石英ガラスによる微細3Dプリンティング
ドイツのフライブルク大学と米カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、光学3Dプリンターを用いて、透明な石英ガラスを材料とする微細立体造形技術を開発した。髪の毛の太さ程度(約50μm)の精度でガラス造形が可能。
3Dプリント材料の種類
3Dプリンターで用いられる材料として代表的なものは、樹脂(プラスチック)だ。樹脂材料は熱によって簡単に溶解し、加工性に優れる。光によって硬化するタイプの樹脂もあり、強度や熱耐性などをコントロールしやすいこともよく用いられる一因だ。
金属は、樹脂に次いでよく用いられる3Dプリント材料と言えるだろう。融点が高く、加工が難しい金属だが、特に航空宇宙産業において、複雑な立体造形が求められる金属部品の需要は大きい。
その他、建築業界ではコンクリートが用いられる。珍しいところとしてはセラミックや生物細胞を材料として使う3Dプリンターも開発された。
ここ数年の研究者たちの努力によって、3Dプリンターで利用できる材料の種類は拡大しつつある。
3Dプリントに石英ガラスの利用を模索
石英ガラス(SiO2を原料とするアモルファス固体、いわゆる普通のガラス)は非常に高い透明度、強度、化学的安定性などを兼ね備え、私たちの生活を支える重要な材料だ。
ドイツのフライブルク大学と米カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは石英ガラスを3Dプリントの材料とすることを目指した。
しかし、石英ガラスは高い融点を持つことが3Dプリントでも利用を妨げていた。従来のガラス加工と同様に熱で融かして造形することは困難だ。
研究チームは「熱」ではなく「光」によるアプローチを試みた。特殊な結合剤とガラス粉末からなる新材料「Glassomer」は、一定値以上の強度の光を照射することで硬化する。硬化させて形を維持させたまま炉に入れて加熱することで、樹脂は溶け出し、石英ガラスは焼結する。純度100%の石英ガラスを用いた立体造形物が出来上がるという寸法だ。
髪の毛程度の細さを実現
ガラス3Dプリンティングを実現するにあたっては、光造形技術も大きな役割を果たした。
研究チームが開発したComputed Axial Lithography (CAL)は、3次元フォトリソグラフィー技術だ。様々な角度から照射される光が重なり、3次元空間内の特定の部分のみ、樹脂硬化閾値を超えた光に晒される。Glassomerはその部分のみで硬化するため、思い描いた立体造形が可能となる。
GlassomerとCALを組み合わせた立体造形技術は高い精度を有し、ヒトの髪の毛程度の細さ(約50μm)の立体造形が可能となった。
ガラスは光学部品として非常に多くの用途を持つ。今回、ガラスが3Dプリントで利用できるようになったことで、センサー、バーチャルリアリティヘッドセット、顕微鏡のレンズなど、多様な分野に影響を与えることが予測される。
また、樹脂の弱点である「化学薬品に対する脆弱性」もガラスならば難なく突破する。ガラスは小さくなればなるほど構造欠陥が減少し、割れにくくなるという特徴も有する。これらの特性から、現在プラスチックが担うような分野においても、3Dプリントされたガラス製品が代替する可能性も出てきた。
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