地震が起こると3Dプリンターは壊れる?災害に備えてしておくべきことは?

2025年12月11日

令和7年12月8日に発生した青森県東方沖地震により被害を受けた皆さまに、心よりお見舞い申し上げる。夜半の強い揺れに驚いた方も多かったはずであり、家具の転倒や落下物で片付けに追われたという声も聞く。一日も早く日常が取り戻されることをお祈り申し上げる。

3Dプリンターは少しゆすっただけでは壊れるものではないが、大きな地震や引っ越しを際に印刷品質がかわったと感じる人もいるかもしれない。エラーが出れば問題に気づくが、エラーが表示されないまま性能が低下しているケースも存在するだろう。

「揺れ」で狂いが起きやすい箇所

3Dプリンターが揺れただけで致命的に壊れるケースは多くないはずだ。エンクロージャー付きのMEX方式の卓上型では20kg前後の重量があるため、軽度の揺れでは大きく移動しにくいだろう。冷蔵庫サイズ以上の業務用大型機となれば、なおさらである。しかし、揺れによって以下のような“微妙なズレ”が発生する可能性がある。

  • ベッドレベリングの狂い
  • ベルトテンションの変化
  • 押出機・ノズルユニットの緩み
  • 配線の半抜け
  • Z軸のわずかな抵抗
  • フレームの“ほんの少し”のねじれ

これらは外観では分からず、動作も一見正常に見えるため、使用者が気づきにくい。引越しの際などで雑に扱ったせいで「見た目は無傷なのに造形物が傾く」「ブリッジ性能だけ極端に落ちる」などの事象が起こった方もいるかもしれないが、揺れだけではなく、倒れた・ぶつかった・落下物が当たったなどの衝撃が加わった場合は、点検してから造形を行うほうがよいだろう。

MEX方式(フィラメント材料)で特に起きやすい異常

  • フレームのゆがみ
  • Z軸の直角度の乱れ
  • ガイドレールの曲がり
  • ベルトの偏り・歯飛び
  • プーリーの固定緩み
  • 押出機ユニットのズレ

これらは造形品質に直結し、寸法誤差や層ズレとして現れるだろう。光造形の場合は以下のような箇所に影響があるかもしれない。

  • バット(樹脂槽)の変形
  • FEPフィルムの伸び・傷・破れ
  • Z軸ガイドのわずかな曲がり
  • LCDや光源ユニットの位置ズレ
  • レジンタンクの密閉性低下による漏れ

いずれの方式でも、センサーが数字で管理している箇所ばかりではないので衝撃による変形はエラーが出ないことが多いのではないか。上級者はスライサーの画面でさまざまな情報を得ることができるだろうが(たとえばKripperの共振周波数)、そうでない人でも簡単に影響を把握する方法がある。試験造形だ。

試験造形をしてみよう — ズレを可視化する最も確実な方法

装置自体のエラーはなく、動作も正常に見えても、こうしたゆがみが本体や部品に生じることで性能が低下することはありうる。この“気づきにくい異常”を発見するには、試験造形が最も確実かもしれない。小さなものから初めて造形物にゆがみや表面での傷などがないか目視やノギスによる確認などを行ってみよう。装置にプリセットされたモデルでも構わない。次に3つ程、試験造形に適した3Dモデルをご紹介するが、xyz各方向での造形に狂いがないかを簡単に確認できれば事足りる。

本当であれば買った当初または正常動作している際に試験造形しておき、計測している様子を動画でとっておき、点検時に見ながら評価するのが望ましい。(時間が経つと樹脂の場合、吸湿や自重で変形する場合もある為)

XYZ Calibration Cube

寸法精度・直交性・軸ズレの確認に最適な20mmキューブ。20〜30分で造形可能。
https://www.thingiverse.com/thing:1278865

All In One 3D Printer Test

オーバーハング(最大80度)、ブリッジ、寸法精度、穴径などを一度で評価できる総合モデル。
https://www.thingiverse.com/thing:2656594

Lithophane Calibration

光造形や白系フィラメントの透過性確認に役立つ厚み比較モデル。
https://www.thingiverse.com/thing:4714361

試験造形によって、

  • 層の乱れ
  • 寸法誤差
  • 振動による波打ち
  • ブリッジ不良
  • 冷却異常などが可視化される。自分が気にならないのであれば問題ない。気になる点が見つかったら販売店やメーカーに相談しよう。

不安が残るなら、メーカー点検や買い替えも選択肢

気になる点を相談すると、装置メーカーから校正手順のサポ―トがある場合がある。その場合はそちらを優先して確認していこう。精密機械なので

  • 異音がする
  • ホーム位置がずれる
  • レベリングが毎回大きく狂う
  • 試験造形で明らかな精度低下が見られる

といった場合は、そのままの状態では、材料と時間の無駄になるので無理に使い続けないほうがよい。

物理的損傷があった場合は修理が必要だ。腕に自信がある方はご自身で試されるだろうが、車は運転できても改造はしないというタイプの方や業務用機で保守契約が結ばれている場合はプロに診断からお任せしたほうが安心だ。現状でもここまでは大丈夫、スライサーをこう設定すれば大丈夫などの上手い逃げ方を教えてもらえる場合もあるかもしれない。

今回の青森県東方沖地震では、サンステラによる特別修理・特別割引支援が実施されており、大変驚いた。期間限定とは言え、ホビーユースの場合でこうした販売店の支援キャンペーンはかなりめずらしい印象をもった。

あなたの意見や経験は、誰かの役に立つ

この記事で紹介した内容は、家庭用装置を引っ越しや持ち運びの際に移設させ調子が悪くなったなどの私的な経験から書いているので足らずも多いかもしれない。またソフトウェア上でのもっと手軽な診断などもあるのかもしれない。機種によっては全然当てはまらない場合もあるだろう。

だからこそあなたが感じた“ちょっと気になる”、”私はこうやった”は災害大国である日本においてきっと誰かの助けになるはずだ。こういう観点に気を付けたほうがいい、という皆様のアドバイスや経験談をうかがえると幸いだ。

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