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わずか数マイクロメートルの構造をプリントできる3Dプリンターがスイスで開発される

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)で、直径わずか数マイクロメートルの構造をプリントできる3Dプリンターが開発された。1マイクロメートルは100万分の1メートル、1000分の1ミリ。

EPFLの研究者らは当初、市販の3Dプリンターの導入を検討していた。しかし資金面をはじめとした希望条件を満たせるものがなく、ゼロから自作することにした。

開発されたプリンターは「メルトエレクトロライティング」(MEW)と呼ばれる、電気の力でマイクロファイバーを配置する手法を3Dプリントに応用したものだ。EPFLが開発した3Dプリンターは直径1~10マイクロメートルの構造を造形できる。

従来よりも微細な構造を高速プリント

数マイクロメートルの細かさで印刷をする様子。とても繊細な構造物でも印刷できる。

EPFL の教授である Christophe Moser 氏と Jürgen Brugger 氏は、市場にある3Dプリンターが高価なことと、「従来の100マイクロメートル単位での3Dプリントよりも微細な構造をプリントしたい」という思いがきっかけで、学生とエンジニアをチームに加えて3Dプリンターの自作にふみきった。この試みはMEWテクノロジーがどのように機能し、どのような材料を使用する必要があるかを学ぶところから始まったという。

結果として開発された3Dプリンターは既製品を大きく上回る性能を備えている。従来の3Dプリンターでは最小でも100マイクロメートル単位で3Dプリントされていたものが、その100分の1にあたる直径1~10マイクロメートルのパーツが3Dプリント可能になった。

EPFLが開発した3Dプリンターの特筆すべき点は、そのプリントスピードにもある。EPFLの3Dプリンターなら20×20mmの構造を2分ほどで造形できる。このプリンターのプロトタイプを設計したEPFL 工学部の Microsystems Laboratory1 のエンジニア Deeke Ehmen 氏は「何をプリントするかにもよりますが、あなたがコーヒーを飲み終わるまでにはプリントが完了していますよ」と冗談まじりに述べた。

アプリケーションに合わせた調整が可能

研究者が独自に開発した3Dプリンターを所有することのメリットは、経済的効果だけではない。自作の3Dプリンターであれば市販品を購入するのとは異なり、プリンターのあらゆる構造や機能についての把握ができている状況になる。その結果、他のアプリケーションに合わせた微妙な調整が可能になるというメリットが生まれる。

今回 EPFL で開発された3Dプリンターは、特に生物学の分野での応用が期待されている。組織や細胞を培養するための足場となるスキャフォールドの作成、センサーや生物医学(バイオメディカル)装置の製造など、さまざまな可能性を秘めているという。

Deeke Ehmen 氏は、この3Dプリンターの特徴に関して「あらゆる種類のプラスチックを含む、多くの材料を使用できるという事実は、理論的にはどんな製品でも造形できることを意味する」と述べている。

従来の3Dプリンターは1種類のプラスチックからでしかプリントできないことが多かったが、今回開発された3Dプリンターは、印刷素材の面でも革新をもたらすものになるだろう。Christophe Moser 教授は開発した3Dプリンターについて「教育と科学研究の両方に最適なツールです」と強調する。

研究チームはMEWテクノロジーの発明者であるPaul Dalton氏によって支援を受け、将来的には、高度な3Dプリンターの研究ツールおよび教育リソースとして利用される予定となっている。

Jürgen Brugger教授は「今回開発した3DプリンターはEPFL以外の研究者も使用可能にしています。そして常に共同研究の受け入れも行っています」と述べた。

今回紹介し微細な世界での活躍が期待できる3Dプリンターだけでなく、近年では3Dプリントされた建築物のようなマクロの世界の3Dプリンターにも注目が集まっている。

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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