
3Dプリンターは通販や技術商社、販売店さんから購入することが多いと思います。ではそうした顧客と向き合っている販売店さんがどんなことを思っているのか、聞いてみようというのが今回の公開取材です。テーマは「試作開発の省人化のための3Dプリンター選びの正解を教えてください!」です。(後で気が付いたのですが「樹脂」と明言しておくべきでした)
なぜ省人化なのかというと、地味だけど皆さん困っているように感じたためです。法人に属して仕事をしていると、残業してはいけない空気がここ10年で一気に進んだ気がします。働き方や仕事との向き合い方が変わってくる中で、AIやロボット、3Dプリンターという便利なツールを使って業務の課題を解決していくアプローチを経営から求められると思います。
新しいツールは選ぶのも運用を立ち上げるのも、運用を定着させるのも大変です。ついつい導入担当者が面倒を見続けることになってしまいます。
試作開発は3Dプリンターで内製化するという旗印でコストを削減しやすい分野です。年間1,000万円かかっている試作の半分を内製化します。コスト削減効果があります。と伝えれば稟議下りやすいですよね。ですがその分、社内のいろいろな依頼が舞い込んできそうな分野でもあります。
その辺の解決アプローチを伺いたかった、というのがスタート地点です。
1,000社以上とお付き合いのある3Dプリント事業を運営するイグアスさん
ご登場いただいたのは株式会社イグアスの吉澤さんと町田さん。イグアスさんというとxyzプリンティングの代理店という印象を持っている方もいらっしゃいますが、現在は3DシステムズとPhrozenを担いでいらっしゃいます。2009年から3Dシステムズの取り扱いを開始し、2020年、コロナの際に3Dプリントマスクを世間に広めた際に取材させていただいたのがきっかけです。
1000社以上のユーザー企業とのお付き合いがあるご知見から、2025年現在の3Dプリンター選びに関して、遠慮なく伺ってみました。
シェアラボ編集部:ここ数年、BanbuLabが売上台数を大きく伸ばしています。かなり使いやすい装置に仕上がっていますし、材料の管理も手軽です。Bamnbuを購入しておけばよいですか?
吉澤さん:いきなりぶっこんできますね。BambuLabはいい装置だと思います。取り回しがよいというか、手間がかからないですよね。まったく初めて3Dプリンターを導入するという場合は、価格も手ごろですし、選択肢としてよい装置だとおもいますよ。
シェアラボ編集部:試作に特化して考えた際もBambu一択ですか?
吉澤さん:試作開発で扱うものによると思います。たとえば表面が滑らかに仕上げたいのであれば、フィラメント材料を使ったMEX方式であるBambuよりも光硬化性樹脂を使った光造形方式の装置のほうが仕上りが良いかもしれません。スプレーやシャワーヘッドのような細かい穴を持つ部品は特にそうです。また光造形のほうが複数部品を同時に造形しても影響がすくないのも利点です。
シェアラボ編集部:いろいろな方式がありますもんね
吉澤さん:どれが良い悪いではなく、造形方式や装置によって価格も違いますし、得意不得意があるんですね。MEX方式の装置は数十万円までの価格レンジである程度のニーズはカバーできます。光造形の装置もそうですね。私たちが扱っているPhrozenもフィラメント材料の装置も光硬化性樹脂の液体レジンを扱う材料も両方取り扱っていますが、価格が手ごろなので人気を博しています。
シェアラボ編集部:じゃあ光造形方式の装置が試作部門にはおすすめなんですか?
吉澤さん:おすすめです。ですが注意点もあって、光造形方式は手間もかかります。その最たるものがサポート材の除去と研磨です。フィラメント材料をつかうMEX方式でも同じなんですが、MEX方式も光造形方式もサポート材を外したあとにポツポツとした跡がのこるのでそれを研磨してしあげなくてはいけません。
シェアラボ編集部:水溶性サポートなんかもありますが、光造形方式ではつかえませんもんね。
吉澤さん:光造形は同じ液体樹脂のプールに光をあてて硬化させるので、サポート材も造形したい部品も同じ材料になります。除去は手作業でおこないますし、研磨も手作業になると思います。
シェアラボ編集部:たくさん試作して外注費用はカットできると思うんですが、その分ずっとサポート外して、研磨している、、って大変ですね。人がたくさんいれば別でしょうけれど。
吉澤さん:ものづくり白書によると、日本のほぼ全産業が深刻な人手不足に直面しています。製造・物流現場では工場派遣を時給1,500円以上で受け入れる実態もあり、バイトやパートを雇うことさえ困難な状況です。私は今年50歳になりますが、私の世代以降、人材はどんどん減っています。昔みたいにバイトをやとえばいい、パートさんにやってもらうというのが難しくなっていると思うんです。実際導入先のクライアントさんも省人化というキーワードは刺さりやすいです。
シェアラボ編集部:昔5人で回していた部署を3人で回すとかありそうですよね。その合理化のために工作機械や3Dプリンターを導入していくというのが省人化の流れですよね。
吉澤さん:いきなり大きな設備投資は難しいという方もいらっしゃいますので、そういう方には光造形の装置をお勧めしています。数十万円の装置を導入してちょっとやってみてください、と。で実績がでたら光造形の装置を増台するのか、インクジェット方式のもっと手間がからない装置を導入するのか、というご提案をお伝えしています。
シェアラボ編集部:インクジェット方式ですか?光造形方式とどういう違いがあるんですか?

吉田さん:価格が1,000万円台になるのですが、大きなメリットが2つあります。装置自体が高機能で高精度の造形を自動化している点とサポート除去を自動化できることです。
シェアラボ編集部:増益精度が高いとか再現性があるというのは装置価格がたかいからそうなんでしょうけれど、サポート除去が自動化というのはどういうことですか?
吉田さん:熱すると溶けるワックスをサポート材に利用しますので、専用のオーブンで1時間から2時間温めるとサポートが簡単に除去できるんです。そうするとサポートの除去痕を研磨する必要もありません。
シェアラボ編集部:面粗度は低い、つまりつるつるすべすべの仕上がりで、サポートも外せるので、後処理にかかる工数を圧縮できるということですか?
町田さん:サラダ油でワックスを除去したりするので完全に後処理を自動化できるわけではありませんが、光造形にかかる後処理工数が1回3時間だとすると、インクジェット方式の後処理工数は40分です。造形したり、オーブンでサポート除去している間、別の仕事ができるんです。
シェアラボ編集部:試作を造形するだけが仕事じゃないですもんね。3Dプリンターを導入して、そのお守りで時間が増えたら残業しないと追いつかなくなると考えると、自分の時間を確保しておくことは初めにかんがえておいたほうが安全ですね。
町田さん:この部分は、装置を検討する際に見逃しがちで、導入費用が安い選択肢しかみえない方もいらっしゃるのも事実なのですが、たとえば5年間おなじことをやっていくと考えると、人件費も相当になります。3時間毎日サポ―ト外して、研磨してという工程を行っていくと、時給2,000円換算でも年間200万円を超えてしまいます。
シェアラボ編集部:管理会計で工数を管理している大きな会社さんだと、時間単価はもっと高くなるでしょうから、結構なコスト負担になるんですね。
町田さん:結構しっかり使い込まれているユーザーさんにヒアリングした数字なのでそんなに的を外した想定ではないと思っています。このあたりは試作として何を作るのかによってきたり、どういう頻度でつくるのかによって変わってきますので、参考にしてみてください。
シェアラボ編集部:まとめると、
①樹脂部品を扱う試作部門には
1.フィラメント材料を使うMEX方式
2.光硬化性樹脂を使う光造形方式
3.インクジェット方式
の3つの選択肢がある。
②3Dプリンターは便利だけれど、造形セッティング出しやサポート除去や研磨などの社内が負担しなければいけない作業を見込んでおく必要がある。
③フィラメント材料を使うMEX方式の3Dプリンターは10万前後のものでも性能が非常に良くなっているが、部品にもとめる表面性などを考えて試作開発の現場では光造形方式のニーズも高い。ただしいずれも属人的なノウハウが必要。
④インクジェット方式は寸法精度も高く、サポート除去も自動化できるので属人的なノウハウは不要で省人化できる。ただ価格は1,000万円相当。
⑤自社でどの程度の外注費削減やリードタイム短縮を目指すのかによって予算や体制を決める必要がある。その際に、削減目標だけではなく、実際にかかる時間や人件費を想定しておくことが大事。残業しても問題ない、余剰人員がいるのでむしろ助かるという現場でなければ、残業を増やすとマネージメント層との軋轢にもつながる。
という感じですね。
吉澤さん:そういうことです。ですので、作りたい部品や業務内容によって自社にとって最適な選択を行う必要があります。私たち販売店は導入の目的に即した機種選びをお手伝いしています。展示会やお問い合わせフォームからのご相談でうまく活用していただければと思います。

