株式会社酉島製作所(以下、酉島製作所)は、金属3Dプリンターを活用した一体型プロペラ(羽根車)の適用を拡大している。老朽化が進む社会インフラ用ポンプの更新において、従来の鋳造工法と比べて製作期間を大幅に短縮するとともに、耐久性や耐食性の向上も実現した。すでに兵庫県内の河川排水ポンプ場整備工事で採用され、限られた工期内での設備復旧に貢献している。
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金属3Dプリンターで製作期間を約3分の1に短縮
日本各地では、設置から20~30年が経過した排水機場や雨水ポンプ場などの更新需要が増加している。これらの設備は非出水期に分解点検が行われるが、分解後に想定以上の腐食や劣化が判明し、部品の新規製作が必要となるケースも少なくない。
従来は木型製作から鋳造、機械加工まで複数の工程を経るため、プロペラ製作には約4~6カ月を要していた。また、一品ごとに木型製作費が発生することも課題となっていた。
酉島製作所は、DMG MORI製のハイブリッド金属AM装置「Lasertec 65 3D」を導入。金属積層造形と5軸切削加工を1台で行うことで、木型を必要としない製造プロセスを実現した。
兵庫県内の河川排水ポンプ場では、従来約6カ月かかっていた製作期間を約1.5~2カ月へ短縮。さらに、条件によっては最短2週間での製作も可能としており、設備停止期間の短縮に寄与している。
一体造形で接合部の腐食リスクを低減
今回採用されたプロペラは、高耐食ステンレス鋼(SUS316L相当)を用いた一体構造となっている。
従来は、銅合金製の羽根と鋳鉄製のボスをボルトで組み立てる構造であったが、3Dプリンターによる一体造形によって接合部をなくした。これにより、長期間使用時のガタつきや、異種金属の接触によって発生する電食(腐食)のリスクを抑えられるという。
また、既存部品は3Dスキャナーで高精度にデジタル化し、過去の運転データや性能記録を基に取付角度などを最適化したうえで造形しており、既設設備への適合性も確保している。
耐久性・耐食性を確認
社会インフラへの適用に向けては、耐久性や耐食性についても検証が行われた。
耐久試験では、SUS316L製プロペラによる連続運転試験後に浸透探傷試験(PT)を実施し、羽根付け根など応力が集中する箇所にも亀裂が発生していないことを確認した。
さらに塩水環境での耐食試験では、AM材は従来のステンレス鋳造材と比べて腐食による質量減少率が数分の一となり、優れた耐食性能を示したとしている。
材料ロス削減にも貢献
鋳造では、湯口や押し湯などを含めると製品重量の約1.5~3倍の金属材料を必要とする。
一方、金属3Dプリンターでは最終形状に近い状態まで積層する「ニアネットシェイプ」で製造できるため、材料ロスを大幅に削減できる。省資源化や環境負荷低減の面でも効果が期待される。
今後、酉島製作所は本技術を地方自治体の排水設備だけでなく、電力・化学など民間プラント向けポンプにも展開し、老朽化した社会インフラの維持管理を支援していく方針だ。
シェアラボ編集部コメント
金属3Dプリンターは航空宇宙や医療分野での採用が注目される一方、社会インフラの維持管理にも活用範囲を広げている。今回の事例では、単に部品を3Dプリントするだけではなく、3Dスキャンによるリバースエンジニアリングと、積層造形・切削加工を組み合わせたハイブリッド製造を活用している点が特徴である。
老朽設備では、図面が残っていないケースや、分解後に初めて交換部品が必要になるケースも多い。そのような現場では、短納期で部品を製作できる金属AMは、設備停止期間の短縮という大きなメリットをもたらす。今後は補修・保守分野における金属3Dプリンターの活用がさらに広がる可能性がありそうだ。
用語解説
| 金属AM(Additive Manufacturing)とは? |
|---|
| 金属粉末をレーザーなどで溶融・積層し、金属部品を造形する製造技術。複雑形状の製造や短納期化、補修部品の製作などに活用が広がっている。 |
| ハイブリッドAM機とは? |
|---|
| 金属積層造形と切削加工を1台で行える工作機械。積層後にそのまま高精度加工ができるため、工程短縮や加工精度向上につながる。 |
| ニアネットシェイプとは? |
|---|
| 最終製品に近い形状で造形・成形し、後加工を最小限に抑える製造方法。材料歩留まりの向上や加工時間の短縮、廃材削減につながる。 |
| 3Dスキャン(リバースエンジニアリング)とは? |
|---|
| 既存部品の形状を3Dスキャナーで計測し、デジタルデータとして再構築する技術。図面が存在しない部品の再製作や補修で広く利用されている。 |
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