互換なわけではなく、読み込み時に漩れルことがあります。アセンブリ全体を一つのボディとして書き出す「単一ソリッド」オプションを選ぶと回避できる場合があります。
Q3. 読み込み時に色情報が消える
A. STEP の色情報は AP214/AP242 のみでサポートされ、かつ相手側の CAD が対応している必要があります。色情報を伴って共有する場合は事前に相手側の対応版を確認することをお勧めします。
まとめ
STEP は「形状を数式として保存する」という発想により、3D プリントのための STL/3MF とは導きの違う用途に最適化されています。設計から製造までデータを一気通貫で管理する場合は STEP をマスターデータとして保存し、これを起点に STL や 3MF へ変換するワークフローが業務現場でのベストプラクティスです。
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2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。


