EMO Hannover 2019で欧州へPRする日本の積層造形関連企業
2019年9月16日から21日にかけて、ドイツのハノーバーで工作機械の大展示会「 EMO Hannover 2019 」が開催される。2年に1回開催される国際見本市だが、2017年には期間中出展社2200社動員 13万人を集めた。日本からは工作機械各社が出展するが、AM分野では世界初の技術を盛り込んだ国産金属3Dプリンター「ラムダ」のお披露目として力を入れる三菱重工工作機械、今回のEMO向けに金属積層造形機能搭載の小型同時5軸マシニングセンタ「XtenDED」を発表したスギノマシンなどが新製品とともに乗り込む。同展示会の公式サイト、各社の発表から日本からの出展企業を独自にしらべ、紹介してみた。
三菱重工
国策開発事業として、TRAFAMの国際競争力のある国産3Dプリンターを生み出すプロジェクト成果物でもある三菱重工工作機械製金属3Dプリンター「LAMDA」を展示する。LAMDAはパウダーベッド方式よりも10倍速くより大きな造形が可能なDED方式を採用。金属の酸化を防ぐために窒素を噴霧しながらシールドを作るローカルシールド機能や、溶融状態をモニタリングしながら積層条件を調整するモニタリング機能など新機軸を多数盛り込んだ国産金属3Dプリンターで販売価格も5000万円台。より大型な造形装置への布石として販売していく方針とのことだ。世界初の新技術が世界にどう受け止められるのか。期待がふくらむ。
併せて、期間中の9月19日には展示会における金属3Dプリンターのセミナーに登壇し、大掛かりなチャンバーなしでも造形中の金属酸化を防止するローカルシールド機能、および溶融状態をリアルタイムで監視して造形条件の最適化がはかれるモニタリングフィードバック機能、さらにAIを利用した造形状態を監視する技術を披露します。これらは、いずれも世界初の新技術です。
出典:三菱重工プレスリリース
スギノマシン
世界最小クラスのマシニングセンタとしてDED方式の金属積層3Dプリンターを内蔵したスギノマシンも紹介しておく。
スギノマシンは新潟県魚津市の工作機械メーカ。金属の積層造形から切削加工までを1台で完結する同時5軸マシニングセンタ「XTenDED」をEMO2019に展示する。大きさは業界最小クラスの7.8平米。ノズルの先端から噴射される金属粉をレーザーで溶融、凝固させながら肉盛りする「DED方式」を採用。異種材料を組み合わせた積層造形が可能だ。航空機エンジン部品の加工や摩耗した金型の再生などでの活用を見込んでおり、価格は7800万円、初年度販売目標を20台としている。
MAZAK(ヤマザキマザック)
2019年で創立100周年を迎えるヤマザキマザック。国内で開催される各展示会でサンダーバードを起用した展示が目を引いているのが印象的。サイト中では27台の工作機械が現地で展示されるとしている。同社は銅などの反射率が高い金属にも対応した世界初のブルーレーザー積層造形技術と切削加工を複合した同時5軸加工機をラインナップに持つ。
Sodick(ソディック)
Sodick(ソディック)は国内サイト内では参加に関する情報はなかったが、EMOサイトでは参加と記載があった。3Dプリンター関連装置としてはハイブリッドプロセス用システムOPM250Lを紹介する。リニアモーターアシストHSCフライス加工技術と組み合わせた3D金属プリンティングのワンストップソリューションということで、OPM250Lは、航空宇宙、自動車、防衛、およびその他の分野のアプリケーションを想定している。 蛇足だがEMOのソディック紹介ページには社名の由来が紹介されている。「ソディック」は、創造、実行、克服の日本語の音声を組み合わせたものに由来するとのことだった。(企業意思やモノづくりの物語を感じる、いい由来ですね。 )
松浦工作機械
松浦工作機械はファイバーレーザによる「金属光造形」とマシニングセンタによる「高速・高精度切削加 工」を融合したハイブリッド金属 3D プリンタ 「LUMEX」シリーズを2002年から展開。 EMO2019では「LUMEXテクノロジー」、「自動化・無人化」、「Matsuura IoT」の3つのキーワードで欧州市場にPRする。 EOS出展社サイトでは「LUMEX Avance-25」と 「LUMEX Avance-60」がヒット。
OKUMA(オークマ)
オークマ製品の3Dプリンター関連装置として超複合加工械-MU-6300V LASER EXがEMOサイト内でヒット。MU-6300V LASER EX は幅広いワークサイズと形状のフライス加工、旋削、研削、レーザー金属堆積(LMD)、熱処理が可能な長複合加工機。世界で初めて熱処理工程を集約し、切削と研削過程を段取り替えなしに同一工作機械内で処理する事で、精度とスループットの劇的な向上を実現したLASER EXシリーズは、コーティングからLMDまでのレーザー加工も可能にしている。インターモールド2019名古屋でお話を伺った際には、「国内でも金型用途でのお問い合わせが多い」とのこと。
「欧州市場は橋頭保を築きやすい」という声も。
3Dプリンターのコア部品を作っている国内部品メーカー筋によると「各言語ごと、国ごとにメーカーもバイヤーも細分化されている欧州市場は、展示会商談での案件獲得がやりやすい。」という肌感覚があるそうだ。また金属積層に関してはドイツが技術的に求心力があるという面もあり、各国の装置をみて最新動向をつかみたいと考えるバイヤーサイドも数多く集まる。日本からも視察団を募って情報収集に向かう団体もあるが、アジア圏への影響力もある国際的な展示会だ。金属3Dプリンターを中心に盛り上がる積層加工業界の動向に注目したい。
2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。