LEAP 71(アラブ首長国連邦・ドバイ)は、自社のロケットエンジンプログラムを次の段階へと進め、計算工学手法を拡張してメガニュートン級推進システムの開発に着手したと発表した。小型エンジンでの成功裏な検証を基に、同社は現在、2つのリファレンス設計を推進している。ひとつは推力200キロニュートンのエアロスパイクエンジン「Noyron XRA-2E5」、もうひとつは推力2000キロニュートンのベルノズルエンジン「Noyron XRB-2E6」である。(上部画像はLEAP 71のNewsページより。出典:LEAP 71)
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計算設計と大型3Dプリンティングが実現する次世代ロケットエンジン開発
これら新たなリファレンスロケットエンジンは、必要なターボ機械を含む完全な推進システムとして構想されている。この取り組みの中核をなすのが「Noyron」であり、LEAP 71が開発した大規模計算設計モデルである。Noyronは物理法則に基づくロジックを内包し、人間の介入なしに製造可能なハードウェアを自律的に生成する。
LEAP 71の手法は、計算設計と最新の産業用3Dプリンティング技術を融合させたものである。近年、造形サイズが全方向で1.5メートルを超える超大型金属積層造形システムの実用化が進み、複雑かつ高推力のエンジン部品をフルスケールで直接製造することが可能となった。この技術革新により、部品点数は劇的に削減され、場合によっては単一部品で完結する設計も可能となる。これにより複雑な多部品組立が不要となり、精度要求も緩和され、後加工の必要性も最小限に抑えられる。

同社は以前、5kN級のエアロスパイクエンジンを単一の銅製部品として製造し、この設計手法の原理を実証している。今回の新たなリファレンス設計は、この手法をさらに大きく前進させるものである。たとえば、XRB-2E6における直径600ミリメートルのインジェクターヘッドや、全高約1.6メートルを必要とする海面用ノズルなどは、いまや実現可能となったスケールと複雑性の好例である。
段階的開発と実機試験へ。フライト対応推進システム実現へのロードマップ
このプログラムは、段階的かつ複数年にわたるアプローチを採用している。初期段階では、ガスジェネレータサイクルのような比較的単純な構成を対象とした試験を実施し、より高度なシステムへと発展させるための堅固な基盤を構築する。
目標は長期的ではあるが、開発ロードマップは明確に定められている。LEAP 71は、XRA-2E5エアロスパイクエンジンの初回試験キャンペーンを18か月以内に実施することを目指しており、フルフロー段階燃焼サイクルに基づくXRB-2E6ベルノズルエンジンについては、2029年の実用化を計画している。
LEAP 71は現在、AMパートナーと積極的に連携し、フルスケールハードウェアの製造プロセスの適格化に取り組んでいる。また、顧客と協力し、リファレンス設計のDNAを軌道投入用の飛行対応推進システムへと転用する作業も並行して進めている。
ドバイ発、LEAP 71の革新と実績
LEAP 71は、アラブ首長国連邦ドバイに本社を構えるグローバルなテクノロジー企業であり、「計算設計(Computational Engineering)」という新たな分野の先駆者である。2024年には、Noyronによって完全自動設計された複数の液体燃料ロケットエンジンを3Dプリンターで製造し、実際に燃焼試験を成功させ、その手法の革新性を実証した。
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