キャステム、世界最小クラスのバラを金属3Dプリンタで造形!精密技術による芸術表現への挑戦

2025年5月28日
髪の毛よりも細いバラの造形。

精密部品メーカーである株式会社キャステム(広島県福山市、以下、キャステム)は、2025年に福山市で開催される「第20回世界バラ会議福山大会」を盛り上げるべく、独自の超微細3Dプリント技術を活用し、世界最小クラスとなる“髪の毛よりも細い”バラの造形に成功した。この造形は、京都先端科学大学との共同研究によって実現されたものである。(上部画像は髪の毛よりも細いバラの造形。出典:キャステム)

超微細バラを地域イベントで初披露

キャステムは、地域ブランド推進活動の一環として「ばらグッズふくやまフレンズ」の名の下、これまでにもバラをモチーフとした各種商品開発に取り組んできた。今回制作されたミニミニミニバラは、福山市最大の地域イベントである「福山ばら祭2025」および、同時開催される世界バラ会議の関連イベント「Rose Expo FUKUYAMA 2025」にあわせて展示された。
会場は広島県福山市に位置する緑町公園プロムナード内《ばらグッズミュージアム》であり、キャステムは同会場に設けられる自社ブースにおいて、極小サイズのバラ造形を来場者に披露した。

今回制作されたミニミニミニバラは、実物のバラを3Dスキャンによってデジタルデータ化し、その情報をもとに造形されたものである。完成品の大きさは、高さおよび幅ともに約0.5ミリメートルに過ぎず、まさに極小の領域に属する。素材には樹脂を用い、その後、表面に白金(プラチナ)をコーティングする工程を経て、極薄の花びら一枚一枚が繊細かつ立体的に再現されている。技術的な精度はもとより、美的表現においても高い完成度を実現した。

花びらや葉も精巧に再現されている。出典:キャステム
花びらや葉も精巧に再現されている。出典:キャステム

比較対象として、世界最小のバラとされる「リトルウッズ」の開花時における花の直径は約10ミリメートルであり、今回のミニミニミニバラはそのおよそ20分の1以下という圧倒的な微小サイズとなっている。さらに身近な物との比較では、一般的な米粒(約5ミリメートル)の10分の1程度の大きさである。パソコンのキーボードの上に置いた場合、かろうじて視認できるものの、多くの人にとっては埃や塵と見間違うほどの極めて小さな造形物である。

米が巨大に見えるほどのバラ造形。
米が巨大に見えるほどのバラ造形。出典:キャステム
パソコンのキーボードの上に置くと、なんとなく目視はできるものの、埃と見間違うような大きさ。出典:キャステム
パソコンのキーボードの上に置くと、なんとなく目視はできるものの、埃と見間違うような大きさ。出典:キャステム

本商品開発を可能としたのは、株式会社キャステムと京都先端科学大学が共同で研究を進めている、世界最高精度を誇る3D光造形装置「Nanoscribeシステム」の活用による超微細3Dプリント技術である。このシステムは、積層2光子重合という3D造形方式を採用しており、サブミクロン単位の分解能を持つ専用のIP樹脂を用いることで、従来の製法では実現困難とされてきた極めて複雑かつ高精度な構造体の製造を可能にしている。

当該技術は、メカトロニクス、バイオテクノロジー、マイクロエレクトロニクス、光学、医療、材料工学といった幅広い研究および産業分野において活用されており、ナノ・マイクロスケール領域における次世代製造技術として注目されている。キャステムは2022年にも、このNanoscribeシステムを用いて、地元・福山市の象徴である福山城の築城400年を記念した「1/170,000スケール福山城」(全長0.2ミリメートル)を製作し、福山市へ寄贈した実績を有している。

髪の毛の横の福山城。出典:キャステム
髪の毛の横の福山城。出典:キャステム
あまりの小ささに翻弄される。出典:キャステム
あまりの小ささに翻弄される。出典:キャステム

キャステムと「ばらのまち福山」

福山市は、1945年の福山空襲により市街地の約8割を焼失する甚大な被害を受けた。戦後、荒廃した町に潤いと安らぎを取り戻すべく、市民の手によって公園にバラが植えられたことが、「ばらのまち福山」の原点である。その後も市民の努力によりバラの植栽が続けられ、2016年には「100万本のばらのまち」の目標を達成した。毎年5月に開催される「福山ばら祭」の時期には、市内の公園、店舗、事業所、道端など、あらゆる場所でバラが咲き誇り、町全体がバラ色に染まる風景が恒例となっている。

このような「ばらのまち」に本社を構える株式会社キャステムは、地域への思いを込め、長年にわたってバラに関する商品開発に取り組んできた。これまでには、ロストワックス精密鋳造技術を用いて本物のバラを模した「世界に一つだけの薔薇」や、バラの茎をモチーフにした「薔薇けない箸置き」など、ユニークかつ高品質な製品を発表してきた。これらの商品は、福山のお土産としての魅力や独自性、楽しさを基準に選定される「ばらグッズ」にも認定されており、キャステムは「ばらグッズふくやまフレンズ」の一員として、バラ文化の振興と福山の魅力発信に貢献している。

2017年度の認定ばらグッズで、審査員特別賞「世界がおどろくde賞」を受賞した「世界に一つだけの薔薇」
2017年度の認定ばらグッズで、審査員特別賞「世界がおどろくde賞」を受賞した「世界に一つだけの薔薇」出典:キャステム
「薔薇けない箸置き」
「薔薇けない箸置き」出典:キャステム

また、キャステムでは毎年、新入社員研修の一環としてバラ関連の新商品を開発し、福山ばら祭の会場にて販売する活動を行っている。若手社員がフレッシュな感性と創意工夫をもって生み出す商品は、毎年好評を博している。2025年5月には、「第20回世界バラ会議福山大会」の開催にあわせ、キャステムが誇る超微細3Dプリント技術を活用した極小バラ「The smallest rose」が、《ばらグッズミュージアム》内の同社ブースにて展示された。この作品は、世界中から訪れたバラの研究者、生産者、愛好家、芸術家、そして多くの市民に披露され、キャステムの高精度かつ芸術性を兼ね備えた技術力を体感できる貴重な機会となった。

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