日本初、創業3年・構想1年の民間宇宙スタートアップが米国でロケット垂直離着陸実験を発表 ― ISC

2025年6月18日
ISCのプレスリリースより。

将来宇宙輸送システム株式会社(東京都中央区、以下ISC)は、「毎日、人や貨物が届けられる世界を、宇宙でも当たり前にする」というビジョンを掲げ、宇宙往還を可能にする輸送システムの実現を目指している。創業3年、構想1年を経て、ISCは日本初となる民間宇宙スタートアップによるアメリカでのロケット垂直離着陸実験「ASCA 1ミッション」を発表した。同ミッションは垂直離着陸型宇宙ロケットの打上げ・着陸試験であり、米国での打上げも日本初となる。5月28日(水)には、JFEエンジニアリング株式会社(東京都千代田区、以下JFEE)と基本契約を締結し、開発拠点「将来宇宙輸送システム 鶴見ベース」も公開した。(上部画像はISCのプレスリリースより。出典:ISC)

日本発、再使用型ロケット開発の挑戦

「ASCA(アスカ)ミッション」は、ISCが独自に展開する再使用型ロケットの開発プロジェクトである。本プロジェクトは、日本発の再使用型ロケット技術の確立を目指し、宇宙輸送の高頻度化と低コスト化を実現することを目的としている。今回実施される「ASCA 1.0」は、その初期フェーズに位置付けられる技術実証機であり、高度0.1km以上への到達と、着陸目標地点への5m以内の誤差での着陸を達成することを目標としている。また、この試験を通じて、宇宙輸送システムの高度化に向けたデータ取得を行う。

国内最大規模の金属3Dプリンター活用プロジェクトとしての「ASCA 1.0」開発

「ASCA 1.0」プロジェクトでは、機体質量の約40%を金属3Dプリンターで製造している。ロケット部品製造において金属3Dプリンターを活用した取り組みとしては国内最大規模であり、軽量化や高精度化を実現するとともに、従来製造法に比べ部品点数の削減と短期間での試作開発を可能にしている。エンジン部品や複雑構造体を一体造形することで、接合強度や一貫した品質管理を確保し、短期間での実証機開発と迅速な実験実施を支えている。

アジャイル開発で短期実現を目指す

「ASCA 1.0」の開発は、2024年10月に構想段階(設計および製造)を開始し、2025年内にアメリカでの打上げ試験を実現すべく進行中である。通常、ロケットの初期段階における試験機の開発には、年単位のスケジュールが必要となるケースが多いが、ISCでは短期間での打上げ試験を実現するべく、アジャイル型開発体制を採用している。このアジャイル型の体制は、従来のウォーターフォール型開発と異なり、開発と検証を反復的かつ段階的に実施し、得られたフィードバックを即時に開発へ反映することで、構想開始から約1年での試験機開発体制の構築を可能としている。

さらに、今回発表した「ASCA 1.0」の後続として、2027年上期にはサブオービタル飛行実験機「ASCA 1.1」、2028年上期には衛星軌道投入実験機「ASCA 1.2」の打上げを計画しており、段階的な発展を通じて将来的な実用化を目指している。

「ASCA 1.0」試験予定

・打上げ試験予定時期:2025年内
・飛行高度:0.1km
・目的:垂直離着陸の実証
・特徴:

1.Hadleyエンジン ×2基(アメリカ・Ursa Major Technologies社製)

2. 機体質量の約40%を3Dプリンターで製造
※金属3Dプリンターによる製造は国内最大規模

3.モデル予測制御(MPC:Model Predictive Control)を採用
離着陸誘導には「モデル予測制御(MPC:Model Predictive Control)」を採用し高精度な制御を実施

4.自律飛行安全システムを搭載
機体健全性及び飛行経路異常を検知した際、自律的に安全処置を実施

・実施場所:スペースポート・アメリカ(アメリカ合衆国・ニューメキシコ州)
※同施設での日本の民間宇宙スタートアップ企業による垂直離着陸実験は日本初

「ASCA 1.0」機体外観および内部構造図
「ASCA 1.0」機体外観および内部構造図。(出典:ISC)

段階的発展で実用化へ!ISCの再使用型ロケット技術

ISCが進める「ASCA 1.0」は、将来的にサブオービタル飛行(ASCA 1.1)や衛星軌道投入(ASCA 1.2)へと段階的に進展させる計画だ。これにより、日本発の再使用型ロケット技術の確立と、宇宙輸送の商業化が一層加速すると期待される。また、金属3Dプリンター技術の活用により、開発スピードやコスト削減を実現し、国内の宇宙産業の競争力向上にも寄与する見通しだ。

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