米3Dシステムズが米国陸軍研究所より、金属粉末3Dプリンターを1,500万ドル受注
POINT
- 3Dシステムズが米国陸軍研究所より世界最大・最速・最精細を目指した3Dプリンター開発プロジェクトを受注。予算規模は 1500万ドル(約16億円)
- 本国での運用の他、同盟国への長距離弾薬、次世代戦闘車両、ヘリコプター、航空/ミサイル防衛力 の提供に用いることを目指す。
- 新開発の金属3Dプリンタの 造形領域は1,000mm×1,000mm×600mmで、 現行の500mm×500mm×500mmの大規模金属3Dプリンターを大幅に上回る上、最小壁厚100μm、層厚30μmの微細造形も実現する予定。
概要
3Dシステムズは、世界最大・最速・最精細の金属3Dプリンターを製作する1,500万ドルの契約を米国陸軍研究所[Combat Capabilities Development Command ARL(Army Research Laboratory)]から受注したことを、2019年7月、ROCK HILL(South Carolina)において発表した。
「もっと大きく、もっと速く、もっと高精度」へ
米陸軍積層造形実装計画(U.S. Army Additive Manufacturing Implementation Plan)によると、米陸軍は摩耗した部品の修理調整およびカスタムツールの作成に積層造形(AM)を20年にわたって使用してきたが、造形サイズ、造形速度、精度の面で改善が望まれていた。
これまで、重要な地上戦闘サブシステムを大規模に生産するのに際し、パウダーベッド方式レーザー 3Dプリンターでは小さすぎ、遅すぎ、不正確すぎました。 私たちの目標は、共通の国益を支持して米国陸軍による安全保障協力活動の実行を支援する同盟やパートナー、および重要な国家安全保障サプライチェーンのための新しい能力の実現に寄与する同盟やパートナーの支援を受けて、この問題に真正面から取り組むことです。
米国陸軍研究所 次世代弾薬の積層造形関連技術 担当PMジョセフ・サウス博士 の談話
これからは米国陸軍が保有する 長距離弾薬、次世代戦闘車両、ヘリコプター、航空/ミサイル防衛力や関連する地上戦闘サブシステムが3Dプリンターによる生産や補修を前提としたものに変わっていく事で、補給の概念や戦力支援の概念も形を変えていくと思われる。
例えば移動する工場として3Dプリンターが各拠点に配備され、輸送時間を考慮せずに生産能力が拠点に配備される上に、素材や図面にロックをかけることで管理も行っていく等の展開が予想される。
従来の最大サイズと比較して、約5倍の体積を造形可能に
計画されているプリンターは、造形範囲が1,000mm×1,000mm×600mmで、現行の500mm×500mm×500mmの大規模金属3Dプリンターを大幅に上回る上、 最小壁厚100μm、層厚30μmの微細造形も実現する予定。
3Dシステムズでは、新しい金属3Dプリンターを米国陸軍に提供するだけでなく、新しい技術とプロセスを既存の3Dプリンター技術のポートフォリオに統合することの実現可能性についても評価していく。データ作成から既存装置の改修や最適な造形物や配置などを検討していくことを意味する。今後は米陸軍の補給基地および研究所に大規模な新規システムを設置していく見込みである。
民間への転用も
3Dシステムズおよび提携各社では、この新しい3Dプリンター技術を航空宇宙および防衛関連の主要サプライヤーが利用できるように計画しているとのことで、特に航空宇宙分野での応用を見込んでいるようだ。
関連情報
2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。