産業用3Dプリンターで造形速度が5倍に — 都産技研が新技術を開発
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター(以下、都産技研、東京都江東区)とアスペクト社(東京都稲城市)、東京大学生産技術研究所(東京都目黒区)は、従来の造形速度を最大5倍に向上させる新しい産業用3Dプリンター技術を開発した。この技術は、レーザー出力や露光領域を制御することで広範囲を一度に加工可能にしたもので、Formnext 2024で公開された。(上部画像は都産技研のプレスリリース。出典:都産技研)
開発の背景と課題
産業用3Dプリンターは、これまで生産速度の制約が量産化の大きな障壁となっていた。従来型では一つの造形に50時間以上かかるケースもあり、生産効率が低く、特に大量生産の現場では採用が進みにくい状況で、造形範囲の制約や部品強度とのバランスを取る技術的な課題が残されていた。こうした中で、都産技研、アスペクト社、東京大学生産技術研究所は、これらの課題を克服するために革新的な高速造形技術の開発に着手した。
高速化を実現したポイント
今回の技術開発では、粉末床溶融結合方式においてレーザー出力を高め、露光領域を従来比で5倍に広げる新技術が採用された。さらに、樹脂粉末への透過性が高い大径レーザーと高出力スキャナーを活用し、深層溶融を可能にしたことで、積層ピッチを2.5倍に拡大できる点が特長である。この結果、加工層数の削減が可能となり、強度を維持したまま最大5倍の造形速度を実現した。これにより、生産効率の劇的な向上が期待される。
産学官連携による取り組み
今回の技術開発は、地方独立行政法人の都産技研を中心に、産学官の連携体制によって進められた。特にアスペクト社は産業用3Dプリンターの実装に必要な技術支援を行い、東京大学生産技術研究所は基礎研究と材料特性の最適化を担当した。さらに、本プロジェクトは経済産業省のGo-Tech事業の支援を受けており、研究開発段階から実用化に向けたロードマップが明確に設定されている。この連携により、高度な技術が効率的に実現された。
実用化と将来の目標
本技術のさらなる改良と材料開発の進展により、現在の5倍の速度から最大10倍の高速化を目指している。また、開発された3Dプリンターは、製品の検証を経て市場投入される計画である。加えて、将来的には金属やセラミックなど多様な材料への適用も視野に入れており、これにより多業種への技術展開が期待されている。日本発の高速造形技術が世界市場での競争力を持つためには、引き続き研究開発を進め、製造現場でのニーズに応える製品化が鍵となる。
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