アルテミス1ロケットに用いられた3Dプリント技術ーNASA
2022年11月16日、NASAのアルテミス1ロケットがケネディ宇宙センターから打ち上げられた。月を超えて25日間航行した後、地球に帰還する予定となっている。女性宇宙飛行士を月面に送り届けることを目的としているアルテミス1ロケットには、人間を模した3体のダミー人形が搭載されているというが、その他にも船体に用いられた各種部品には、3Dプリンティング技術が多数用いられた。
目次
NASAのアルテミス計画は女性宇宙飛行士が月面を目指す
アルテミス計画は、2024年までに「最初の女性」を月面に着陸させることを目標としている。続けて、月面で持続的に活動できる拠点の構築や、火星への有人探査を目指す計画だ。その最初のミッションは、月を周回して地球に帰還する無人ロケットの打ち上げだ。2022年11月16日、アメリカ、ケネディ宇宙センターから打ち上げられたアルテミス1ロケットは、無事大気圏を突破し、月へと向かった。
3人のダミー人形を搭載したアルテミス1ロケットは、道中で様々な試験を実施しながらデータを収集し、25日間に渡って宇宙空間を航行した後、地球に戻る予定だ。
AM技術が駆使されたエアロジェット・ロケットダイン社のロケットエンジン
今回打ち上げられたアルテミス1ロケットは、3Dプリンティング技術によって作られた部品を数多く搭載している。
RS-25エンジンは、エアロジェット・ロケットダイン社製の液体燃料ロケットエンジンだ。当初はスペースシャトルの推進機構として設計されたが、スペースシャトルの引退後は、スペース・ローンチ・システム(SLS)の1段目ロケットに転用されている。SLSは、次々とロケットを切り離しながら、超大型ロケットを大気圏外に打ち上げる仕組みを指す。
ロケット開発に使い捨てを基本とするSLSが採用されてからは、コスト削減も課題となった。エアロジェット・ロケットダインは、3Dプリンティング技術を活用することで、性能、信頼性、安全性を維持しながら、エンジン全体のコストを35%削減することに成功している。
RL10エンジンは、50年以上に渡って用いられる米国で最高の上段ロケットエンジンだ。RL10を元に、エアロジェット・ロケットダインが改良したRL10B-2にも、3Dプリンティング技術が組み込まれている。
エアロジェット・ロケットダインは、39の推力を生み出す動力部品(38の液体エンジンと、1つの固体ロケットモーター)、14の高圧タンクをアルテミス1ロケットのために製造したが、その動力部品の多くに金属AMなどの3Dプリント技術が活かされた。
固体ロケットブースターにもAM技術が活用されている
アルテミス1ロケットの打ち上げ時に、最初の2分間における推力の75%以上を提供した2つの固体ロケットブースターは、Northrop Grumman社が開発したが、ここでも3Dプリンティングが活かされている。
Northropは、2020年に10個のロケットモーターセグメントをケネディ宇宙センターに出荷したが、アルテミス1ロケットに使われたのは、このうちの2つだ。
720万ポンドの推力で打ち上げを支えた2つの固体ロケットブースターは、3Dプリンティングとコンピュータモデリングを利用して作られた。
2024年のアルテミス2ミッションでは有人打ち上げ予定
今回のミッションと今後のロケット開発が順調に進めば、2024年のアルテミス2ミッションでは、4人の宇宙飛行士が月を周回し、続くアルテミス3で有人月面着陸を果たす。
ロケット開発やその後の月面開発において、3Dプリンティング技術が果たす役割は益々大きなものとなっていくだろう。
なお、航空宇宙業界に関する過去の記事については以下を参照していただきたい。
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。