Xaarが超高粘度液滴に対応するインクジェット3Dプリンターのプリントヘッドを開発
インクジェットプリンターを専門とするXaarは、超高粘度液体を用いた3Dプリントに対応するプリントヘッドを開発した。使用できる液体の粘度は、従来の12cP程度から、1000cPに大きく向上した。
Xaarの高度なインクジェットプリンティング技術
イギリス、ケンブリッジに本社を置くXaarは、30年以上に渡って高精度なインクジェットプリンティング技術を磨き上げてきた。現在Xaarは、培ってきたインクジェットプリンター技術を 3Dプリントに応用し、新たな可能性を提供している。
インクジェット3Dプリンターは液体インクをプリントヘッドから吐出し、乾かすことで立体造形を行う。原理は紙に印刷するインクジェットプリンターと変わりない。
インクジェット3Dプリンターは材料の選択肢を大きく広げ、これまでは 3Dプリントに適さなかった材料も利用できるようになった。特にプラスチック材料は有機溶剤に溶解するものが多い。こうした材料を用いることで、3Dプリントした造形物に「透明性」や「柔軟性」を付与できる。
また、2次元のインクジェットプリンターがそうであるように、将来的には3Dプリントのコストを大幅に低減する可能性もある。
インクジェットの限界
3Dプリントにインクジェット技術を用いる場合、問題となるのは、「液体である」ということだ。
吐出された液体は接地してから幾らか広がるため、どうしても解像度が低下してしまう。また、乾くまでに時間が掛かるために生産性を上げることができず、コストもあまり下がらない。
こうした問題を解決する方法は明らかで、「液体の粘度を上げる」ことだ。高粘度液体を用いれば、吐出された液滴は広がりにくく、すぐに固化する。
しかし、高粘度の液体は扱いが難しい。従来のプリンタヘッドでは内部で詰まり、上手く吐出することができなかった。
超高粘度対応プリントヘッドで限界を超える
インクジェット3Dプリンティングの限界を超えるため、Xaarは新たに、高粘度に対応したプリントヘッドを開発した。流体を高速に加速して循環させ、閉塞を回避する独自技術を利用している。
さらに、吐出時に液体を加熱して軟化させることで、室温で1000 cp(センチポワズ:粘度の単位)の高粘度液体を吐出することに成功した(吐出時温度で100cP)。参考までに、1000 cPとは、蜂蜜と同程度の粘度だ。
これは従来のインクジェットプリンターにおける推奨インク粘度が10~12cp であったことを考慮すれば、大きな進歩と言える。液滴の広がりを抑え、解像度を改善させるとともに、生産性も向上した。
使用できる液体の粘度が大きく向上したことで、使用できる材料の幅も広がった。これまでは粘度の制限から利用できなかった材料もインクに混ぜることができる。
例えば、接着剤のような材料を利用できるようになったため、今後は回路や電子機器、自動車製造などにも活用されることになるだろう。
Xaarは、「プリントヘッドをさらに改善するため多くのパートナーと協力し続けている」と述べている。インクジェット技術による 3Dプリントが大量生産を可能にし、商業化に至るまで、あと一歩というところまでやってきた。
関連情報
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。