SDGsに貢献する環境に優しい3Dプリンター積層造形プロセス-Forust
金属3Dプリンタメーカーの米Desktop Metalは、2021年5月6日、木材の3Dプリンティングツール「Forust(フォラスト)」を買収し、自社の新たな製造プロセスとして、リサイクル可能な製造を実現する新しい積層造形プロセス「Forust™」を製品ラインに加えたことを発表した。
(写真はForustの作品:Forust公式より引用)
今回は「Forust」の3Dプリンターでつくる環境に優しい取り組みや作品例についてご紹介する。
廃棄するおがくずを使用し、環境に優しくも木製品として高い完成度を実現
Forustは、木製品を製造する過程で発生するおがくず(木くず)を再利用し、ラグジュアリーな木製品をカスタム製造する世界で初めてのアディティブ・マニュファクチュアリング(積層技術)だ。
製造されたものはパーティクルボード(木材のチップを加熱圧縮した板)やラミネート材とは異なり、デジタル加工でパーツ全体に「木目」をあしらうことができ、研磨や仕げを施すことも可能で一般的な木製品と見分けがつかないほどの仕上がりだ。
おがくずによる環境被害や、森林破壊の削減を実現
毎年150億本の木が伐採され、紙の生産、家の建設、家具の製造が行われている。このことから、年間数百万トンの木材廃棄物が発生している。この廃棄物の一部は回収され、下流の市場に販売されエネルギー用のパーティクルボードまたは木質ペレットが製造されている。
残りのおがくずは燃やされるか(大気汚染の一因となる)、または埋め立て地に送られる。生分解性ですが、おがくずは埋め立てられると大量に環境に害を及ぼす可能性がある。
おがくずが分解すると、高濃度のリグニンと脂肪酸が放出され、水供給を汚染し、野生生物や微生物を中毒させる可能性がある。
Forustの環境への影響は2つ。1つは3Dプリント用に処理することで埋め立てや焼却に送られるおがくずの量を大幅削減できる。2つ目は木材廃棄物から持続可能な製品を生産することで森林破壊を減少させる。
(写真はすべてForust公式サイトより引用)
多様なデザインに対応した製品事例
Forustプロセスを使用して印刷された部品は、消費財から高級インテリアまで、さまざまな用途に使用できる。木目はシタン、アッシュ、ベイスギ、コクタン、マホガニーなど多くの種類を再現でき、化粧パネルをはじめ、オーダーメイドのインレイやパネル、車やヨット、住宅などの内装材、家具や生活雑貨まで、自由なデザインで製作が可能である。
「Forustの木製部品の用途はまさに無限です」
そう語るのは、Desktop MetalのCEO Ric Fulop(リック・フロップ)氏だ。
「現在ポリマーとプラスチックが使われている多くの応用分野を、持続可能な木製部品でコスト効果高く置き換えることができます。インテリアや、家電製品、航空機、船舶、家庭用品、さらにはフローリングや屋根瓦にまで、豪華な高級部品を使うことができます」と、プレスリリースにてその可能性の高さについて述べている。
また、fuse projectの創設者であるスイスのインダストリアルデザイナー Yves Béhar(イヴ・べアール)氏は、このForustプロセスを使って製造した初めてのコレクション「Vine」をデザインした。ForustのWebストアで購入可能である。
このコレクションは花器、ボウル、バスケット、トレイなどで構成されており、押出成形による繰り返しのパターンとカーブを描く有機的な形状が暖かみや親しみを感じさせるものとなっている。
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3Dプリンターの繊細で創造性豊かなところに惹かれます。そんな3Dプリンターの可能性や魅力を少しでも多くの人に伝えられるような執筆を心がけています。