金属MEX方式用脱脂焼結炉に“自動レシピ生成”機能を搭載 ― 島津産機システムズ

2025年8月8日
小型真空脱脂焼結炉「VHS-CUBE」

島津製作所のグループ企業である島津産機システムズ株式会社(滋賀県大津市、以下、島津産機システムズ)は、同社が製造・販売する小型真空脱脂焼結炉「VHS-CUBE」に、新たな機能として「自動レシピ生成機能」を標準搭載することを発表した。この機能により、金属MEX方式で造形されたグリーンパーツ(金属粉末と樹脂の混合体)の脱脂焼結条件設定が完全自動化される。(上部画像は小型真空脱脂焼結炉「VHS-CUBE」出典:島津製作所)

VHS-CUBEとは

VHS-CUBEは、島津産機システムズ株式会社が開発した小型真空脱脂焼結炉である。MEX方式の3Dプリンターで造形されたグリーンパーツから樹脂を除去し、金属として焼結させる工程を担う装置で、脱脂と焼結のプロセスを一体で処理できる点が特徴。タッチパネル式の操作ナビゲーションを備え、直感的な設定が可能で、金属種や造形条件に応じた最適な熱処理レシピを自動生成する機能も搭載している。

なお、VHS-CUBEの詳細については、島津産機システムズへの独自取材による以下の動画をあわせてご覧いただきたい。担当者の解説を通じて、本機能の有用性がより具体的に理解できるはずである。

SUS316L・SUS630・純銅に対応、入力だけで最適熱処理を自動算出

対象となる金属材料は、第一セラモ株式会社(滋賀県東近江市、以下、第一セラモ)が提供するSUS316L、SUS630、そして純銅の3種類。金属の種類に加え、造形物の厚みや重量、数量、セッタ(炉内の部品載置板)の材質・重量・枚数などの条件を入力することで、最適な温度、時間、圧力などのレシピが自動的に導き出され、オペレーターによる追加設定を必要とせずに熱処理を開始できる。

この自動レシピ生成機能は、2024年7月下旬以降の出荷製品に標準搭載。また、既存の納入済み装置にも、利用者の要望に応じて無償でインストールが可能である。

MEX方式の可能性広がる。共同研究が生んだ自動レシピ機能

同機能の開発背景には、島津産機システムズが参画する共同研究プロジェクトの成果がある。同社は、2021年4月から2025年3月末まで、第一セラモ、近畿大学エス.ラボ株式会社(京都府京都市)とともに、MEX方式の金属造形技術の研究開発を進めてきた。

現在、金属3Dプリンター市場ではPBF方式が主流となっている。この方式は金属粉末を敷き詰め、レーザーや電子ビームで溶融しながら層を積み重ねて造形する。一方、MEX方式は、金属粉末を混合した樹脂材料を押出して造形し、焼結炉で加熱することで樹脂を除去し、金属構造体を得るという手法である。MEX方式の利点は、装置導入運用コストが低く、金属粉末を直接扱わなくても良いなどにある。

小型真空脱脂焼結炉「VHS-CUBE」の「自動レシピ生成機能」(画面イメージ)
小型真空脱脂焼結炉「VHS-CUBE」の「自動レシピ生成機能」(画面イメージ)出典:島津製作所

専門知識不要へ 焼結工程を自動化し品質と操作性を両立

しかしながら、焼結工程における温度や圧力の調整は高度な専門知識を要し、再現性や歩留まりの面で課題を抱えていた。島津産機システムズは、こうした課題を解消すべく、操作ナビゲーション付きのタッチパネルを備えた「VHS-CUBE」に自動レシピ生成機能を搭載。高度な設定を自動化することで、装置の利便性と焼結品質の両立を図っている。

同社と第一セラモは今後、対応金属材料および熱処理レシピのさらなる拡充を進め、MEX方式の金属造形技術の高度化と普及に取り組む方針である。

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