日本鋳造、純鉄ベースの3Dプリント技術を開発 高強度・低コスト部品の量産へ

2025年7月17日
日本鋳造のプレスリリースより。

日本鋳造株式会社(神奈川県川崎市、以下、日本鋳造)は、金属3Dプリンターを活用し、従来の鋳造技術では困難とされた高強度・高延性・高靭性を兼ね備えた部品製造の新技術を確立した。今回の開発では、一般的かつ安価な鋼材であるS20Cを材料とし、積層造形によって部品を製作することで、従来品と比較して優れた機械的特性を実現している。引張強度は2倍以上、延性は約1.5倍に向上し、自動車用鋼板の性能をも凌駕する。また、シャルピー衝撃試験における吸収エネルギーは5倍以上と、靭性の面でも飛躍的な性能向上が確認されている。(上部画像は日本鋳造のプレスリリースより。出典:日本鋳造)

純鉄ベースの積層造形技術を開発で複雑形状部品の製造を革新

さらに、日本鋳造は純度99%の鉄と炭素から成る金属材料を用い、レーザーによって粉末を焼結し積層していく新たな3Dプリンター造形技術を開発した。この技術により、従来の鋳造では難しかった複雑な形状の部品製造が可能となるとともに、建設機械メーカー向けをはじめとする産業用途への展開が期待されている。本技術は国際特許(特許第7699740号)を取得済みであり、製造技術としての優位性を世界的に確立した。

鉄材でコスト3割減、試作期間も大幅短縮

従来の積層造形では、アルミニウムやチタン、ステンレスといった高価な金属材料を使用する必要があったが、本技術では安価な鉄を用いても高強度部品の製造が可能となり、製造コストをおよそ3割削減できると見込まれている。加えて、従来の鋳造による量産準備には3カ月以上を要したが、新技術の導入により、試作から製造までの期間を1〜2週間程度に短縮することが可能となる。これにより、製品開発のサイクルが大幅に加速され、迅速な市場投入が現実のものとなる。

2025年に量産開始へ!顧客企業との共創も推進

日本鋳造は、JFEスチールグループの一員として、2025年中には本技術を用いた部品の本格的な量産を開始する計画である。加えて、これまで1億5千万円以上を要した欧州製3Dプリンターに比べて、中国製機器の普及により機械価格が7千万円程度まで低下しており、導入コストの面でもハードルが下がってきている。こうした状況を背景に、今後は自社での活用にとどまらず、顧客企業に向けた3Dプリンターの導入支援や、共同開発を通じた新製品創出など、高効率な製造手法の普及を目指していく方針である。

中小企業の競争力を後押し

本技術の登場は、製造業の現場における革新を促すものであり、特に中小企業においては、試作コストと開発期間の大幅な短縮という観点から導入の意義は大きい。また、3Dプリンターの普及は、サプライチェーンの柔軟性やリスク対応力の向上にもつながるものであり、我が国製造業全体の競争力強化に資する基盤技術として今後の展開が注目される。

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