米国の航空宇宙企業Ursa Major社(以下、Ursa Major)と、東京を拠点とするInnovative Space Carrier Inc.(以下、ISC)の米国子会社であるSirius Technologies, Inc.(以下、Sirius Technologies)は、小型打上げ用エンジン「Hadley」10基の調達契約を締結し、さらに中型打上げ用エンジンの共同開発にも着手することで、両社の協業が新たな段階へと進展した。本契約は、2024年3月にISCが購入しSirius社に納入されたHadleyエンジンに関する技術データの輸出を米国国務省が許可したことを受けてのものであり、米日間の宇宙技術協力において、数十年ぶりの先例となる歴史的な承認例である。(上部画像はursamajorのプレスリリース。出典:Ursa Major)
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Ursa Major CEOが提携の意義を強調
Ursa MajorのCEOであるダン・ジャブロンスキー氏は、ISC/Sirius TechnologiesとUrsa Majorが築いたパートナーシップについて、両社が若くも極めて俊敏かつ革新的であることを体現した、真に特別かつ強力な協業であると述べた。また、自社の代表的製品であるHadleyエンジンを、コロラド州バースードの本社およびオハイオ州ヤングスタウンの先進製造拠点において納入することに誇りを持っているとし、中型打上げ用推進技術の開発も加速させていく意向を示した。
再使用型宇宙機『ASCA』、米国で2025年試験打上げへ
ISC/Sirius Technologiesは、再使用型宇宙機「ASCA」の米国内における開発・試験を迅速かつ低コストで実現するため、Ursa Majorを主要パートナーとして選定。ASCAの試験打上げは2025年内に予定されている。また、Ursa Majorの中型打上げ用エンジン「Arroway」モデルをスケールアップした新型エンジンの共同開発は、2028年まで継続される計画である。今後の開発フェーズでは、製造プロセスの改善を取り入れ、追加試験へと移行していく。
ISCとSirius Technologies、Ursa Majorとの協業深化を強調
ISC代表取締役の畑田 耕次郎 氏およびSirius TechnologiesのCEOの島田 圭 氏は、昨年4月に日本で提携合意を結んで以降、技術的協業を深めてきた成果として、Ursa Majorとの契約を発表できることを大変嬉しく思うと述べた。また、本提携は2025年2月に開催された日米首脳会談における商業宇宙分野での協力強化の合意を具現化するものであり、民間企業レベルでの具体的な協力推進こそが、両国関係のさらなる深化に寄与するものであるとし、今後もUrsa Majorと緊密に連携し、ASCA 1.0の米国での試験飛行を成功させるべく全力を尽くす意向を示した。
日米連携が切り拓く次世代宇宙輸送の未来
Ursa MajorとSirius Technologiesの提携は、日米間の商業宇宙分野における協力強化の先駆けとなる画期的な取り組みである。再使用型宇宙機「ASCA」の米国での開発・試験は、両国の技術連携が実際の飛行試験という具体的成果に結びつく重要な一歩となる。さらに、中型エンジンの共同開発は、将来的なSSTO(単段式軌道到達機)構想や地球間高速輸送といった野心的ビジョンに直結する技術的基盤を築くことになる。今後の進展は、世界の宇宙産業の再編成を促す可能性もある。
各社について
Ursa Major
米国コロラド州バースードに本社を構える航空宇宙・防衛企業。ハイパーソニック(極超音速)や戦術ミサイル、宇宙機動システム向けに高度な推進技術を提供しており、最先端のデジタル製造やアディティブ(積層)製造技術を活用して迅速かつ低コストな製品開発を実現。米国政府や防衛関連企業、大手宇宙開発企業にサービスを提供している。ヤングスタウン(オハイオ州)にはアディティブ製造の中核拠点を持つ。
ISC
2022年設立、東京都に本社を置く宇宙スタートアップ。2040年までに誰もが宇宙にアクセスできる世界の実現を掲げており、まずは低軌道向けの小型ロケット開発から着手。最終的には人や貨物を宇宙へ輸送可能な単段式軌道到達(SSTO)型ビークルの実現、あるいは地球上の任意の2地点を90分以内で移動可能とすることを目指している。
Sirius Technologies
2024年3月に米国コロラド州ボルダーに設立されたISCの技術開発拠点。ASCA再使用型ロケットシリーズの開発・統合・試験を担当し、また米日間の宇宙産業協力の促進にも注力している。
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