3Dプリンターインテリアブランド「孚美(FūūBi)」、トヨタ車体の会議室壁面装飾を3Dプリントで製作

2025年12月16日
出典:前田技研
出典:前田技研

3Dプリンターを活用したインテリアブランド「孚美(FūūBi)」を展開する株式会社前田技研(愛知県岡崎市、以下、前田技研)は、トヨタ車体株式会社 本社・富士松工場の事務本館会議室において、3Dプリンターによる壁面装飾の製作および施工を行った。本件では、トヨタ車体株式会社(愛知県刈谷市、以下、トヨタ車体)が開発した木質複合材料「TABWD®」を用い、約250点に及ぶ壁面装飾を3Dプリンターで製作。完成した装飾は、同社事務本館内の会議室に設置され、素材の質感を活かした立体的な空間演出に用いられている。

3Dプリンターによる短納期対応と造形検討

今回の製作では、初回打ち合わせから来社予定までの約1週間という短期間で、複数パターンのトライモデルを製作。意匠や形状の検討を迅速に進めることができた点は、3Dプリンター活用の特長が明確に表れた事例である。

前田技研は、孚美(FūūBi)のプロダクト開発においてTABWD®を継続的に使用しており、材料特性を踏まえた造形条件や仕上がりの傾向を把握している。そのため、本プロジェクトにおいても基本的な造形条件は確立された状態で進行し、形状による反りなどの微調整に注力することで、造形品質の向上に時間を割くことができた。

金型製法ではなく3Dプリントを採用した理由

本装飾の製作にあたっては、一般的な金型を用いた製法も検討された。しかし、3Dプリンターを用いることで、形状や表情において既存製法では実現しにくいデザイン性を追求できる点が評価され、最終的に3Dプリントによる製作が採用された。

素材の質感を活かした造形や、意匠ごとの調整が可能である点は、内装・空間デザイン分野における3Dプリンター活用の実用性を示している。

TABWD®とは

TABWD®は、トヨタ車体が開発した、スギの間伐材をプラスチックに配合した木質複合材料である。以下の3つの観点から、環境配慮型材料として位置付けられている。

  • カーボンニュートラル
    スギの間伐材を活用することでプラスチック使用量を削減し、CO₂排出削減に寄与する。
  • サーキュラーエコノミー
    リサイクル可能な材料であり、資源循環型のものづくりに対応する。
  • 森林資源への新たな価値付与
    間伐材の活用により森林の循環を促し、健全なスギ林の維持に貢献する。

3Dプリンターインテリアブランド「孚美(FūūBi)」

孚美(FūūBi)は、前田技研が展開する3Dプリンターインテリアブランドである。「自然由来の材料」「廃棄材料の活用」「日本の伝統工芸技術」をコンセプトに掲げ、素材と製法の両面からインテリア表現を追求している。TABWD®を用いた「テーブル」「スツール」「植木鉢」などのプロダクトをはじめ、大型から小型まで多様なインテリアを3Dプリンターで製作し、カタログ形式で販売している。また、カタログ品の販売に加え、依頼による造形にも対応しており、インテリアに限らず、オブジェやモビリティ関連部品などの製作実績も持つ。

TABWD®を使用した孚美プロダクト

テーブル Root(出典:前田技研)
テーブル Root(出典:前田技研)
スツール MOTH(出典:前田技研)
スツール MOTH(出典:前田技研)
スツール MUTSU(出典:前田技研)
スツール MUTSU(出典:前田技研)
植木鉢 POT-1~3(出典:前田技研)
植木鉢 POT-1~3(出典:前田技研)
植木鉢 POT-7(出典:前田技研)
植木鉢 POT-7(出典:前田技研)

シェアラボ編集部コメント

本事例は、3Dプリンターが内装・空間デザイン分野において「試作」や「一点もの」にとどまらず、実装レベルで活用されていることを示している。環境配慮型材料であるTABWD®と組み合わせることで、素材価値と製造プロセスの両面から、企業空間における3Dプリント活用の現実的な選択肢を提示する事例といえる。

用語解説

■ TABWD®(タブウッド)
トヨタ車体株式会社が開発した、スギの間伐材をプラスチックに配合した木質複合材料。木材由来の風合いと樹脂の成形性を併せ持ち、3Dプリンターによる造形にも対応する。間伐材の活用によるCO₂削減、リサイクル性を備えた素材として、内装材やインテリア用途への展開が進められている。
■ 木質複合材料
木粉や木繊維などの木質成分を、プラスチックなどの樹脂材料と組み合わせた複合材料の総称。木材の質感や環境負荷低減の特長と、樹脂の加工性・耐久性を両立できる点が特長である。3Dプリンター用材料としても注目され、意匠性を求められる内装・プロダクト分野での利用が広がっている。
■ 内装向け3Dプリント
建築やオフィス、商業施設などの内装空間において、装飾部材や什器、パネル類を3Dプリンターで製作する手法。短納期での試作や形状変更が可能で、多品種少量生産や意匠性の高いデザインに適している。近年は素材開発の進展により、実装用途での採用事例も増加している。

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