金属積層造形分野の専門調査会社VoxelMatters(イタリア・ミラノ)は、2025年に向けた最新の市場レポート『Metal AM Market 2025』を発表した。同レポートによれば、金属AMの中核市場は2024年時点で47億ドル(約7200億円)を超えており、今後も年平均成長率29%という驚異的なスピードで成長を続け、2034年には600億ドル(約9兆円)近い市場規模に達する見通しである。(上部画像はVoxelMattersのサイトより。出典:VoxelMatters)
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ハードウェアが市場を牽引、材料分野は35.6%成長で急伸
2024年における市場内訳を見ると、ハードウェア分野が24億ドル(約3,500億円)を占め、前年から28%の成長を記録。依然として市場の主導的地位を維持している。材料分野は最も成長率が高く、35.6%増の8億2000万ドル(約1,200億円)に達した。とくにチタンなどの高付加価値材料に対する需要が高まっていることが要因である。サービス分野も堅調で、16.7%の成長により15億ドル(約2,200億円)の市場規模を示した。
L-PBFが主導、中国勢が台頭!新技術WAAM・コールドスプレーも注目
レポートは、金属AM技術がより多くの用途で従来製法と競争できる選択肢になりつつあることを強調。中でも、レーザー粉末床溶融結合(L-PBF)方式の大型・高効率システムが業界を牽引しており、近年は中国メーカーの技術進展とシェア拡大も目立つ。一方、金属バインダージェッティングやバウンドメタルといった技術は未だ本格的な普及には至っていないが、WAAM(ワイヤーアーク積層造形)やコールドスプレー技術が、部品単価の劇的な削減を通じて新たな市場を開拓していると指摘されている。
世界7000社から抽出、476社を精査!
VoxelMattersが運営する世界最大級のAM企業データベース「VoxelMatters Directory」に登録された7000社近い企業情報をもとに、136社のハードウェアメーカー、83社の材料供給事業者、257社のサービスプロバイダーを分析対象とした。企業数は前回調査から32社増加しており、市場の拡大傾向が数字からも読み取れる。
また、本レポートでは3D Systems、GE Additive(現Colibrium Additive)、EOS、Farsoon、Renishaw、TRUMPF、Velo3D、voestalpine、Markforgedなど、業界の主要プレイヤーに加え、成長が期待される新興企業についても個別に言及されている。
9兆円市場へと拡大する金属AM
金属AM市場は今後も高成長を維持し、2034年には約9兆円規模に拡大する見通しである。L-PBF方式を中心に装置の大型化・高効率化が進み、特に中国メーカーの台頭が市場競争を活性化させている。また、WAAMやコールドスプレーといった新興技術はコスト削減の観点から注目されており、航空宇宙やエネルギー分野での用途拡大が期待される。加えて、サービスや材料分野でも技術革新が進み、総合的な製造ソリューションとしてのAM活用が現実味を帯びてきている。今後は各国の規格整備やサプライチェーン構築の進展とともに、製造業全体におけるAMの社会実装が一段と加速していくことが予想される。
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