「R6年度 第2回 宮城AM研究会」参加報告 JAXAにおけるAM活用事例
2024年12月5日(木)に、「令和6年度第2回宮城AM研究会」が開催され、シェアラボから丸岡が参加した。本会は、みやぎデジタルエンジニアリングセンターが主催し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)角田宇宙センター(宮城県角田市)にて開催された。講演と角田宇宙センター施設と展示室見学の2部構成で、県内外より関係者含め約60名が参加された。(上部会場写真は記者が許可を得て撮影)
みやぎデジタルエンジニアリングセンターと「宮城AM研究会」とは
「みやぎデジタルエンジニアリングセンター(以下、MDE)」は宮城県産業技術総合センターが企画・運営し、高度デジタルエンジニアの育成事業強化を行っている。MDEは、「最新鋭の3Dプリンターや3次元CAD環境を整備し、その3Dプリンターや3次元CADを高度に活用した製品開発を行うことのできる高い競争力を持つ人材育成拠点として運用」をし、「人材育成事業、研究会事業、課題解決事業、AM実用化促進事業の4つの事業を実施し、ハードおよびソフトの両面から、県内の産業高度化の支援」を行う。宮城AM研究会はMDEが「AM技術(3Dプリンター)の活用事例や企業訪問による事例検討を通して、研究会参加企業内での活用事例を模索」する研究会で2016年から年3回程度の定例会を継続開催してきた。
令和6年度第2回宮城AM研究会の概要
まず本研究会内容の詳細や写真については、主催者のウェブサイト「R6年度第2回宮城AM研究会開催報告」(https://www.mit.pref.miyagi.jp/20241205report/)を参照されたい。ここでは参加しての所感を以下にお伝えする。
主なプログラムは以下の通り。
プログラム | 講演 担当者 |
講演(1)AMに関する最新動向 | 宮城AM研究会 スーパーバイザー 東北大学未来科学技術共同研究センター 千葉 晶彦 特任教授 |
講演(2) JAXAにおけるAMの活用事例紹介 | 国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 研究開発部門 第二研究ユニット(構造技術領域) 北本 和也 氏 |
出展ブース見学 | 株式会社エヌエス機器 新東工業株式会社 日本積層造形株式会社 株式会社テクノソリューションズ 株式会社セント マテリアライズジャパン株式会社 株式会社スギヤマ 株式会社エスケーファイン 大陽日酸株式会社 |
角田宇宙センター施設見学 高温衝撃風洞(大気圏再突入環境を地上で模擬実験できる風洞設備。世界最高性能) 宇宙開発展示室 | 角田宇宙センター員 各位 |
参加しての所感
今回の研究会は宇宙に焦点を絞った場所と内容であったことから、限られた時間の中でも多くの貴重な情報と、参加者間の交流が出来たことは、大変有意義な機会であった。また、これまで公表された以外のJAXAでのAM実用部品の実績や進行中の研究の取り組みを直接うかがうことができ、日本に合った形で着実にAMの活用研究が進められていることが理解できた。
一方、AMの利点を活かせていない現状課題の背景として、本来の最適形状からAMのために設計変更を余儀なくされるケースは適用が難しいこと、検証試験や製造管理などに想定以上のコスト・時間を要すること、AM活用のための品質管理手法ができていないことなどが、現実的な声として聴けたことも重要であった。
これらの解決改善には、全ての汎用的な基礎解明や材料開発、品質管理手法を確立してから活用するより、目指す機能や要件の設定から、AM製造が有効になり得る部品に対し、バックキャスト的に設計から製造、品質管理までのプロセス全体研究開発初期から産学官の経験者連携で進めること、またその特殊案件の成果経験を、条件の近い別案件に広げていく方が、特にAMには適しているのではないだろうか。
また、JAXA角田宇宙センターの施設見学を通し、ロケットや衛星の開発製造の困難さ、地上評価試験に想像を超える技術と時間と努力を必要なこと、また限られた条件で世界一の試験設備を設計製造、運用してきた日本の技術力の高さを直接知ることが出来た。このような機会を提供頂いた、みやぎデジタルエンジニアリングセンター、JAXA角田宇宙センター関係各位に感謝の意を表したい。
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設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。