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3Dプリンターでつくられたステンレス製の橋が6年がかりで完成

オランダのロボット企業 MX3D が製作した12mの3Dプリント歩道橋がアムステルダムの歓楽街 Oudezijds Achterburgwal に架けられた。(写真は工場で作られている様子 / 出典:Joris Laarman Lab

MX3D Bridge」と名付けられたこの橋はオランダのスタジオ Joris Laarman Lab が、共同設立したテクノロジー企業 MX3D とエンジニアリング会社 Arup と設計。溶接装置を備えた6軸のロボットアームでステンレスの棒を加工して作られており、プロジェクト開始からなんと6年がかりで完成した。

6年がかりで制作された3Dプリント歩道橋MX3DBridgeの外観。複雑な装飾が施された橋だが、色合いが街並みとあっており、意外と落ち着いた印象。
6年がかりで制作された3Dプリント歩道橋「MX3DBridge」(出典 : MX3D)

3Dプリンターで橋を架けた背景

なぜ6年もの歳月をかけて、3Dプリンターの橋が架けることになったのか。

きっかけは、設計担当した Joris Laarman(以下、ラーマン氏)がロボットアームと溶接機を組み合わせて家具を印刷できる3Dプリンターをつくった直後に、この橋のアイディアを思いついたことだった。より大規模なプロジェクトを3Dプリンターで作り出す可能性を探るべく、このアイディアを実現するプロジェクトが2015年にスタート。当初は運河に架かる構造物をその場でプリントし、両岸のロボットが橋を溶接して真ん中で合流させる計画で2017年に完成予定だった。

その場で3Dプリントするテスト風景。 3Dプリンターが橋の上に乗り、河の上に橋を架けていく様子。
その場で3Dプリントするテスト風景(出典:Joris Laarman Lab)

しかし、試行錯誤をかさねた結果、最終的には橋を2つのパーツに分けて、敷地外の施設で製作することに。変更することとなった主な理由は、協議会の規定に沿って構造を強化する必要があったためだ。より強化された橋は4,500kgのステンレススチールを使用し、工場で6ヶ月間かけてロボットが3Dプリントした後、運河にクレーンで設置された。

より少ない材料で最適化された独創的デザイン

目を引く独創的なデザインが特徴の橋は、細部までこだわっている。

このデザインはパラメトリック・モデリング・ソフトウェアを用いて設計されている。橋の製作チームは、この技術によって、3Dプリント技術がより少ない材料でより最適化されたデザインを実現できることを示したと主張している。

パラメトリックモデリングとは
3D CADで形状を作成する方法の一つであり、寸法値として定義された変数の値や拘束条件を指定して形状を作成する手法。パラメトリック・デザインとも呼ばれる。値を変更するだけで類似形状を容易に作成できるため、既存製品のデータを改良して新規設計を行う場合などに有効である。

デザインを担当したラーマン氏は以下のようにコメントしている。

JorisLaarmanによる3Dプリントされた橋

このプロジェクトにより、3Dプリンターの新たな可能性として、強力でありながらユニークな構造的なものを作り出すことを証明できました。ロボットを使ってプリンティングするということは、もはやプリンターの境界に制限されず、無限に大きな構造を印刷することができます。

ジョリス・ラーマン氏(写真は本人 / 出典:Joris Laarman Lab

実際の製造工程

実際に工場で作られ、クレーンによって運ばれる流れを動画でも公開してるのでぜひご覧いただきたい。

世界の3Dプリンター製の橋事例

3Dプリントされた初のステンレス製の橋とされているが、これまでにも他の素材やデザインなど世界中で橋が3Dプリンターで作られていることをご存じだろうか。各国の3Dプリンター橋を素材別に紹介する。

【コンクリート製】3Dプリント製自転車橋-オランダ・アイントホーフェン

2017年には、オランダのアイントホーフェン工科大学と、建設・不動産大手 Royal BAM Group と提携し「3Dプリント製自転車橋」を開通させている。全長8メートルの橋梁は、強化プレストレス・コンクリートを使用し、約3ヶ月かけて800層をプリント。完成した橋は2トンまでの荷重に耐えられることを保証するための試験をクリアしている。

ちなみに、なぜ「自転車橋」かというと、その名の通り自転車大国オランダならではのサイクリストのための橋だからである。

【コンクリート製】世界最長の橋が誕生-オランダ・ナイメーヘン

Bridgeプロジェクトは国家プロジェクトとして、オランダの公共事業・水管理局とナイメーヘン市、デザイナーのミシェル・ヴァン・デル・クレイ氏による共同で進められた。最大の特徴は、流線形をふんだんに使ったデザインだ。

【コンクリート製】3Dプリント製歩道橋-フランス・パリ

フランスに拠点を置く建設3Dプリンティングスタートアップ XtreeEが、2024年パリ・オリンピックに向けて3Dプリント製歩道橋を建築予定。全長40mにおよぶこの橋は、歩道橋のデッキ全体、つまり耐力構造全体にAM技術を活用する予定とのことだ。

【環境に優しい素材】伸縮可能な橋-中国・上海

中国の建築事務所は、環境に優しいとされる複合カーボネイト・ポリエステル素材を使用して上海市内に展開。中国で独自開発された6軸の3Dプリンターを使用し、36枚の3Dプリントパネルから構成されておりわずか3日間で完成した。一度に20人を収容することができ、過負荷を防ぐための自動警報システムが設置されるなど機能性も高い。

今後は市内各地に3Dプリンター製の橋を広めていく予定とのこと。

【プラスチック製】世界最大のプラスチック製3Dプリント歩道橋-中国・上海

2018年 中国大手建設会社「上海建設グループ」及び中国の工作機器メーカー「瀋陽工作機械グループ」が、中国のフィラメントメーカーPolymakerと協力し製作。ガラス繊維混合ASA素材を使用し、長さ15.25メートル、幅3.8メートル、高さ1.2メートル、総重量5,300kgと大型の歩道橋を上海郊外の公園に設置。約1ヶ月半かけて作られた。

強度の高いコンクリートをはじめに、樹脂やプラスチック、最近では環境に優しい素材なども注目されている。その素材の特徴を活かしながら、無駄な資源を削減し、製造コストを削減できる3Dプリンター製の橋は今後も世界で多く展開されていくだろう。

関連情報

シェアラボ編集部

3Dプリンターの繊細で創造性豊かなところに惹かれます。そんな3Dプリンターの可能性や魅力を少しでも多くの人に伝えられるような執筆を心がけています。

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