1. HOME
  2. 業界ニュースTOP
  3. Formlabs社の3Dプリンターが実現した90%の納期短縮 ― システムクリエイト社、KORG Berlin社

Formlabs社の3Dプリンターが実現した90%の納期短縮 ― システムクリエイト社、KORG Berlin社

システムクリエイト社のプレスリリースより。

株式会社システムクリエイト(大阪府東大阪市荒本新町、以下、システムクリエイト社)は、世界的に著名な楽器メーカーKORG INCの独立子会社であるKORG Berlin社(ドイツ・ベルリン)による、Formlabs社の先進的な3Dプリンティング技術を活用した音楽製作事例を紹介する。KORG Berlin社は、小規模なチームながら、独自のプロトタイピング手法を用い、新たな音響体験を創出することに成功した。(上部画像はシステムクリエイト社のプレスリリースより。出典:システムクリエイト社)

デジタル主流の時代に挑む、物理楽器の新たな可能性

今、音楽業界では、デジタル技術を駆使したソフトウェア主導の音楽制作が主流となっている。一方で、KORG Berlin社は物理的な楽器の直感的な操作性と表現力を重視し、ソフトウェアでは得られない感覚的な価値を再発見しようと挑んでいた。少人数のチームと限られた資源の中でその目標を達成するためには、スピーディで効率的なプロトタイピングが鍵となり、中でも注目すべきは、Superbooth 2023で発表された「Acoustic Synth Phase5」である。このプロジェクトでは、音叉を音の生成源とし、磁場を用いて音を制御するというユニークな構造が採用されている。設計には、複雑な形状や緻密な精度が求められるだけでなく、試作品を短期間で作り上げることも必要であった。従来の手法では困難なこれらの課題に対し、KORG Berlin社は新たなアプローチを駆使して応えたのである。

精密な製作と素材の柔軟性を実現するFormlabs社3Dプリンターの活用

KORG Berlin社は、Formlabs社のSLA方式3Dプリンターを導入することで、これらの問題に対処した。中でもForm 3+モデルは、従来のFDM(熱溶解積層方式)プリンターや一般的な加工手段では再現が難しい細部まで精密に表現でき、高精度な部品製作を可能にした。

Formlabsのエコシステムを活用することで、迅速な試作と評価の反復を実現している。
Formlabsのエコシステムを活用することで、迅速な試作と評価の反復を実現している。(出典:システムクリエイト社)

このプリンターの大きな特長は、幅広い種類のレジン(樹脂)を使用できる点である。KORG Berlin社は、プロトタイプの目的や要求に応じて最適な素材を選択することで、柔軟で効率的な開発を実現した。例えば、耐久性の高いレジン、透明性の高いレジン、柔軟性を持つレジンなど、必要に応じて切り替えることで、プロジェクトごとの要件に対応した。

ドラムパッドは、シリコーンに似た柔軟な質感を持つElastic 50A Resinを使用してプリントされている。
ドラムパッドは、シリコーンに似た柔軟な質感を持つElastic 50A Resinを使用してプリントされている。(出典:システムクリエイト社)
パッドホルダーのプロトタイプは、硬さと耐久性が求められるため、Grey Pro Resinを使用してプリントされている。
パッドホルダーのプロトタイプは、硬さと耐久性が求められるため、Grey Pro Resinを使用してプリントされている。(出典:システムクリエイト社)

プロトタイピングの効率化とチーム全体での開発促進

この技術によって、設計や試作品の製作プロセスが大幅に効率化された。短期間での反復作業が可能となり、アイデアをすぐに形にする環境が整ったのである。たとえば、「Acoustic Synth Phase5」のプロジェクトでは、音叉を支える部品が非常に複雑かつ精密な形状を必要としていた。Formlabs社の高解像度と滑らかな表面仕上げの特性により、これを自社内で迅速に製作できるようになり、外注の必要性が完全に排除された。

さらに、Formlabs社のソフトウェア「PreForm」は、部品の配置やサポート構造を自動的に最適化する機能を持ち、ユーザーの負担を大幅に軽減した。このツールを活用したことで、専門知識を持たないチームメンバーでも簡単に高品質なパーツを製作できるようになった。結果として、チーム全体がプロトタイピング工程に積極的に参加できるようになり、開発スピードは飛躍的に向上したのである。

複雑な小型部品は、Grey Pro Resinを使用することで、正確かつ低コストで迅速に3Dプリントされる。この手法により、開発プロセスが中断することなくスムーズに進行している。
複雑な小型部品は、Grey Pro Resinを使用することで、正確かつ低コストで迅速に3Dプリントされる。この手法により、開発プロセスが中断することなくスムーズに進行している。(出典:システムクリエイト社)

3Dプリンティングが切り拓くKORG Berlin社の革新的開発プロセス

KORG Berlin社は、Formlabs社の3Dプリンティング技術を導入したことで、開発プロセスに革命をもたらした。外部への発注で通常3〜4日を要していた納期が、3Dプリンターを活用することでわずか数時間で完了するようになり、納期を最大90%短縮することに成功した。この時間短縮により、チームはアイデアをすぐに形にしてテストを行い、改善を重ねるというスピーディな反復作業が可能になった。結果として、プロジェクト全体のクオリティが大きく向上したのである。

Formlabs社のSLAプリンターの高い精度は、複雑な形状を持つ部品の製作を可能にし、KORG Berlin社がこれまでにないデザインに挑戦する道を切り開いた。この技術は、新たな音楽表現を生み出すだけでなく、チームメンバー同士の連携を強化する役割も果たした。

アナログとデジタルの融合という目標を掲げるKORG Berlin社にとって、3Dプリンティング技術は欠かせないツールとなっている。同社は、この革新技術を活用しながら、音楽の未来を切り拓くことを今後も目指していく。

Formlabs社の関連記事

今回のニュースに関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中から3つピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

サイト内検索

関連記事