新手法で金属3Dプリンタ用材料開発を加速!Al-Fe系合金で軽量・高強度・耐熱を両立、輸送機器分野での実装視野に

2026年1月16日
出典:名古屋大学

名古屋大学大学院工学研究科の研究グループは、金属3Dプリンタ特有の造形プロセスを前提とした新たな材料設計の考え方を提案し、アルミニウム-鉄(Al-Fe)系合金において高強度・高耐熱性を両立する造形材料の開発に成功した。金属3Dプリンタ向け材料開発を体系的に進めるための指針を示した点が特徴であり、輸送機器分野での実用化も視野に入る成果である。

金属3Dプリンタ特有の「非平衡組織」に着目

今回の研究では、レーザ粉末床溶融結合法(L-PBF)が生み出す急速な溶融・凝固プロセスに注目した。L-PBFでは、従来の鋳造や鍛造とは異なり、非平衡状態でミクロ・ナノスケールの微細組織が形成される。この特性は造形自由度の高さと引き換えに、材料設計を難しくしてきた要因でもある。

研究グループは、この非平衡な組織形成を前提に、どの元素を選択・組み合わせるべきかという「元素選択の考え方」を新たに整理した。プロセス条件に材料を合わせるのではなく、プロセスを活かす材料設計を行う点が本研究の軸となっている。

Al-Fe系合金で高強度・耐熱性を確認

提案した設計指針に基づき、アルミニウムと鉄を基本組成とするAl-Fe系合金を開発した。この合金は金属3Dプリンタでの造形が可能であるだけでなく、高強度および高耐熱性を示すことが確認されている。

さらに、第3元素、第4元素の添加によって、機械特性や耐熱特性を制御できることも明らかになった。用途に応じた性能調整が可能であり、設計自由度の高い3Dプリンタ造形と親和性の高い材料系といえる。

自動車部品など軽量・耐熱用途での展開を想定

本研究で開発されたAl-Fe系合金は、自動車エンジン用圧縮機の回転体部品など、軽量性と耐熱性の両立が求められる部品への応用が想定されている。アルミニウム系材料でありながら、従来材料では対応が難しかった性能領域を狙える点は、輸送機器分野における金属3Dプリンタ活用の幅を広げる可能性がある。

他金属への展開も視野、材料開発のスピード向上へ

今回示された元素選択の考え方は、アルミニウム系合金に限らず、他の金属材料にも適用可能とされている。金属3Dプリンタ向け材料は、試行錯誤に依存した開発が多かったが、本成果は設計論の側から整理を試みた点に意義がある。

金属3Dプリンタ用材料の開発を体系化し、開発期間を短縮するアプローチとして、今後の研究や産業応用への波及が期待される。

シェアラボ編集部コメント

金属3Dプリンターの材料開発は、装置性能や造形条件の議論に比べると、設計論が十分に整理されてこなかった分野である。本研究は、L-PBF特有の急冷・非平衡プロセスを前提に「どの元素を選ぶべきか」という考え方を示した点に意義がある。Al-Fe系という比較的身近な材料系で、高強度・耐熱といった実用特性を示したことも評価できる。試行錯誤に頼りがちだった金属3Dプリンタ用材料開発を、より再現性のあるものへ近づける研究といえる。

用語解説

■ 金属3Dプリンタ
三次元データをもとに金属材料を積層して造形する装置。国際規格ISO/ASTM 52900では複数の方式に分類されており、金属材料に対応する方式は主に粉末床溶融結合方式や指向性エネルギー堆積方式などがある。
■ レーザ粉末床溶融結合法(L-PBF)
金属粉末を薄く敷き詰めた粉末床にレーザを照射し、溶融・凝固を繰り返すことで立体物を造形する金属3Dプリント方式。急速な加熱・冷却が特徴で、従来工法とは異なる材料組織が形成される。
■ ミクロ・ナノ組織
材料内部の微細な結晶構造やその分布を指す。ミクロ組織は主に顕微鏡レベルで観察される結晶や欠陥構造、ナノ組織はナノメートル単位のさらに微細な構造を指し、材料の強度や耐熱性などの物性に大きく影響する。
■ Al-Fe系合金
アルミニウムを主成分とし、鉄を添加した合金系。一般的なアルミニウム合金に比べ、高温環境での強度や組織安定性を狙った材料設計が可能とされる。

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