Backflipが自動CADモデリングの革命的なAIツールを発表

Markforegedの創業者が設立したことでも話題を集めたBackflip AI社(アメリカ合衆国カリフォルニア州、以下、Backflip)はこれまでステルスモードで活動してきたが、最近になってその技術を公にし始めた。同社は新しい3Dプリンターを開発しているわけではなく、AI技術を活用してプリント可能な3Dモデルを生成することに注力している。以前、Backflipは「テキストから3Dモデルを生成するツール」を発表していた。このツールは、テキスト入力から適切な形状を生成できるものの、類似した他のツールと比べて決定的な違いがあるわけではなかった。しかし、Backflipはさらに進化した技術を開発していた。そして今回、これまでにない全く新しいAIツール「3D Scan to CAD」を発表したという。(上部画像はBackflipのサイトより。出典:Backflip)
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Backflipの3D Scan to CADの仕組み
従来の「テキストから3D」ツールは、オブジェクトの形状、つまりメッシュを生成する。しかし、「3D Scan to CAD」はそれとは異なる。このツールは、3Dスキャンデータを入力として受け取り、自動的にCADのフィーチャーシーケンスを生成する。単なるメッシュデータを作るのではなく、CADソフトウェアを駆動し、まるで人間のエンジニアが設計するかのように、オブジェクトを描画する。これは、完全に自動化されたリバースエンジニアリングと言える。
この技術は、「SOLIDWORKS」のプラグインとして実装されている。スキャンデータを選択し、BackflipのクラウドAIシステムにアップロードすると、AIが複数の選択肢を提示する。ユーザーが最適なオプションを選択すると、それが「SOLIDWORKS」に送られ、フィーチャーコマンドが実行されるというものだ。

製造業で広く使われる3D CADソフト「SOLIDWORKS」のアドオンとして
「SOLIDWORKS」は、Dassault Systèmes社(フランス・ヴェリジー)が開発する3D CAD(コンピュータ支援設計)ソフトウェアである。主に製造業やエンジニアリング分野で利用され、パーツ設計、アセンブリ、図面作成などの機能を備える。パラメトリック設計を採用し、設計変更が容易な点が特徴。CAE(解析)やCAM(加工)機能とも連携でき、製品開発の効率化に貢献する。直感的な操作性により、初心者からプロまで幅広く活用されている。
Backflipのリアルタイムで自動生成される高精度CADモデル
デモ動画では、シンプルなパーツがリアルタイムで「SOLIDWORKS」上に自動描画される様子が確認できる。その速度は非常に速い。この技術の驚くべき点は、「SOLIDWORKS」が単純なパーツから中程度の複雑なパーツまでを、わずか数秒で描画できることだ。最終的に生成されるのは、手作業で設計したのと同じ「適切な」CADモデルであり、通常の編集・調整も可能である。このシステムにより、CADの専門知識がなくとも、スキャンデータから使いやすいCADモデルを生成できるようになる。

Backflip開発の背景
この技術の着想は、Markforgedの製品を販売する過程で数多くの工場を訪問した際に得たという。そこでは、現場の作業員が修理の必要な部品を待つ間、製造ラインが停止してしまうという問題が頻繁に発生していた。
理論的には、Markforgedの3Dプリンターを使えば即座にスペアパーツを製造できる。しかし、問題は「3Dモデルがない」ことにあった。技術者たちは専門的な知識を持っていたが、CADの訓練を受けていなかったため、自分で設計を行うことができず、またその時間もなかったのだ。
Backflip AIの真の目的は、この問題を解決することにある。作業員が部品を手に取り、スキャンし、数時間以内に代替品をプリントできるようにすることで、製造ラインのダウンタイムを最小限に抑えることができる。
Backflipに見られるAIの学習データと今後の展望
このツールの開発にあたり、Backflipは5000万点以上のCADパーツデザインをAIに学習させ、スキャンデータからパラメトリックモデルを生成する技術を構築した。さらに、10年以上の製造業経験を活かし、設計のベストプラクティスをAIに組み込んでいる。例えば、適切な設計プロセスに従い、面取り(Chamfer)は最後に適用するなど、人間の優れたCAD設計者と同じような手順をAIが再現できるようになっている。
Backflipの段階的リリースで広がる「3D Scan to CAD」の可能性
Backflipは「3D Scan to CAD」の公開にあたり、段階的なリリースを予定している。4週間後に限定ベータ版をリリースし、その後徐々にユーザーを拡大していく。「SOLIDWORKS」のプラグインに加え、Web版も提供予定で、スキャンデータをアップロードすればSTEPファイルを出力できる。さらに、趣味用途向けの無料バージョンも用意するとのこと。ただし、この無料版の利用データは、OnShapeの無料プランと同様、AIの学習に使用される。
Backflipの「3D Scan to CAD」は、製造業やリバースエンジニアリングにおける大きな変革をもたらす可能性がある。今後、この技術がどのように発展し、実用化されるか大いに期待される。
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