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インド発スタートアップが開発した3Dプリントロケットエンジンのホットテストに成功

インドのロケットエンジン

2022年11月、インドのロケットエンジン開発スタートアップ企業、M/S Agnikul Cosmos Pvt. Ltd. が開発したAgniletエンジンのホットテスト成功が報告された。Agniletエンジンは複数部品を組み立てるのではなく、金属3Dプリンターによる一体造形で製造された最新鋭エンジン。軽量化、納期短縮、性能向上を成し遂げるために当初からアディティブマニュファクチャリング技術で製造するために専用設計されたエンジンだ。

インド宇宙研究機関(ISRO)

宇宙開発で最先端を行くのはアメリカだが、人工衛星や小型ロケット開発などで独自の路線を突き進むのが、インドだ。インドは赤道に近く、東側は海洋なのでロケット打ち上げにおいて、有利な地理的条件を有している。資源、工業力、質の高い研究人材を擁し、アメリカやロシアに次ぐ宇宙開発大国と目されてきた。近年では、西側諸国と同様、インドの宇宙開発においても3Dプリンターの活用が進められている。

>>インドで軍事用ミサイルの燃料噴射装置が3Dプリンターで開発・製造される

インドの宇宙開発を主導するのはインド宇宙研究機関(ISRO)だ。ISROのロケット開発を牽引するヴィクラム・サラバイ宇宙センター(VSSC)では、2022年11月4日に、3Dプリンターを用いて製造されたロケットエンジンのテストが実施された。

3Dプリンターで一体造形されるAgniletエンジン

今回VSSCでテストされたエンジンはインドのスタートアップ企業、M/S Agnikul Cosmos Pvt. Ltd.で作られたAgniletエンジンだ。

Agnilet engine hot test
出典: インド宇宙研究機関(ISRO)
https://www.isro.gov.in/ISRO_Agnilet_Engine.html

金属3Dプリンター技術とインコネル718(高い耐熱性と耐久性を有する金属材料)を用いて作られたAgniletエンジンは、液体酸素と航空タービン燃料(ATF)を推力剤として使用する。10.8Bar(1.08MPa)のチャンバー圧力で動作するよう設計されたロケットエンジンだ。

テストでは実際にロケットエンジンを15秒間点火させることに成功し、その際、チャンバー内圧などの様々な量を計測した。下図は、動作時のチャンバー内圧力を示している。

Agniletエンジンホットテストにおけるチャンバー内圧力の時間変化(出典:ISRO)
Agniletエンジンホットテストにおけるチャンバー内圧力の時間変化(出典:ISRO)

3Dプリンターを活用するインドの宇宙ベンチャー

M/S Agnikul Cosmos Pvt. Ltd. は2017年に設立され2019年に商業化に成功した。

現在、本スタートアップが提供する「Agnibaan」ロケットシステムは世界中で運用できるように設計されており、ロケットの全ての部品から打ち上げ台座、ソフトウェアまでを一貫して開発している。

3Dプリンティング技術を最大限に活用したAgniletエンジンは各種部品から組み立てられるわけではなく、全てが繋がって1つとなっている一体造形が特徴だ。一体造形された部品は、組み立て工程が不要である他、継ぎ目からの燃料漏れなどの心配がないなどのメリットもある他、高いレベルの品質基準と独自の宇宙関連規格への対応試験の工数を考慮すると、部品点数が少ないことはプロジェクトを迅速かつ妥当なコストに納めるためには大きな貢献となると言われている。一方で、部品を一体化するためには専用設計が必要で、また実際に造形可能な金属3Dプリンターの特徴を踏まえた造形ノウハウの蓄積も求められる。

従来のノウハウではなく、これからのノウハウ蓄積が必要になるアディティブマニュファクチャリング技術を活用した航空宇宙開発だが、インドのようにこれから宇宙を本格的に目指す国々にとっては取り組み甲斐があるテーマだといえるだろう。

Agniletエンジン(出典: M/S Agnikul Cosmos Pvt. Ltd. )
Agniletエンジン(出典: M/S Agnikul Cosmos Pvt. Ltd. )

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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