1型糖尿病の3Dバイオプリント治療のためにアスペクトバイオシステムズとJDRFが提携
アスペクトバイオシステムズとJDRF(Juvenile Diabetes Research Foundation)は、1型糖尿病治療法の研究開発に関して提携することを発表した。3Dバイオプリントを用いた組織治療の分野を前進させることを目指す。
1型糖尿病とは
1型糖尿病とはインスリンを分泌する膵臓の細胞が破壊されてしまう病気である。
インスリンは糖の代謝を調節するホルモンで、インスリン不足が長期に渡れば、血管、神経、臓器の損傷に繋がる。
1型糖尿病は先天的な免疫機能の欠陥が原因と言われており、主に生活習慣が原因となる2型糖尿病とは治療法が異なる。生活習慣を改善するだけでは根本治療に繋がらないためだ。
これまで、1型糖尿病患者は定期的なインスリン注射を余儀なくされていた。近年では、インスリンを持続的に投与するポンプの開発と小型化が進み、患者の負担は少なくなったものの、1型糖尿病患者の根本治療は未だ難しい。
根本的な治療のためには臓器移植がほぼ唯一の方法だ。しかし、臓器移植はコスト的にも、機会の面でも誰もが利用できる方法ではない。また、拒絶反応への不安は残る。
糖尿病治療における3Dバイオプリント
こうした現状の問題点を解決すべく、新たに3Dバイオプリントを利用した治療法が提案された。その方法とは、3Dバイオプリンターで膵臓を形成し、患者に移植する、というものだ。
これまでの1型糖尿病治療法に対し、3Dバイオプリント治療は様々な利点を有する。
まず、臓器ドナーを必要としない。臓器移植の順番待ちの列に並ぶ必要がなく、治療の機会が増える。また、臓器移植と異なり、本人の細胞を培養して臓器を形成するため、拒絶反応への心配も少ない。将来的にはコスト低減にも繋がるだろう。
臓器の3Dプリントと移植が実現すれば、がん治療に対しても大きな効果を生む。3Dバイオプリント治療は多くの利点があり、それを待ち望む患者も多いため、様々な機関がその実現のために研究を進めている。
Readily3Dのバイオプリンターを使った膵臓モデル形成プロジェクト(ENLIGHT)は、その一例だ。
「ENLIGHT project to develop 3D-printed pancreas for drug testing」
アスペクトバイオシステムズとJDRF
カナダの3Dバイオプリンティング会社であるアスペクトバイオシステムズと、糖尿病に関する国際的な援助団体であるJDRFは、3Dバイオプリントによる臓器形成を前進させるべく、提携を決定した。
アスペクトバイオシステムズは2020年にシリーズA投資で2千万ドルの資金調達を終えている。再生医療だけでなく、大学や各種研究機関と共同で治療薬開発や疾患の研究にも取り組んできたスタートアップ企業だ。
アスペクトバイオシステムズが開発した3Dバイオプリンター「RX1バイオプリンター」は多種の細胞インクを素早く切り替えながら吐出することができ、組成が複雑な組織の作成も可能にする。臓器3Dプリントでは、この技術が鍵となる。
一方のJDRFは、1型糖尿病の治療法開発、若年患者の支援を目的とした国際的非営利組織で、1型糖尿病のスペシャリスト集団だ。
JDRFは、両者の連携によって「糖尿病患者にインスリン投与が不要となること」を今後の目標として掲げた。
JDRF研究所副所長のEsther Latres氏は、今回の提携について、以下のようにコメントしている。
「20年以上の間、JDRFは1型糖尿病の組織治療研究のリーダーだった。アスペクトバイオシステムズとの今回の提携は、この分野での科学的進歩を継続的にサポートする。治療法の発見が近付くことは間違いない。」
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