住友ゴム工業株式会社(兵庫県神戸市)は、2024年6月2日、岡山県倉敷市にある大原美術館で実施された「岡山フィルムプロジェクト」の制作報告会見において、3Dプリンター造形用ゴム材料で製作した桃型のゴムオブジェを初披露した。これは、同社が2026年中の実用化を目指し、研究開発を進めている新素材である。(上部画像は住友ゴムのプレスリリースより。出典:住友ゴム)
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3Dプリンターで“本物のゴム”造形を実現
これまで、3Dプリンターでゴム製品を成形することは困難であった。ゴムは柔軟かつ弾力に富む一方で、従来の3Dプリンターではその特性を再現する材料が存在していなかった。住友ゴムはこうした課題に対し、タイヤ開発で培ったゴム配合技術および内部構造解析のノウハウを応用。高い復元性を備え、繰り返しの圧縮にも耐える新たなゴム材料を独自に開発した。
2000万回の圧縮に耐える新ゴム素材
今回披露された桃型オブジェは、その成果の一例である。ゴム特有の弾性、耐衝撃性、柔軟性、滑りにくさなどを維持しながら、3Dプリンターでの造形を可能にしたことは画期的である。この新素材は、2000万回の繰り返し圧縮試験にも耐える圧縮耐久性を有し、長時間の高温圧縮環境下でも形状を維持する復元性を発揮する。
ロボットや医療分野にも応用可能
本技術の実用化により、3Dプリンターの活用範囲は大幅に拡大すると見込まれている。たとえば、人の指先のような滑りにくさを求められるロボットハンドの指部分や、柔軟性と弾力性を求められる医療用臓器シミュレーションモデルなど、多様な分野での応用が期待される。
住友ゴム、岡山フィルムプロジェクトで学生と技術連携
今回の発表は、「岡山フィルムプロジェクト」の一環として行われた。同プロジェクトは、映画制作を通じて地域の活性化および次世代クリエイターの育成を目的とする取り組みであり、住友ゴムは岡山県内にタイヤテストコースを持つ企業として、地元の学生のアイデアに技術協力を行った。
学生の創造力×住友ゴムの技術
制作報告会見では、針生悠伺監督、MEGUMI氏、松田美由紀氏、阿部進之介氏らが登壇し、岡山県の学生たちもプロジェクトの成果を報告。披露された成果物には、学生の自由な発想と住友ゴムの先端技術が融合し、岡山らしさ、プロジェクトらしさが色濃く表れていた。桃型オブジェに触れると、ゴムの心地よい弾力性が直に感じられる。


住友ゴム、学生との共創で新素材開発を加速
開発を担った研究開発本部新事業開発部の杉本睦樹課長は、「3Dプリンターの最大の魅力は、創造をすぐにカタチにできることにある。学生の柔軟なアイデアを迅速に具現化できたことにより、企業力と技術力、そしてゴムの持つ心地よさを広くアピールできた。開発チームの連携によってスピーディーな試作が実現したことも大きい。今後も学生とのコラボを通じて柔軟な発想を商品開発へ繋げていきたい」と語っている。

同社は、ロボット、医療、自動車、スポーツといった多岐にわたる分野での展開を視野に入れており、3Dプリンター用ゴム材料の市場投入に向けた開発を鋭意進めている。
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